2010年 今週の意見 11月
今週の意見(699):
日本と中国の今後
動画投稿サイト「YouTube (ユーチューブ)」に投稿された尖閣諸島沖の中国漁船衝
突事件の映像は日本の政界に衝撃を与えた。政府が公開を避けてきたビデオが、お
そらく政府関係者によって内部告発的に公開されてしまったのだ。国家の危機管理
という観点から言って前代未聞の事件であり、野党にとってはまさに絶好の倒閣運
動の材料となるには違いない。これでまたさらにこの国の政治の混迷は続く。情け
ない話ではある。
しかし、実際には、これで一番大きな打撃を受けたのは中国だろう。ビデオ流出に
今のところ「関心」と「懸念」を表明している程度だが、あの中国漁船の誰が見て
も明白な違法行為について、中国政府はいかようにも説明のしようがないのだ。そ
れでも、あのな映像はでっちあげだとか、もともと中国領内で起こったこと、漁船
の戦闘的行為は許されてしかるべきものだ、など主張するに決まっている。今後と
も尖閣の領有権を主張するのならそれしかないのである。
今の中国そうしないと、今度こそ反日デモが手に負えない状況に広がる可能性があ
る。もちろんそれで日本も困るが、中国にとってはそれ以上のこと、共産党独裁の
政治体制の存続そのものが危うくなる、国家体制そのものの崩壊につながることな
りかねないのだ。さらに仮にそのような事態を現中国政権が避けたとしても、この
事件で中国という国の国際社会での信頼感の失墜は実に大きなものがあるだろう。
だから、日本という国、我々日本人がそれをを喜んでいていいと言うではない。こ
れからの中国という国との外交を展開して行く上で、今回の事態をまずは国益とい
うことから言ってそうした大きな観点に立つて見ておくべきなのだ。
尖閣での漁船事件以来の菅政権の対応に多くの間違いがあったことなど今更指摘す
るまでもない。あの船長を何も決めないままさっさと帰国させてしまったこと、さ
らに問題のビデオを非公開にしたことだ。さらにわけがわからないのは、それを一
部国会議員に見せ、国民には一切見せないということだった。要するに中国への外
交的配慮がその理由のすべてだった。そんなことで収まる相手でないことくらい誰
にもわかることだった。さらにそんな重要な事実をどうして主権者たる国民に見せ
ないのかである。外交に秘密はあっていい。しかしそれは既に国民の前に明らかに
なった事件であって、それはそれについての事実関係に類することである。それを
なぜ国民に公開できないのかである。
そのビデオを非公開にすることの合理性、合法性が一体何処に存在するのだろうか。
外交と言わずなんと言わず、事の判断はすべて事実関係に基づいて行うべきでない
のか。百歩譲って領有権のことはさておき、漁船衝突をめぐっての事実関係はこう
いうことであったとそのビデオを公開することの一体どこがいけなかったのかであ
る。
野党とりわけ自民党は「それみたことか、ビデオを公開しなかったからこうなった
のだ」と今度は、危機管理なる言葉を持ち出して政権に揺さぶりをかけ出した。ビ
デオ流失の実態をきちんと報告しない限り、補正予算審議に応じないなどと得意の
嫌がらせ作戦である。一体そんな外交案件と、補正予算審議と一体なんの関係があ
るのか。
そもそも尖閣列島をめぐって、現在の中国との外交関係のベースを作ったのは自民
党政権の責任なのだ。それを横において、何かと民主党政権の外交のあげ足ばかり
とっている自民党に嫌気を感じるのは私だけだろうか。
これで菅政権が倒壊することになってもしかたがない。たしかにその政治的責任は
大きい。しかしこんな重要な外交案件をこのような形で政争の具に使うような野党
にも厳しい国民の目があることを忘れるなと言っておきたい。
菅政権がこの後どうなるかさっぱりわからない。ただいえることは、日本の国民、
日本にはあのデモという暴力的手段でなく、選挙という平和的、民主主義的手段で
政権を選択できるという政治システムがあることは、はるかにましだと考えておく
べきだ。
2010/11/6
早勢 直
今週の意見(700):
「情報共有」の重要性と危機管理
警察は尖閣映像流出で容疑者を取り調べているが、未だ逮捕にも至っていないし、
果たして検察が立件できるかどうかがわからないという状況らしい。それもこれも
いろいろ調べていくうちに、どうやらその映像、当初の想定より、海保トップが機
密としてビデオを保管せよと命令を出す前から保安庁内はもちろん検察ほか他の関
係部署にもそれが流れてしまっていることが分かってきたからだ。マスコミは今頃
になって、そのことを驚いたように報道している。昨日のNHKのTVニュースで
海上保安庁の「情報共有」の仕組みがあたかも特殊で、秘密保持が基本の公官庁に
はあるまじき形であるかのごとき報道解説を見て驚いたのはこちらである。
今のネット社会、情報共有など極めて当たり前のことだろう。私は11月11日の
BLOGで書いたのはそのことだった。是非その部分をお読みいただきたい。
今日の情報社会維持のキーワードは「情報共有」である。今の時代あらゆる組織、
それが民間企業であれ、大学研究機関であれ、官庁であれ、そしてこうした国家の
安全を守る警察、海上保安庁、防衛庁であれ、それぞれの職員担当者はすべてパソ
コンで仕事をし、そしてそれがすべてネットで結ばれ、あらゆる関係部署と情報を
共有しながら仕事を進めていくという仕組みになっているのだ。だからこそその結
果として、あらゆる事態にそれぞれの担当者が素早く対処する、それに基づいて上
層部、トップが迅速に問題に関して、他関連部門と連絡調整の上、意思決定を行う
ことができるのだ。そうした仕組みがなければ、今やどんな組織もこのネット社会
ではやっていけないし、そうあるべきなのだ。それはもちろん国家組織とて同じこ
と、ましてや国家の安全を守る仕事をやっている海上保安庁などの署内がネットワ
ークで結ばれていて、さまざまな情報が「共有」されるようになっていることなど
自体当たり前のことだ。だからこそそれぞれの関連部署が適宜最善、最速のアクシ
ョンが取れるのだ。これがまさしく危機管理の要諦ではないのか。
鈴木久泰海上保安庁長官が問題のビデオが限られたところにしかないなどと言明し
たのは、既にその情報が署内に拡散しているという状況が分かっていて、あえてそ
れを言ったのか、いやひょっとして分かっていなくて、言ったのかわからない。が。
いずれにせよ、あのビデオが現場の船から本部に報告あげたとたん全国の関連部署
に同時に伝わってしまったことなど十分ありうることだった。再度言うが、それは
むしろそれが必要なこととしてそういう仕組みになっていたはずなのだ。マスコミ
もマスコミでそんな事実を知って驚いたような報道をしていることこそがおかしい。
検察が事件を立件に踏み切れないのはそうして広く広まってしまったものを果たし
て重大な機密として扱えるかどうかということがあろう。それもあるが、実際には
あのビデオ、国家の最高意思決定機関である国会で公開されてしまっている。いう
までもなく国会議員は国民によって選ばれたもの、もしそれを見た議員達がそれぞ
れの支持者からその内容を教えろと言われたら一体なんと答えるのだろうか。「い
やそれは国家の機密だから教えられません」とでも答えるのだろうか。それは事実
上もう国民に公開されたと同じということでないのか。
その一方でそれが仮に事実上公開されたものも同様だとしても、組織の長が、公開
してはならぬと命令を発した以上は守秘義務があることは絶対的である。それが実
際どれだけ意味があるかどうかは別にしてである。それが民間企業であれ、官庁で
あれ、ましてや海上保安庁というような軍隊にも等しい命令・規律を重んじるべき
組織内で命令、指示無視の行動に対し処罰があるのは当然のことだ。そういう状況
下野党自民党の幹部たちが当該容疑者について「無罪だ」などと言ってることはま
ことにお粗末なことである。
まちろんそのことと、菅内閣の政治責任を問うことは全く別問題である。野党は鈴
木海上保安庁長官、馬淵国土交通相の更迭、罷免を要求する構えだが、こんな大失
態を起こした菅内閣、菅首相に対して内閣不信任、問責決議くらいどうして出さな
いのだ。それをやると内閣総辞職そして国会解散となるのが実は怖いのだ。それで
じわり、じわりと追い詰めて、世論を味方につけながら内閣総辞職と持っていきた
いのが本音なのだ。
彼らは互いに国家の安全だの、危機管理だの言ってるがそんなことはどうでもいい
のだ。互いの非難合戦の前に、国家の危機管理のあり方についてもっと真剣な認識
と議論が求められている。
2010/11/13
早勢 直
今週の意見(701):
裁判長殿
「強盗殺人などの罪に問われ、裁判員裁判で死刑を求刑された池田容之被告への判
決が言い渡された横浜地裁の法廷=16日午前(代表撮影) 裁判員裁判で初の死
刑判決を受けた池田容之被告(32)に対し、横浜地裁の朝山芳史裁判長は判決言
い渡し後の説諭で「裁判所としては控訴を申し立てることを勧めたい」と述べた。
裁判員が決定した1審判決に対して、控訴を促したことは極めて異例と言える。説
諭には死刑に反対した裁判員の意向を踏まえた可能性もあるほか、控訴審もあるこ
とを示すことで死刑判決を決めた裁判員の精神的負担を和らげる配慮もあるとみら
れる。」産経新聞 11月16日
このニュースをTVで見ていて、あれーと思った。なぜ、地裁の裁判長判決でがこ
んなことを言うのだろうか。地裁の判決に当っては、裁判長は被告に対し、もし判
決に不服であれば、上級審に控訴することができるということは述べる義務がある。
しかし控訴を勧めるなどという義務などあるわけがない。いやむしろそれは言って
はいけないことでないのか。このことを、多くのマスコミは「異例」だとしている
が、むしろ「異常」だというべきだ。「異常」と言ってまずければ、現在の裁判と
いう制度の精神、とりわけ裁判員裁判の本質をゆがめているいるのではないだろう
か。
仮にそれが市民裁判員がいたことも含めて「自分達の判断はひよっとしたら間違っ
ているから、控訴してください」などという意味ならなおさらである。判決はあら
ゆる客観的証拠、犯行動機、状況などを勘案し、プロの裁判員、そして国家が制度
として決めた市民裁判員の合議で決めることにしたことなのだ。間違いがあるかも
知れないなどという前提があるなどとんでもないことだ。もちろんその可能性を防
ぐために地裁の上に高裁、そして最高裁という上告制度がきちんとある。それは当
然のことだ。が、仮に地裁の決定にはアマの裁判員が含まれているから、誤診の可
能性があるなどという考えならとんでもないことだ。
今回の場合裁判長の真意は死刑判決を決めた裁判員の精神的負担を和らげる配慮を
したことにあるように思える。そうだとしても、どうしてそんな配慮が必要なのか
するのかである。
市民裁判員にとって死刑判決に一票を投じることの精神的負担の重さは想像に絶す
るものがあろう。もし仮に自分がその裁判の裁判員の一員だったらどうしたか。や
はりその精神的負担に耐えても、死刑判決に一票を投じただろうし、仮にそうした
以上それに伴う精神的負担など覚悟の上のはずだ。それを裁判長がおもばかって、
どうぞ、控訴してくださいなどと、言ったとしたら、私なら「馬鹿にするな」、と
裁判長に怒りの情をぶつけるだろう。
2010/11/20
早勢 直
今週の意見(702):
菅首相の選択選択肢
尖閣問題処理が国益を大きく損なった一番の問題で、仙谷官房長官はその判断に関
与したのだ。しかもその他国会審議上で事実多くの不適切答弁を繰り返したことに
ついての問責決議はやむをえまい。一方馬淵国土交通相の方はあのビデオ流失のい
きさつからしても問責に値するだけの政治的責任があったかどうか、大いに疑問だ。
要するに馬淵氏の場合は野党の閣僚辞任ドミノ作戦の犠牲になったにすぎない。
野党は仙谷、柳田、馬淵と主要閣僚を辞任に追い込みたいのだが、どうもよくわか
らないのは、どうして本命の菅首相その人に対して問責決議を出さないかだ。これ
だけの主要閣僚を辞任問題について、どうしてその最高責任者たる首相の任命責任
政治責任を問わないのかという極めて基本的な疑問が残る。
その答えはもちろん明白。菅首相に辞任を突きつけたら、解散の可能性があるから
だ。野党の中でも今解散してもいいと考えているのは、「みんなの党」くらいであ
とは自民、公明両党は現段階での解散は避けたいのが本音である。
自民党自体はもうそろそろ民主党との支持率逆転形勢もあって解散はしてもいいの
だが、どうせなら、もっと決定的なダメージを与えられそうだし、まだ党内の選挙
準備が整っていない現段階では解散はもう少し先でいいと考えている。来年の地方
選挙重視の公明党の場合は今の解散は是非避けたい。だからとりあえずは重要法案
の全面的審議拒否などしないというスタンスなのだ。
自民党はなりふりかまわずもう半分タオルを投げた状態の相手を徹底的に叩くこと
だけが現段階での目的なのだ。それくらいしないと政権を取ることはできないこと
も知っている。そんな姿を見てまゆをひそめる国民がいることもわかっているが、
権力闘争とはそんなものだと知っているのだ。元政権党だけにすべては権力を握ら
ないと何も始まらないことは知っている。
そもそも、そんな権力闘争の嫌らしさを分かっていなかった菅首相の政治的センス
のなさが今日の状況を招いたすべて原因だろう。7月の参議院選挙で敗北した政治
的責任は実に大きかった。選挙中での自民党の消費税路線に乗るかのごとき発言が
そのすべてを象徴していた。そもそもその責任をなんら感じることなく、しかもそ
の責任を明確にしなかったことが今日の事態を招いた最大の原因なのである。
菅内閣はもうどうしようもないレームダック状態だ。このままずるずる仙谷、馬淵
両大臣をそのまま留任させておくのも、更迭するのどちらも政権の深刻なダメージ
につながるし、この先大きな再生の展望もない。まさか小沢氏に離党勧告を出し、
支持率アップをねらうのも民主党分裂させる可能性大でそれもできそうにない。
菅内閣に残された選択肢は即解散総選挙か、菅内閣総辞職、民主党新代表、新首相
選任、新内閣の手でで来年度予算編成の上、解散総選挙ということしかないはずだ。
私は民主党にとっても、野党自民党と公約内容で選挙を争うという意味でも、国家
国民にとってもそれが一番いいと思う。それぞれ自らの政策、公約を十分再整理の
上、それを国民に提示して選挙を戦うべきなのだ。
2010/11/27
早勢 直
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