2009年 今週の意見 11月

今週の意見(654):

国会改革が始まった

政権交代後の国会での代表質問が終わり衆参両院で、予算委員会が始まった。衆参
を通してNHKがその様子を中継していた。全部見たわけでないが、トータルで1
0時間はあったろうか、かなりの部分その様子を見ることができた。その感想をま
とめておきたい。                                                          

これまでの国会での委員会審議と一番大きな違いは、なんと言ってもそれが官僚抜
きの審議になったことだ。これまでだと、担当官僚が与野党の質問者に対し事前に
質問取りをする。そしてそれについての回答を関係官僚が書き、首相をはじめ、関
係の答弁大臣にそれを手渡しておく。そして委員会では、質問者の質問に対し、首
相はじめ関係大臣がその回答メモを読み上げると言う形で行われてきたのだった。
だからそのやりとりを聞いていてもおもしろくないし、迫力もない。その答えは政
治家自身の考えが全くないとは言わないが、それぞれの省庁の官僚の意向、考えと
いうものであったということだ。加えて、質疑応答に加わるのは国会議員だけでな
く、高級官僚自体が政治家に代わって回答するという場面が数多くあった。      

これに対し今国会からは、民主党小沢幹事長などの考えで官僚の答弁禁止というこ
とになった。しかも事前の質問取りもなくなってしまった。内閣官房では、どんな
質問か事前に聞いておくくらいはいいだろうと考えたようだが、自民党はそれを拒
否したようだ。従って首相なり、関係閣僚は当日質問者から出る質問に、その場で
自ら答えなければならなくなった。それはなかなか大変なことになった思って初日
のやりとりを見ていたが、予想を裏切って、鳩山首相を初め、関係閣僚はいじわる
な細かい数字や具体的な事実関係を含む質問を見事にこなしていたのには感心した。
あらかじめ用意されたメモなどを読むわけでなく、全て自分の言葉で、自らが答え
ていたのには感心した。                                                    

これがもし反対の立場であったらどうなったかである。つまりかっての自民党の閣
僚連中がそうした即座の質疑応答にどれだけ、応えられたかである。もちろん出来
たであろうが、民主党の閣僚のようにあそこまで見事にやれたか、どうかである。
国会委員会など官僚任せの前与党議員と違って、民主党の閣僚たちは全て長年野党
の座にあって、自らの手で政策課題について調査し、その内容について自ら質問を
発したのだった。長年の野党の経験が与党議員のレベルとは比較にならない政策作
成能力、説明能力を身に着けさせたことになったようだ。今回の国会審議で民主党
閣僚は大きな自信をつけたに違いない。                                      

このように国会がまさに政治家中心に展開し、活性化したことは政権交代の大きな
意味の一つであった。                                                      

その一方で自民党議員たちの質問能力、討論能力の方はどうもまだまだの感が深い。
それは討論能力というが、要するに政策について根本的に論理的な討論を展開する
ことがどうも苦手らしいように見えた。                                      

加えて一番の問題はいうまでもなくテーマ選定である。議論というより、野党自民
から鳩山首相への質問はこれでもか、これでもか、といわんばかりに、首相の献金
偽装問題に集中したことだった。それと外交問題、安全保障問題質問が多かった。
いや、その二つの重要性を否定するものではないが、予算委員会なのだから、どう
してもっと、それぞれの政権の政策のこと、経済情勢のこと、財源のこと、雇用の
問題、社会保障関連のことなどなどこれからの国家の進むべき道、道路マップにつ
いての議論に間を割かないのかである。                                      

そうした内容について脱官僚による論戦を深めることこそが、国民が期待している
はずで、街の声も圧倒的にもっと、国家の将来像についての問題を論じるべきだと
言っていたのを印象深く聞いたわけだ。絶対にそうである。                    

自民党があのような相変わらずのネガティブキャンペーンばかりやっているようで
は、国民の信を再び取り戻すことなど当面できないであろうことをこの際指摘して
おきたい。                                                                

2009/11/7
早勢 直

今週の意見(655):

事業仕分けの意味

鳩山政権による政治改革の目玉、行政刷新会議による事業仕分けが始まった。11
日の朝日、日経、産経の三紙は社説で、この事業仕分けの意味と期待、あるべき方
向について論説している。これまでの国家予算作成の課程でこのようなことが行わ
れるのは画期的なことであり、このテーマを社説として取り上げたのは当然だ。  

ただその論調がかなり違うところが興味深い。三紙とも国費の無駄を削減するため
に聖域なく、事業仕分け評価に踏み込むことを期待している点はいいが、縦割り行
政、各省庁のしがらみ、党内外からの賛否などあって、鳩山首相の思い通りに進む
かどうかについてそれぞれ疑問を呈している。元々民主党政権の支持について消極
的な態度の産経新聞は特にその成果については疑問視しているようだ。朝日がこれ
を国民が直接政治の場に参加できる絶好の機会というとらえ方をしているのが正解
だと私は感じた。                                                          

そもそも事業仕分けということについて各省庁が抵抗するのはわかるが、連立をく
む社民党や国民新党からもさまざまなクレームが出ている。これはおかしい。どう
してこんな画期的なすばらしい試みにけちをつけるのかわからない。閣内からもい
ろいろ異論が出てきているが、これはやむを得ない面もある。例えば北沢大臣はお
もいやり予算は国家の防衛に関することだから、こうした作業にはなじまないと発
言しているが、そんなことはない。これは国家防衛の根幹に関わることはともかく
おもいやり予算の中ににもその本来の趣旨からはずれていることもありそうだ。ま
さに聖域なき仕分け作業であるべきである。                                  

鳩山首相もこの仕分け作業が始まったことに国民の期待が大きいと胸を張っていた
が、その評価作業が一件一時間で終わり、大胆に結論が出されることに、評価され
た側から、大大雑把過ぎるとクレームが出ていることに関して、丁寧な説明が必要
だと発言していた。もっともな発言で、そのこと自体は否定はしないが、丁寧もな
にも今は断固やらなければならない時なのだ。少々の大胆さはあってしかるべきと
考える。でないと改革などできるわけがない。                                

なにしろそれは長年にわたって行われてきた財務省主計局と各省庁の間でのある意
味馴れ合い的な交渉を真っ向から否定するものなのだ。それを積み重ねてきた結果
国民の目に届かないところで、税金の使い道について大きな無駄を生んできたので
ある。それを真っ向から否定することから始めない限りそうした無駄はなかなか排
除できない。                                                              

それはまさに一種の「革命」なのである。あちこちで痛みを伴うことはあろう。ただ
一滴の血も流すことのない「革命」であって、それはすばらしいことではないか。  

そもそも事業仕分けで廃止と決まってもそれが最終結論でない。これから財務省と
の折衝、閣議決定、さらに国会審議を経て最終予算が決まるのである。担当の行政
刷新会議では、この事業仕分け作業で3兆円の削減をめざしているが、これについ
ても、それは無理だろうとか、そもそも3兆円くらいでは少な過ぎるだの批判が出
ている。                                                                  

おかしな話である。やればやったで批判、出来なければ批判、それはない。一番肝
心なことはたしかにどれだけ削減できるかが問題だが、仮にその結果目標額に達し
なくてもいいではないか。こういう予算編成の過程が、国民の目の前でオープンに
議論され、場合によってはそれに国民が直接意見を述べる可能性もあるということ
自体がすごいこと、まさに革命的なことではないか。その過程をそれが行われてい
る会場に出かけて見学もできるし、家にいて、ネットでその状況を見ることもでき
る。                                                                      

このようなことは先進民主主義国でも行われているという話は聞いたことがない。
私はこれは直接民主主義という理想に一歩近づく試みであるととらえている。おそ
らく3兆円近い削減、それに5000億円もの埋蔵金の掘り出しなど具体的な成果
の評価もあろうが、それよりも国家の予算編成作業がこうしたオープンな形で行わ
れていることの意味を高く評価すべきだと思うのである。                      

2009/11/14
早勢 直

今週の意見(656):

エコポイント延長検討を歓迎する

菅 直人国家戦略相は11月17日の閣議後の記者会見で、いわゆる「エコポイン
ト」制度は景気対策として有効であるとし、この制度の延長を検討すると発表した。
このことについては、私はすでにその景気対策としての有効性について説き、政府
は是非これを延長すべきだとBLOGでも書いていた。                        

この制度が極めて有効であるというのは、その対象商品がデジタルテレビ、ハイブ
リッドカーなど国の基幹産業の商品の消費拡大につながるだけでなく、ポイントで
もらえる商品券、プリペイドカードなどでさらなる一般商品、環境関連商品の消費
拡大につながるという二重三重の経済効果が期待されることだ。先の政権が始めた
経済対策の中でも一番有効なの景気対策であり、しかも現政権がこれを評価して継
続するという流れはさらなる景気対策の成果につながっていくものであろう。    

このエコポイント制度の中身はまだ一般によく理解されていない向きもあるが、私
自身も改めてさらにその内容について調べてみた。制度をまだよく理解していない
人はネット上に制度をわかりやすい解説した動画などもあり参考にされるといい。

今回の延長方針については、ただ従来の制度を延長するだけでなく、エコ、環境対
策という観点からいうと、現在対象になっている商品だけでなく、もっと広い意味
で環境対策につながる商品がある点に着目すべきだ。住宅関連、交通・輸送関連、
自動車関連でも今や、ハイブリッドカーでなく、むしろ電気自動車であり、電気自
転車と言ったものに対象を広げるべきだ。さらにもっと言うなら、必ずしも自然環
境関連ではないが、大きな意味での環境対策につながるもの、すなわち社会環境、
産業構造の転換に役立つような商品、子育て、学校教育、とりわけIT教育などに
役立つ関連商品、ソフト商品などいくらでもあるはずだ。そもそも民主党政権の「コ
ンクリートから人へ」というキャッチフレーズにその大きなヒントがあるのではない
のか。                                                                    

そういう意味で対象商品をこれまでのものに加えて、もっと大きな観点からリスト
を追加するという作業を経済産業省、環境省、国土交通省、文部科学省、厚生労働
省などと協力して進めるよう提案したいものである。                          

2009/11/21
早勢 直
今週の意見(657):

事業仕分け最後の仕事は仕分け会場

先週事業仕分けが始ったが、これについてはさまざまな論議を呼んだ。そのやり方
自体に多くの批判が出た。いわく、一時間という短時間で結果を決めるのはおかし
い、仕分け人に民間人が多くどういう選定基準でそれを選んだのかわからない、仕
分けの評価基準が明確にされていない、、外交・安全保障問題、先端科学技術の問
題などそもそも事業仕分けの対象にするのはおかしい、脱官僚といいながら仕分け
作業自体財務省の主導そのものではないか、などなどであった。        

そうした批判については今後ともさまざまな議論が展開されるだろう。ただいろい
ろ批判があったとしても今回のこの事業仕分けについては、そうした予算編成過程
における事業の評価が国民の前でオープンに行われたという事実をマスコミも評論
家も高く評価している。それが今回の事業仕分け作業のすべての意味であったと私
も思う。                                 

そうした各省における事業評価作業などその内容はこれまで主権者たる国民に一切
あきらかにされることはなかったのだ。それが今回、各省庁の事業の内容、そのた
めの税金の使われ方についての評価過程が国民の前に示されたことが各方面で高く
評価されたのは当然だ。                          

仕分け作業の最後の日に、仕分け作業会場の存在そのものが対象になったという記
事を読んで私は笑ってしまった。これこそが、仕分け人側のパフォーマンスだった
かもしれない。仕分け作業が、まず財務省役人の事業についての基本的な問題点の
説明から始まることを、財務省主導だとか、それはおかしいという声が他省庁やら
マスコミなどから出ていたが、私などそれがどうしておかしいのか、その意味がよ
く分からなかった。                            

そもそも予算案が各省庁より財務省に提出され、財務省がそれを査定する。財務省
は事業の予算、これまでの事業経過の数字など全部把握しているのだから、仕分け
議論のためのおぜんたてをするのは当然のことではないか。それをベースに議員、
民間人が議論すればいいしそうなった。場合によっては事業にまつわる数字その他
事実関係は担当財務省役人に聞きながら議論を進めたらいいのだ。       

財務省担当役人がそうした役回りを演じることのどこが悪いのであろうか。脱官僚
といいながら、肝心のところで官僚に頼っているではないか、などという批判が多
いが、何を言ってるかである。そうした仕事そのものが財務省官僚の仕事そのもの
であり、国家国民にとって必要な仕事ではないか。問題は政治家がそれをどうどう
判断するかなのだ。                            

ただ、仕分け事業の対象が他の省に比べ財務省事業のそれが圧倒的に少なかったの
は事実であり、それはおかしいという声には妥当性があった。         

それで仕分け人側もそれに答えて特に最後の日に財務省の仕分け作業会場を俎上に
あげたのだろう。それは憎い演出ではなかったのか。             

なにがどうあろうが、今回の事業仕分けが公開でオープンに行われ、その最後がそ
れが行われた財務省所管の体育館の存在そのもの、それはその有効性から言って処
分廃止の方向であると決めたことは見事な演出であったと言っておきたい。   

2009/11/28
早勢 直
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