2000年 今週の意見 9月
今週の意見(181):
注射が必要なのは
ロシアの原潜事故は痛ましいものであったが、その後日談がいろいろある。遺族
が政府当局者や軍部に向かって質問したり、非難の声を浴びせたりするのは当然の
ことである。事件後その様子がテレビで報道された。
が、その激しく抗議する女性の後ろからそっと看護婦らしいのが近づいて女性に
注射する場面が英仏のテレビで報道されたとあり、NHKのニュースでもその問題
画面が放映された。
そして注射された女性は急におとなしくなった。ロシア当局はそれを否定してい
るが、現実その場面が報道されているのだから恐れ入る。さすが、もとKGB、や
ることがちがうわいと、世界中の人はびっくりしたと思う。それともやはりこれは
西側テレビのやらせなのか。じゃないようだ。
日頃あんまり政治問題、特に国際問題に関心のない人々もロシアの原潜事故、そ
してそれに続くこの事件については、関心を示し、さかんに話題になったようだ。
当然である。
日本のマスコミでもロシア旧体制の問題点を指摘する論調をちらほら見かけたけ
れど、正面きってのそれはもう一つ少なかったように思う。ロシアとロシアの人々
それに国際社会のためにもロシアの民主化や国際化は絶対必要なのである。どうも
欧米諸国をはじめ日本もその点に関してロシアにもの申すスタンスがもっとあって
いいのではないかと感じるのである。
注射が必要なのは、家族を失ってそれを怒る婦人ではない。ロシア国家体制その
ものなのではないか。
2000/9/2
Tadashi HAYASE
今週の意見(182):
What is IT?
『「IT革命推進」を唱える森 喜郎首相に呼応したのか、この二文字をつけれ
ば、予算を取れると踏んだのか、来年度予算の概算要求は「IT」ラッシュである。
ITがこれからの経済社会の発展の担い手の一つになる ことは間違いあるまい。
しかしだからといって、IT推進で国はどんな役割を果たすべきか、予算をどの
分野につぎ込むべきか、といった議論をせずに、ぶんどり合戦やばらまきをしたら
公共事業の二の舞になるだろう。』 ー8月31日 朝日新聞 社説
今日のタイトルはあえて英語にしたわけだ。その真意はおわかりいただけるだろ
う。なんでもITと名がつけば通る時代だ。しかし改めて、それって一体なんです
か、と改めて聞きたいのである。猫も杓子もIT、ITって騒いでいるが。
7月の総選挙の後、政府与党は突然公共投資の見直しを言い出した。そして233
もの公共事業は中止だと決めたのだった。無駄なものを無駄と認めだから、それはそ
れでいい。が、そんなことをする意図は見えすいていた。
そうして浮いたカネを、今度は今流行りの、そして森首相が言い出したIT革命を
実現するためにさまざまな新規分野に投入したいということだったのだろう。無駄な
公共投資をそのままにしておいて、また別の公共事業たるITにカネを使うというの
は言いにくいので、まずそれはやめると宣言したわけだ。そのことはわかっている。
そして各省庁の予算分捕り合戦が始まった。今までと同じパターンである。一番困
るのはさまざまなプロジェクトが相変わらず省庁担当ごとの縦割りになっていること
だろう。それぞれの省庁のなわばりで、プロジェクトがあるので、どうしても重複や
無駄が生じることはわかりきっている。
それと相変わらずの公共投資についてもおカミ感覚。上記朝日新聞の社説にもあっ
たが、IT産業振興の先進国のアメリカでは国が、「情報ハイウエイ」の旗印を掲げ
ただけで、その推進力となったのは殆ど民間自身の投資であり、活力だったのである。
日本の政府役人、政治家はこのことをよく考えて欲しいのである。
IT革命推進のために、政治は、政府は何をやるのか、やれるのか、まずこの議論
が必要なのである。
2000/9/9
Tadashi HAYASE
今週の意見(183):
安保理改革
森総理が国連ミレニアムサミットで演説し、安保理改革を訴えた。直接日本の常
任理事国入りには一切触れなかった。それでいいと思うが、なんとなく割りきれな
い気持ちもある。
森さんに限らず、日本の首相はあちこちへ出かけ、またやってきた各国首脳に日
本の安保理常任理事国入りの支持を頼む。大抵は賛成だという。先日のロシアだっ
てそうだ。その代わり見返りにこれこれの経済援助をしますって約束することが多
い。
安保理の改革案が示され、常任理事国拡大の選挙が行われたら賛成側に回ります
なんて約束なんて簡単なこと。実際には、まだまだなかなかそういう改革決議など
行われそうにない。常任理事国の拡大に反対、ましてやドイツや日本が、常任理事
国になることに反対の国は先進国にも結構多い。なぜ日本とドイツなのか、という
やっかみもあろう。日本はカネはだすが、多国籍軍になど一切派遣しないのにそん
な資格があるのか、ということもあろう。
日本は国連への拠出金の2割を負担している。どういう計算でそんなことになっ
ているのかよくは知らない。常任理事国だといばっている他の大国、特にロシアと
か中国はどうなっているのか。アメリカは当然負担額はNO1のはずだが、これを
滞納しているのである。
それとこれとは関係ないと言ってしまえばそうだが、果たしてそうだろうか。常
任理事国になどなっても、ならなくてもよいが、どうもその辺よくわからないので
ある。第二次大戦終結後の枠組みの中でできた体制がまだそのまま生きているので
ある。東西関係の大変化、南北関係のさらなる深刻化の国際情勢の中で、国連が一
体どこに向かって進もうとしているのか。正直言ってそれがもう一つよくわからな
いのである。
2000/9/16
Tadashi HAYASE
今週の意見(184):
シドニー・オリンピック
シドニーオリンピックが始まった。オープニングイベントもテレビで見た。楽し
い、すごい、豪華、絢爛。
だけど特に感激したわけではない。なにしろ長い。夕方5時からよる10時まで
やっていたか。ほかのことをしながらちらってちらっと見る程度。
当日朝NHKのニュースの中で女性アナがなんども、「5時から全国民待望のオリ
ンピックが始まります」というようなことを言った時、わが妻が「何を言ってるのよ。
全国民なんて言わないで。こちらはそんなものにはまったく興味がないのだから」 と
のたまわった。
そうだ、そうだ、と私も同調したのである。大体が二人ともそもそも天邪鬼だ。世
間が大騒ぎすることにあえて異を唱えるくせがある。そうなのである。なんでマスコ
ミはあんなに大騒ぎするのか。そしてそれに乗せられる人々。
日本がいくつ金メタル取るかなんてことにもさして興味はない。アマ・プロ混然と
なった各種競技。競技の裏でうごめく商業主義、ステートアマ、国威発揚の行き過ぎ。
田村選手だけは今回はぜひメタルを取らせてやりたい気持ちは恐らく全国民共通であ
ったろうし私も金メタルはよかったと率直に思う。それは彼女自身のメタルであって
日本の名誉とは関係ない。
果たしてオリンピックってただそんなことだけなのか。9月9日の朝日夕刊に大橋
巨泉氏も書いている。「安易な愛国心高揚だけのために行われるオリンピックなら、
もうこんなモノいらない」と。私も同感である。
2000/9/23
Tadashi HAYASE
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