1998年 今週の意見 10月

今週の意見(86):

時間が掛かりすぎる

 金融再生関連法案がやっと決着したらしい。らしいというのは一応の与野党
合意ができたもののまだまだ法案成立までもめそうなことがあるからだ。先週
末合意に基本的達したとのことであったが、長銀への公的資金投入に関してそ
れぞれの見解が異なり、結局しきり直したいうことだ。そしてまた協議が延々
と続いていく。

 今日の話もそのことではない。外国から言われるまでもなく日本の金融シス
テム安定化のために、それは急を要することなのである。ところが日本ではな
んでもこうした決定に急を要することに、あまりにも時間が掛かりすぎる。こ
ういう重大事、それぞれ見解が異なり、さまざまな意見があることことはわか
る。議論も当然必要だろう。が、日本の場合それが掛かりすぎるのである。

 民主主義とは最大多数の最大幸福のための最大公約数を求め、合意に達する
プロセスであることは言うまでもないだろう。しかし、ただ時間を掛けること
がいいことでもないし、議論そのものが目的ではない。目的はあくまで、最大
多数のためになる結論を早く導くことなのである。

 今はスピードの時代、ものすごい情報がものすごいスピードで処理される時
代である。金融システムなどまさにそうである。ゆっくり、スローモーにやっ
ていては取り返しのつかない事態を招くおそれがある。そのことも何度も指摘
されながら、どうしてこうも意志決定が遅いのだろうか。

 その理由はやはり政治のリーダーシップの欠如ということになろう。今の小
渕政権はもはや、政治的リーダーシップを発揮しえない、していないのではな
いかと言われてもしかたがない。与野党の勢力が均衡する中で野党からの協力
がない限り、法案が成立しない事情はあろう。が、野党対案をほとんど丸飲み
の形でも、合意に達しないとは一体どういうことなのだろうと思う。本当に国
家国民のために何をすべきか、という観点に立てば、決めるべきことにどうし
てそんなに違いがあるのだろうと思う。それができないことがまさにリーダシ
ップ欠如なのである。

 どんな決定であろうと、完璧なものはない。ある意味で試行錯誤がつきもの
である。まず現状において何をすべきか、焦点を絞ってそれを強力に実行に移
す。それに足りないことは状況に応じて修正したり、追加していけばいいので
ある。それをするのが政府の責任のはずである。それができない内閣なんてさ
っさと交代すべきである。野党も合意ということばかりにこだわらないで、政
府の決断を見守り、それを実行させる時間は与えるべきである。それが駄目だ
と判断したら、政権交代をめざせばいいのである。議論ばかりしていてはなん
にもならない。

1998/10/3
Tadashi HAYASE
今週の意見(87):

新しい五輪の準備

 10月10日、体育の日である。34年前の東京オリンピックを記念して設けら
れた。東京オリンピックは日本の繁栄の象徴であった。アジアで開かれた始めての
オリンピック。日本はアジアの先頭を切ってこの大会を成功させ、自らも数多く
の金メタルを獲得した。

 金メタルを獲得したのはスポーツだけではない。東京オリンピックを契機に国内
には新幹線ができ、東京には首都高速道路が建設された。トランジスターラジオな
ど輸出大国の名を欲しいままにして、その後の高度経済成長時代を迎える。国民の
生活は飛躍的に豊かになり、日本は世界第二位の経済大国となったのであった。

 あれから34年後の日本はすべての面で様変わりである。経済不況、企業倒産、
高い失業率、高齢化、さまざまな社会不安など、あの東京オリンピックの頃のよう
な夢と希望に満ちた社会ではなくなってしまった。さあ、どうしたら今一度あの頃
のようか活気を取り戻すことができるか、である。

 第一変わったのは日本だけではない。あの頃の世界と比べて、世界中の国々が大
きく変貌を遂げているのである。国際化、情報化、ネットワーク化そうした言葉に
象徴される新しい国際社会となっている。そして人類社会共通の問題としてとりく
まなければならない地球温暖化など環境問題がある。環境問題は日本自体の問題で
もあるがその問題解決は人類自体の存続がかかっているのである。

 G7先進七カ国の蔵相会議が開かれ、日本の経済成長促進が要請された。日本の
成長回復が遅れていることが世界中の景気停滞の足かせになっていると非難された
のである。そして日本政府はもっと公的資金を投入して金融システムの安定をはか
ったり、財政出動によって内需拡大につとめるべきだとされたわけだ。

 これに対し宮沢大蔵大臣は弁明にこれつとめていた。「うーん、そう言われても
事はそう簡単ではない。国内でもなかなか景気対策についてはなかなか意見が一致
しないし・・・」そう、ことはそう簡単ではないと私も思う。公的資金をじゃん、
じゃん使い、公共投資をじゃん、じゃん行えば、景気は回復し、経済成長が達成で
きるか。そう簡単ではないと思う。

 私の考えはこうである。もう一度あのオリンピックのようなビッグイベントを企
画し実践するのだ。但し、それは単なるスポーツ国際大会ではない。その五輪とは
教育、体育、福祉、環境、情報の5つの社会資本、インフラの充実をはかることで
ある。日本いまかって比類なき高齢化社会を迎えつつある。その中で高齢者の健康
の維持、増進、体育の促進がなによりの福祉対策となるはずである。

 教育、福祉、環境、情報など、4つの分野での社会資本の充実、インフラ整備に
ついてはこれま何度も同じことを書いた。これに体育の充実を加えるべきである。
国民の体育、健康の維持向上がこれから何よりも大切なことになる。この5つの分
野にこそ公的資金を使い、公共投資投資を積極的に行うべきである。私はこれを新
しいオリンピックと呼びたい。

 この新しい5輪を成功させる以外に、日本再生の道はない。

1998/10/10
Tadashi HAYASE
今週の意見(88):

Web Forumの可能性

 日経MIXが終了し、BizTech Forumが始まってまもなく一年になる。会員はどれく
らいになったのかわからないが一万人は越えたものと思われる。BizTech Forumが始
まった当初は会員数も少なく書込も極めて少なかった。入会した時に一度は誰でも
アクセスすると思われる、(Hello! 交差点)でも一日多くて数件の書込があるだ
け、他のForum会議室では何日も書込ゼロということも、珍しくなかった。

 一年経って、会員数は着実に増え、それぞれ主な会議室の書込数も1000件を越え
るところが出てきた。(Hello! 交差点)などは2500件を越えた。この他私が世話役
をやっているビジネス、国際化サロンなども1000件を越えるようになったから、まず
まずである。

 なぜ書込数にそんなにこだわるのか。こうしたWeb Forumでもその前身であるパソ
コン通信にしても、forumは書込数がその命である。会員数が多いことも大切だが、
いくら会員数が多く、アクセスして、forumの中身を読んでくれても、自らメッセー
ジを書いてもらわらなくては価値が半減、いやその名前からして価値がないと言って
過言ではない。

 もっともいくら多いと言っても、やはりその内容、質が問題だし、逆に書込が多す
ぎても参加者が読み切れないという問題も出てくる。理想的には一つのForumにコン
スタントに一日数件しかもそれぞれ別の人に書いてもらうのが一番いい。こうして数
多くの人がメッセージを書き、読み、コメントし、さまざまなテーマにつき意見を交
換していくのがまさにフォーラム、それが実に楽しく、また勉強になるわけである。

 パソコン通信のMIXから、Web形式を売り物にして始まったBizTech Forumもようや
くやや軌道にのりつつあるように見える。が、その発展の可能性から考えてまだまだ
不満の点も多い。まず第一に書込者の絶対数がまだまだ少ない。メンバーの80%、
いや90%がいわゆるROM、もっぱら読むだけのの会員である。これをどう増やす
か。これが重要なテーマである。

 第二にこうしたWeb Forumはパソコン通信とちがってインターネットを使った通信ネ
ットワークであるから、その内容ははるかに豊富でありうる。第一世界中からインタ
ネットを使って簡単にアクセスできるところがすごい。現に今のForumでも、毎日あた
かも隣同士で話しているようにタイとか、モンゴルから参加して書込をやっておられ
る会員がいらっしゃるのである。
 
 それとなんと言っても、メッセージは普通のテキストはもちろんHTMLででも書ける
から、メッセージの中に画像、音声を入れたり、他のインターネットホームページな
どにリンクが貼れたりできるから、その表現形式は実に多彩なのである。こうしたも
のを駆使したメッセージのやりとりは、一度そのおもしろさを知ったら、おもしろく
てやめられないだろうと思う。いや、かくいう私自身がそうなのだ。

 まだ、Web Forumを試みたことのない方は是非一度試してみられることだ。私はこれ
こそが個人として利用する場合の究極のインターネットの利用法の一つだと思ってい
る。ネットサーフインなどものの比ではない。

1998/10/17
Tadashi HAYASE
今週の意見(89):

イノベーションの理論

 失業率が4.3%と最悪の状況である。消費、設備投資が伸びずそのためにモノを作
っても売れない。企業の営業活動は縮小せざるをえない。昔大学でならったデフレ
ーションギャップというやつである。

 35年前、大学で経済学なるものを習った。特に経済学に興味があったわけでな
く、理科系に進むには数学が弱かったし、文科系に進むとなると、文学部とか、法
学部とか、経済学部位しかなかった。そしてたまたま入った大学の経済学部はいわ
ゆる近代経済学を中心に教えていた。当時の経済学は大きくマル経、近経という二
つの流れがあった。マル経とはいうまでもなく、マルクス経済学、そして近経とは
近代経済学のことであった。

 もっともそう言われても、なんのことかよくわからなかったし大学を選ぶ時、そ
の大学の経済学部がどちろを中心に教えているかなど調べて入ったわけではない。
が、結果として偶然それでもその大学で近代経済学の方を学べることができたのは
ラッキーだったと言えよう。と、いうのはその後、共産主義を信奉する経済体制が
この世から事実上なくなってしまい、マルクス経済学そのものがもう完全に過去の
ものとなってしまったことはご承知の通りである。

 そしてその近代経済学の中心はいうまでもなくケインズ経済学であった。社会経
験の乏しい学生の身でその理論のなんたるか、本当のところよくわからなかったが
その時学んだ所得論、有効需要論などは、その後社会人になり、ビジネスの現場に
身におくことになってあらためてその中身がわかるようになったということである。

 そして今日の経済不況。その対策のために政府が打ち出そうとしている、また多
くの経済評論家がすすめる公共投資促進論、消費刺激論などは、まとめて言えば、
ケインズの有効需要創出論に基づいているものだと言っていいだろう。そしてそれ
らはすべて総論としては正しいと思う。

 が、問題はその中身である。これまで何度も論じてきたように、ありきたりの公
共投資やありきたりの消費刺激策では今や一向に総需要は伸びてこないのである。
そして今こそ私が学んだ経済学の中で、ケインズのそれと並んで思い出すのがシュ
ンペータのイノベーション、技術革新論である。イノベーションを技術革新と訳す
るとその範囲が限定されるようだが、シュンペータはイノベーションとは新しい市
場の開発、つまり新しい製品、新しいサービスの開発、その流通手段、生産方法の
革新などのことを総称してイノベーションとしているのである。

 経済再生のために、経済不況脱出のために今まさに必要になっているのは、シュ
ンペータのいうイノベーションそのものだと思う。大学のゼミで他の殆どのゼミが
ケインズの勉強をしていたのに、私が選んだゼミでは、シュンペータの理論を多く
学べたことは、今考えると非常にラッキーだったと思う。それらの理論をここで詳
しく述べるつもりはない。が、私は今政治家や経済政策家が学ぶべきはケインズよ
りもシュンペーターではないかとつくづく思うのである。

 一度シュンペータのイノベーション論のさわりを学んでみられることをおすすめ
したいのである。それに今日の不況打開のための政策のヒントが隠されていると確
信するのである。

1998/10/24
Tadashi HAYASE


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