2008年 今週の意見 9月


今週の意見(593):

劇場選挙の再来はごめんだ

まさかと思っていたが、福田総理が9月1日、総理総裁の職を投げ出し、辞任して
しまった。丁度昨年の同じ頃、安倍前総理が政権を投げ出し、大騒ぎになった事態
の再来である。安倍辞任の時は臨時国会が始まり、安倍総理自身が所信表明演説を
行った翌日のことだったから、なんという無責任なやめ方かと大いに批判を浴びた
のは当然であったが、しかし、これは後からわかったことだが、辞任の大きな理由
が健康上のことであったので、それでもまだ同情の余地があった。              

今回の辞任劇は、臨時国会が12日から始まるということが決まってからだったか
らだったし、どんな理由で辞任したのか、最初さっぱりわからなかった。健康上の
理由かと聞かれて、いや安倍氏と違って、私は健康だとわざわざ胸をはって見せた。  

一国の職がこんな軽いものなのか、先の安倍首相の場合と同じようにそれが「無責
任」だという声が内外からの声、4日の朝日新聞の世論調査でも66%の人が「無
責任」だと答えていた。                                                    

この二人の辞任の弁で共通していることがある。政権が行き詰ったのは、野党民主
党からの協力が得られなかったからだとしていることだ。安部首相は、民主党党首
小沢氏に会見を申し入れても会ってもらえないと嘆いて見せた。福田首相の方は常
日ごろから、協力してくれない民主党にうらみつらみを述べていた。            

それを聞いて私はあきれてものが言えなかった。                              

民主党を含めて野党が、与党提出の法案にすべてノーと言ったわけではない。いく
つか賛成し、成立した重要法案もある。反対したのはガソリン暫定税率継続に関わ
るものや、新テロ給油法などだ。そうしたものについては民主党というより野党が
結束して反対したものであり、一般世論調査でも反対の声が高いものだった。    

野党、そもそもなぜ野党と呼ぶかというと、与党に反対するからだ。その野党が存
在することが自体が民主主義の仕組みそのものなのである。それぞれ相反するマニ
フェストをそれぞれ掲げ、選挙で戦った結果なのだ。昨年7月の参議院選挙で民主
党が大勝した。結果衆参両院で与野党勢力が逆転してしまった。そもそもそのこと
をねじれなどと呼ぶことが間違いなのだ。それが正常な国民の民意の反映の形なの
だ。

与党が通そうとしても通らない法案が出てくるのはごくごく当たり前のことで、政
権与党はそれを甘受するか、それともそのねじれ現象を解消するためには衆議院を
解散し、総選挙で、改めて大勝するしかないのである。こんなことは理の当然、福
田首相は一体なにを考えているのか、だ。

安倍、福田総理とも、その責任を野党にかぶせ、自ら身を引いてしまうという挙に
出た。あきれた話である。しかも今回福田首相は辞任のタイミングを計っていたよ
うだ。福田首相が辞任したのは国民のためでなく、自らの自尊心を守るためであり、
そして自民党自体を守るためだ。

民主党の代表選挙が無投票で小沢氏に決まるだろう状況をみて、自民党の総裁選挙
をぶつつければ、民主党が埋没すると考えた。今現実事態はそのように動きつつあ
る。自民党の方は候補者が複数どころか、5人以上になりそうな状況だ。マスコミ
は連日それをおもしろおかしく報道する。民主党の方の代表選びなどまさにかすん
でしまった。                                                              

そしてめでたく麻生内閣が誕生し、その祝賀ムードが高いうちに総選挙に打って出
るという作戦である。それで逆風を吹き飛ばそうという作戦なのだ。福田首相自ら
がそれを仕組んだといっていい。民主党にうらみつらみをぶっつけ、そして自民党
の総裁選挙の盛り上がりぶりを演出して見せるのだ。国民のこと、重要政策のこと
よりすべて選挙で勝ち、自民党政権を維持することがすべてなのだ。            

そういう意味でも自民党という党はなかなかたいしたものだ。今回もあの三年前の
小泉劇場選挙の再来を狙っている。                                          

日本の政治を立て直すためには、それは絶対に避けなければならない。自民党には
もう政権担当能力はない。こんな無責任総理二人を生んだ自民党の政治を終焉させ
政権交代以外に日本の政治を立て直す道はない。

2008/9/6
早勢 直
今週の意見(594):

NHKは公共放送か

水曜日夜NHKの7時のニュースを見てびっくりした。冒頭からニュースなどなく
いきなり自民党総裁選の候補者5人が登場、その討論会というか顔見せ興行。  

それは、それぞれの候補者が激しくその政策の中身、違いを浮き立たせるわけでも
ない、他の候補者の言い分を批判するわけでない。ただわけのわかったわからない
ような抽象論を述べるだけ。国民目線だ、日本のよさはどうだ、弱者救済が先決だ
財政出動が必要だ、いろいろ総花的だが、何が何だかよくわからない。     

相手の攻撃と言えば、候補者同士の政策論争などは殆どなく、結局は5人の候補者
が声をそろえていうのは民主党小沢氏の政治スタイルの批判。代表選挙もしない閉
鎖的な党だとか、国会の審議もろくろくしないでただ政局だけやっているとか、い
いたい放題。自分たちが担いできた二人の総理の政治責任のことなど全く触れない。

こういうのはまことに不公平、不公正。少なくとも司会者は反論する相手がそこに
いないような発言については注意するくらいの見識がなくてどうするのか。後から
野党の反応もほんの数分まとめて出すのだが、公共放送のNHKがこんなことをや
っていいのか、という感じである。こんなNHKに野党支持の有権者は視聴料支払
いは拒否していい。                            

金曜日同じ総裁候補5人の討論会が、今度は記者クラブで開かれ、これもNHKが
全二時間時間中継、こちらでははある程度それぞれの候補者の政策の違いをあきら
かになるかと思ったが、やはりたいした内容がなく結局は政策論より民主党の攻撃
が盛んに出た。                              

お互いの政策の違いを論じ合うのだが、どうも迫力がない。一番気になるのは、お
互いを呼ぶときに「先生」の敬称をつけることだ。いや、別にどうということはな
いが、要するに相手との意見の違いなどさしてたいした問題でなく、それより互い
に気をつかいできるかぎり、相手を刺激することを避けよういう気分が見え見えな
のだ。身内のことは「先生」と呼び、敵の民主党の「小沢民主党」と呼び捨てにす
る。そんな空気を察したのだろう。麻生氏も小沢民主の悪口を言うのだが、一度だ
け「小沢先生の民主党」と言い直した。仲間内だけでで、先生呼ばりする空気はさ
すがまずいと察したのだろう。                       

呼び方などどうでもいいが、仲間うちと言えば、この麻生氏すでに、もし自分が総
裁総理になったらこの5人を閣僚にするつもりだと発言している。もう馴れ合いも
みえみえなのだ。                             

こんなできレース、談合的討論会に一体なんの意味があるのか。こんなものより、
それこそ今から民主党ほか野党との論戦を徹底的に始めた方が意味がある。これな
らいくら長時間でもも公共放送のNHKが中継してもその意味がある。     

こんな自民党の総裁選にマスコミの目が集中することにで民主党は埋没すると心配
しているようだが、そんな心配をすることはなさそうだ。総裁選が終わり、新しい
首相が選出されたとたん国会は解散する。そして今度こそ与野党の厳しいせめぎ合
いが始まる。野党はそれに備えて今のうちに十分な政策、マニフェストの準備をし
ておけるし、しておくべきだ。なにしろ自民党の主義主張はばらばらであり、しか
も、それぞれの候補者が霞ヶ関の解体だ、地方分権だ、消費税の目的税化など元々
民主党の主義主張を言い出していることも好都合な話である。事前の総裁選んこと
などどこかに吹き飛んでしまう。                      

もちろん結果はそうであろう。しかしそうは言いながら、日本のマスコミの在り方
には問題がある。政治の本質、それぞれの主義主張論理のきちんとした追求などし
ない。要するに、興味半分、話題性の追求がその主眼である。         

民間企業たる新聞、雑誌がそれぞれの経営方針、主義主張をもってそれに臨むこと
はある意味でいたし方のないことである。彼らはその報道ぶり、内容で読者、視聴
者の支持を得るか、失うかの選択にさらされる。が、NHKは公共放送、すべての
国民の視聴料でなりたっている。それがあきらかに政権与党にとって極めて有利な
報道を繰り返すことにどうして一般マスコミも、国民大衆も疑問の念を持たないの
か私は不思議でならない。                         

2008/9/13
早勢 直
今週の意見(595):

空洞化した自民党総裁選挙

9月19日のBLOGで、当初自民党がもくろんだのは総裁選挙を盛り上げ、麻生
内閣を発足させ、そのお祝義相場が高いうちに総選挙に打ってでようという戦略は
どうやらうまくいきそうにない情勢だと書いた。農水省の事故米の問題、厚生労働
省の年金記録改ざんの問題、そして極めつけは米国のリーマン・ショックで世界中
の金融不安が高まり、株価の暴落など、日本もうかうかしておれない状況が生まれ
てきたことだった。                                                        

福田首相のあの無責任な辞任表明から始まった総裁選挙であったが、最初はそれで
もいつものようにマスコミの話題がそれに集中し、自民党戦術がうまく行っている
ように見えた。しかし、今回はさすがにそれを見る国民の目は冷ややかに見るもの
が多かったようだ。が、なにより、そうした国民生活の直結する大問題が次から次
へと起こってきたことで、そんな総裁選挙などにうつつをぬかしていいのか、とい
う空気が生まれてきたのだ。                                                

そもそも総裁選挙はもう麻生氏圧勝という情勢である。それを、政治空白のまま、
重要な諸問題をほったらかしにして総裁選挙などをやっていていいのかという批判
が生まれてくるのは必定である。今や総裁選挙自体空洞化しつつある。          

そうしたことを19日朝、BLOGに書いたのだが、その空洞化を決定的にしたの
が、その午後の太田誠一農水大臣、白須敏朗前農水事務次官の辞任劇だった。農水
省のトップ、ナンバーツーが同時にやめてしまうという異例の事態である。白須事
務次官の方は事実上の更迭、太田大臣の方はもう24日には福田内閣自体が総辞職
することが決まっているのに、わざわざやめてしまった。本人は世間はそれでその
ことを潔しと受け止めてくれるものと期待したふしがあるが、世間の反応は「やめ
るのが当然、しかしそれにしても無責任だ」という声が一般的だったからいかんと
も救い難い状況ではあった。                                                

これが自民党総裁選挙どころか、政府与党にとって大きなダメージになったことは
言うまでもない。ある意味では起こるべくして起こったことであろう。安倍・福田と
続いた内閣、自民党政権はもう政権担当能力がないことははっきりした。それをま
た総裁選挙で話題をさらい、なんとか総選挙で政権の維持をはかろうなどというや
りかたは国民のための政治などこれっぽちも考えていない。こんな政党に政治をま
かせておくことができない。一度民主党に政権交代をさせてみた方がいいかもしれ
ないというムードが有権者間に広がりつつあるのは当然のなりゆきだ。          

与党、新首相たるべき麻生太郎氏はまだ早期10月26日解散総選挙がいいか、補
正予算成立させてもう少し後がいいなど考えているようだが、もう大勢そんなこと
はどうでもよくなったと思われる。                                          

この際、解散総選挙ができるだけ早い時期に行われ、有権者の意思によって民主党
による政権交代を実現させる以外に日本の政治再生はないことを断言しておきたい。

2008/9/20
早勢 直
今週の意見(596):

世襲の日本政界

新しく誕生した麻生内閣の顔ぶれをについてマスコミはいろいろ評論しているが、
総じて評判が悪い。特に目立つのは新閣僚の中にに二世、三世がいかに多いかかと
いうことがある。総勢18人のうちなんと11人が世襲である。しかもその祖父、
父達は、長い自民党の歴史の中でも、政府、党の主要ポストを占めたものが多い。
吉田、鳩山、小渕、中曽根、中川、浜田など誰でも知っている名ばかりだ。しかも
新閣僚の四人は麻生総理を頭として総理経験者を父とか祖父に持つ人たちだ。  

安倍、福田内閣もそうであり、今更言い古されたことだが、これには疑問を持たざ
るをえない。こんな現象は他の民主主義国でもあるのだろうか。あるわけがない。
世襲政治家の全部が全部悪いとは言わぬ。が、これは明らかに行き過ぎではないか。

小渕優子氏が少子化担当大臣で入閣した。一部マスコミは34歳で戦後最年少大臣
だとか、清新さをアッピールした抜擢だとか、本人が一児の母で、少子化対策が期
待されるとか報じているが、ご祝儀報道もいいところである。         

彼女の政治家としての能力のほどはよくは知らない。が、彼女が大臣になれた大き
な理由は、父の突然の死で地盤を引き継ぎ議員になったこと、しかもそれが元総理
の娘だったということが主なものなのだ。TBSに勤務していたということくらい
で特に政治のことはもちろん実務経験が豊富なわけではない。         

中曽根外務大臣にも驚かされた。これも大いなる疑問である。これもまさに親の七
光りの結果としかいいようがない。いや、それぞれの個人の悪口だけをいうつもり
などさらさらない。、少子化対策問題、地方分権、防衛問題、外交問題、どの問題
をとっても自民党内、野党、そして民間に適任者が山ほどいることは明らかなのだ。
どうしてそういう人を任用しないのか。仮にそれが選挙管理内閣であったとしても
だ。                                   

小泉前首相が突然引退して昨夜のテレビはもっぱらその話題であった。いや辞める
のは自由だが、後継者として次男を指名している。何時からかは知らないが、彼を
秘書として使い、その準備はちゃんとしていたわけだ。「改革」を標榜し、「自民
党をぶっこわす」というのが小泉氏の政治信条であった。その小泉氏にして世襲は
もう何の疑問もない政治信条なのか。                    

麻生氏はニューヨークでこのニュースを聞き、後継者の次男についてこう語ってい
た。「父親と違い、変人でもない、なんでもない普通の人で、優秀な人だ。」何を
言ってるのかよくわからない。要するに政治家の子孫であれば、無条件でその資質
資格があるとでもいうのか。                        

冗談ではない。今度の選挙でもこの政治家の世襲制ということが一つ大きな争点と
なることを是非期待したいものだ。日本の政治の改革ということに関連して重要な
テーマであることは間違いない。                      

2008/9/27
早勢 直
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