1997年 今週の意見 −11月


今週の意見(41):

独り勝ちはやはりまずい

  新聞・テレビが報じたように10/20米司法省はインターネットの閲覧ソフト
販売の是正を求めてマイクロソフトを独禁法違反の疑いがあるとして提訴した。
マイクロソフト社はこの提訴に関して全面的に争う姿勢であり、これから裁判
が始まる。裁判結果はどうなるかわからぬが、私個人としては米司法省の主張
が裁判で勝利することを期待するものである。              

  インターネットの閲覧ソフトとしてはその先駆である、ネットスケープナビ
ゲータ(以下NN)とマイクロソフトのインターネットエキスプローラー(以下
IE)が主流であることはご存じの通りである。最近両方ともさまざまな先進機
能を備えた最新バージョンを出したこともご承知であろう。が、最近は後発であ
るマイクロソフトのIEが先発のNNを凌駕しつつある。それというのも前者が
Windows95というOSと一体化のものだとし、それ自体を無料としているのに対し
後者はそれ自体が独立した商品でありいうまでもなく有償であるということから
きている面が大きい。IEは最新のバージョン4.0ではOSとの一体化の立場
をより明確にしていることでさらに市場での競争に有利に立とうとしているわけ
である。                                

  ユーザの立場からして、インターネットの閲覧ソフトがパソコンのOSと一体
化することについてはなんら異論はない。現実そうなったことでさまざま使い勝
手が向上した面はある。そのことは来年発売が予定されているWindows98で一層
それが進むことは想像に難くない。それはそれでよい。           

  が、そのことで、もう一方というか、他のいい閲覧ソフトが結果として葬られ
てしまうのは果たしてどうだろうかと思う。どんなソフトでも必ずいい面、悪い
面、使いやすい面、使いにくい面がある。閲覧ソフトとて同じ。最新のバージョ
ンはまだ使いこなしていないが、以前のものについては私はそれぞれの状況に応
じてIEを使ったりNNを使ったりしている。それぞれの利点を考えながら。こ
れは別に閲覧ソフトに限らない。ワープロ、表計算、通信ソフトなどについても
同じことが言える。だからOSはともかくその他応用ソフトに関してはさまざま
なものが競争しながら存在し続けてもらいたいのである。その結果それぞれの性
能が競争の中でさらに向上し、価格も求めやすくなっていくのである。    

  もう一度言うが、マイクロソフト社が閲覧ソフトをはじめとする応用ソフトを
OSを一体化しようとすること自体はいい。が、それを戦略として他のメーカの
応用ソフトを使わせない、パソコンの世界からしめだしてしまおうという戦略は
消費者としても黙視するわけにはいかない。私はマイクロソフトのオフイスプロ
95の登録ユーザだが、オフイスプロ97のバージョンアップの案内がきた。そ
れでその提示価格をみたのだが、普通に店頭で売っている値段としても安いどこ
ろかむしろ高い位だし、他の競争商品の買い替え価格なんてのよりも高い位なの
である。一旦お客にしてしまえば多少のことでもついてくるだろうという姿勢な
のかと疑いたくなる。本来の客よりも、他社製品を使っている客を何がなんでも
奪ってしまおうという姿勢なのである。                  

  ことほどさように独占状況は困る。独占禁止法などという法律は自由競争の原
理とうらはらのところにある。それ自体自由競争を制限するようなものであって
はならない。が、今回のマイクロソフトの戦略が果たして自由競争の原理にのっ
とったものであるかどうか、私は疑わしいと思う。OSを購入するパソコン・メ
ーカに閲覧ソフトも抱き合わせで押し付けようとするのは明らかにおかしいと思
う。そんなことが許されるなら、そのうちにすべての応用ソフトについても同じ
ように抱き合わせ販売を始めるに違いない。それではパソコンの世界はまさにマ
イクロソフト社の一人勝ちとなる。「勝利者はすべてを取る、が、ほんのしばら
くの間」ではなく、「勝利者が永遠にすべてを独占する」状況となる。これでは
パソコン市場が本来の消費者のための正常な発展を続けることができなくなるこ
とは明らかである。                           

1997/11/1                               
Tadashi HAYASE

今週の意見(42)

100メートルの面子

  長野オリンピックまであと100日、それについての話題が何かと多いが中
でもスキー滑降競技での主催者側と国際スキー連盟の対立が重要な問題である。
長野県側は環境保護を理由に滑降競技スタート地点を従来の競技やってきた地
点としているのに対し、国際スキー連盟側は、そこでは選手の技の差が出ない
として、さらに高い地点からのスタートを求めているというもの。

  そもそもそのより高いスタート地点は国が定める特別環境保護区であって一
般のスキー客の立ち入りは認めていたものの競技では認めていなかった。国際
スキー連盟が一般スキーヤが立ち入っていることを根拠にスタート地点引き上
げを主張するのなら、一般スキーの立ち入りも禁止しようという動きがあった。
それに反発して、そんなことなら国際スキー連盟はオリンピックに参加しなと
と言い出して昏迷を深めているわけだ。          

  ホドラーFIS会長の言はもちろん脅かしだろうが、しかし、県側としても
そう簡単にその主張を変えるわけにはいかない。なにしろ環境保護という大儀
名分がその根拠となっているからである。オリンピックとはいうものの単なる
スポーツ競技、それをただおもしろくするために環境を破壊するわけにはいか
ないという大儀を持ち出されると、国内関係者は誰しもそれに真っ向から異議
を唱えるわけにはいかないというのが実状だろう。      

  しかし最後は県側もオリンピックを成功させるために、引き上げ案に同調す
るかもしれない。しぶしぶスキー連盟の圧力に屈してというスタンスで。オリ
ンピック成功のためにはやむをえないと。それがいつもの日本の官僚、官庁関
係者のやり方で、それが情けないと思う。            
 
  私の考えはこうである。オリンピックなど本当はどうでもよい。環境保護が
一番大切というのはその通り。が、せっかく長野に招聘した以上それを成功さ
せるべきであることはいうまでもない。そのためには国際スキー連盟の要求は
聞き入れてもいいと思う。オリンピックを招聘した以上環境保護のことも十分
念頭におき、それに影響もないという前提で、しかも国際レベルの競技をやっ
てもらえるという検討もあったはずである。それが欠落していたとしたら、そ
もそもそれは招聘した側の責任である。たまたまスキー競技のスタート地点の
ことが問題になったが、それがどうしても致命的なことならともかく、100
メートルほど引き上げるだけのことである。今更そこが国定保護地域だのどう
だの言っても遅いと思う。             

  当時者はそのことを率直に、環境保護を重視して反対を叫ぶ住民にわび、関
係先に了解を求めて、今は国際スキー連盟の要望に応えるのがいいと思うので
ある。そしてオリンピックが終了した時点で必要な修復措置なり、改めて一般
スキー客の立ち入り禁止措置をとるなりしてその後の環境保護に努めるのが筋
と思う。                          

1997/11/8                             
Tadashi HAYASE
今週の意見(43):

新聞再販価格維持に反対

 政府の行革規制緩和小委員会で新聞の再販売価格維持制度について公
開討論会を行っている。日本新聞協会側はそれを廃止すれば過当競争と
なり、販売店が倒産したり、新聞の品質を保てなくなり、読者に迷惑を
かけると主張。制度維持の立場。主婦連など消費者側は販売店の強引な
勧誘や、契約方法などに問題が絶えないとその廃止を主張している。 

 本件についての私の感想は、へえ、再販価格維持などとそういう制度自
体まだあったのかということ。日本で新聞や、本、CD-ROMなどが諸外
国に比べて割高なのはそうした制度存在のおかげであることはあきらか。

  それがなくなったら一体だれが困るのか。それがなくなったら、過当
競争になって新聞の品質が落ちるなどという新聞社、新聞協会のいい分
はまことにもって奇妙千万である。                

  日頃政府の行革推進に関してさまざまな批判を呈する新聞が、こと自
分のこととなると、この時代遅れの価格再販制度の維持を叫ぶのはまこ
とに厚顔といわざるをえない。どんなモノであれ、サービスであれ、ソ
フトであれ、そして出版物であれ、その価格は需要と供給の関係で決ま
るべきであるのが市場経済の原則である。商品提供側がその価格を決め
それを販売店に押し付けるなどという制度自体が時代遅れであると言わ
ざるをえない。                         

  常日頃規制緩和、行革推進を標榜する新聞社自体がこうした時代遅れ
の制度にしがみついていることに一消費者として大きな疑問を呈するも
のである。価格を自由競争にまかせると品質が落ちるなどとは、なんと
消費者を馬鹿にした考えであろうか。               

97/11/15                            
Tadashi HAYASE                         

今週の意見(44)

税を知る週間

  先週は「税を知る週間」だった。国民として税金について正しい知識をもち納
税には協力しようではないかというもの。各地の税務署で芸能人だとか、スポ
ーツマンだとかを動員して一日税務署長になってもらい、街頭に出て、PRと
いう図式であった。おりしも有名プロ野球選手が10人ほど脱税し、起訴され
るという事件が起こった。タイミングがよかったというべきか、悪かったとい
うべきか。そうした週間を主催する側は、こんなことだから、税金は正しく収
めましょうということになるのだろう。                 

  税金を正しく収めると言うが、我々のようなサラリーマンには、今回のプロ
野球選手の脱税行為のようなことは仮の話したくてもしようがないのである。
というのは、説明するまでもなく所得税にしても住民税にしても、すべて毎月
のサラリーから天引き、源泉徴収されるからである。だから我々サラリーマン
にとっては「税を知る週間」とか、「税は正しく収めましょう」などと言われても
もう一つピンとこない。毎月自動的に天引きされ、保険関係とか、扶養家族の
収入の調整などいわゆる年末調整までも、勤め先の会社で全部やってくれるか
ら、そもそも一般の勤労サラリーマンが税務署と直接関わることはほとんどな
い。                                 

  日本人は税意識、納税意識、納税者としての権利意識が薄いと言われるのに
はさまざまな理由があろうが、一つにはこの源泉徴収システムがあることは間
違いない。今日本経済はかってない不況の真っ只中にある。株式市場の低迷、
円安、円売りの背景の一つは行政改革や規制緩和の遅れが大きくその背景にあ
る。言い方を変えれば、官僚支配による税金の無駄遣いのしくみの改革が遅れ
ていることへの国際経済社会の評価の結果だ、と言える。しかしそれはつまる
ところ選挙民、納税者たる国民の選挙などにおける現体制への厳しい選択、批
判がない結果ともいえる。つまり、納税者としての権利意識のなさの結果だと
言えるのである。                           

  「税を知る週間」 結構である。国民として税金を収める義務のあること、その
ことに目覚めることは当然である。と、同時に今大切なことはその税金がどのよ
うに使われ、どのように政治や経済、我々国民生活に活かされているか、厳し
く監視するという権利意識をもっと強力に持つ必要がある。そのためにも私は
この際源泉徴収制度などは廃止すべきであると思う。税金は自分で計算し、自
分で申告するしくみに変えるべきである。そのために税務署で職員の数が増え
行革に反する結果になるという反論も十分承知の上である。        

  そのことと、今国民一人一人が本当に納税者としての権利意識に目覚めるこ
とのどっちが大切かである。                      

1997/11/22                             
Tadashi HAYASE
今週の意見(45):

護送船団の解体

  山一証券が自主廃業に追い込まれた。楽しい3連休の間、この暗いニュー
スばかり。しかし、企業に勤める者は皆、「明日は我が身」と不安感をつのら
せたに相違ない。                          

  「山一自主廃業の方向」と報じられた時、意味がよくわからなかった。で実
際にそれが発表され、マスコミの報道や大蔵大臣の記者会見、日銀総裁の記
者会見を聞くうちにその意味がだんだんわかってきた。         

  多額の不良債権を抱えて山一証券が倒産に至る。で、通常の場合であれば
会社更正法にもとづいて破産しても会社が更正する道を選ぶのが普通である。
準大手の三洋証券が倒産した時はそうであった。倒産したものの企業として
は更正する道が残されたし、どこかの企業に吸収合併してもらう道も残され
ている。企業は存続して、社員も全員でないかもしれないが、とりあえずそ
こでの雇用が確保されている。が、山一の場合、もう廃業である。更正の道
すらなく、関連会社を含めると1万人もの社員が職を失い路頭に迷うという
ことである。                            

  金融市場の混乱を避けるため、公的資金の導入を含めて政府が万全の策を
とるとしたのは当然。が、社員の雇用確保などということについては政府は
もちろん関知しないし、山一の社長が社員の雇用確保に関して協力を呼びか
けても、同業他社はもちろん他企業も冷たい反応。明日は我が身、人のこと
などかまっておれないということであろう。              

  海外の反応、特に円相場など円安一色かと思ったが、さほどでもなかった
のは、これで日本の金融界の透明性が一歩進むという評価だったのだろう
か。いわゆる銀行、証券、保険といった金融業界は大蔵省主導の護送船団方
式でやってきた。が、もうそれでは今のあまりにも膨大な不良債権が支えき
れなくなったわけだ。大蔵省は4大証券の山一すら見捨て、切り捨てた。事
態はそこまで深刻であった。もうこれからは歯止めがかからない。証券業界
銀行業界、それぞれ第2、第3の倒産廃業が出てくるであろう。なんと無残
なことか。でもそれはしかたがない。この際徹底的にウミを出してしまう以
外には日本丸再生の道はない。                    

 こんな結果を招いた大蔵省などの責任追及はまた別のこととしてもである。

1997/11/29                             
Tadashi HAYASE                           
 
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