2008年 今週の意見 3月
今週の意見(567)
それは中国のためにならない
毒入りギョーザ事件で中国公安省当局はメタミドホスが、中国国内で混入された可
能性は極めて低いと述べ、日本での混入の可能性が高いという見解を発表した。
その前日まで日本の警察関係者が、中国に出かけて捜査について協力を約束し帰国
したばかりなのに、中国当局はその発表の中で、日本本の警察が非協力的などと非
難までしてみせた。これには日本の警察庁も黙っているわけにいかない抗議の声を
上げたことは当然だ。続いて泉国家公安委員長も反論の声をあげたことも当然のな
りゆきだ。
ただ不思議なのはこれについて日本のマスコミの多くはそうした事実関係は報道し
ているものの、こうした中国側のおかしな対応について、明確な疑問を呈したり、
その背景を解説していないのだ。警察庁や国家公安委員長以外に、政府与党幹部、
それに野党からもなんの抗議や中国側の対応に疑問を呈する発言がないのは一体ど
うしたことだろうか。
その中で石原知事が明確にこうした中国当局の対応を批判していたのは納得だ。ど
うして日本の政治家たちはこれに明確な疑問の声をあげないのかである。胡錦濤国
家主席の来日を控えて、それに水をさすようなことはしたくないという政治的配慮
が働いていることは明らかだが、しかしそんなことで果たして問題の根本的な解決
につながるのかである。
中国のこうした出方は明らかに秋の五輪開催を念頭にいれたものに違いない。この
問題が大きな広がりを見せると五輪開催そのものの赤ランプがつきかねない。そこ
で少々無理があるのは承知でとりあえず毒物が混入したのは中国国内でなく日本で
の可能性が高いなどと言い出したにちがいない。そんな姑息な手段が果たして通る
のか。
被害者の日本が犯人扱いされていて、政府首脳はどうして黙っているのか。たしか
に公安委員長が代表して言っているのだろうが、政府としてももっと大きな声を上
げてもよさそうなものだ。特に情けないのはマスコミ。石原知事が言うような批判
は決しておかしいものものでも無理でもなんでもなく、被害者日本の立場を代弁し
ているのだ。日本の代表的新聞がどうしてこの中国の動きについて批判の論説をし
ないのか不思議である。これからそれが出てくることを期待したいものだ。
こんな強弁が通るほど世界は甘くないことを中国政府首脳もいずれ悟るだろう。事
実は事実と明確に認めてしかるべ防止策をとることが国際世論を納得させる唯一の
道であり五輪開催の条件であることを知るべきだ。こんなごまかしをやるような国
はまさに五輪など開催する資格がないという国際世論がさらにたかまるのではない
だろうか。
2008/3/1
早勢 直
今週の意見(568):
野党の審議拒否を支持する
3月に入り、ようやく春の息吹が感じらる毎日になってきた。が、国会は春の嵐の
真っ最中である。先週末2008年予算案と関連法案が衆議院で強行採決された。
野党はこれに反発して参議院での審議入りを拒否し、国会は空転している。
このままだと2008年予算案は衆議院の議決があったので成立するが、暫定ガソ
リン税他関連法案が年度内に成立しない可能性が大となってきた。ほかにも3月1
5日に任期が切れる日銀総裁に与党が武藤氏を押しているのに対し、民主党はこれ
に反対している。この人事に空白を生じると大変である。
こうした野党の動きに対し、福田政権与党は、いつものように日銀総裁の選定など
を政局にするべきでないと言ってみたり、予算関連法案が年度内に成立しないと国
民生活に大混乱をもたらすとなどと喧伝している。それはそうだろうが、それがあ
たかも野党とりわけ民主党の責任であるかのごとき言い分を繰り返しているが、こ
れは明らかにおかしい。それは90%政府与党の責任はないのか。
マスコミも総じていつもの調子である。与党の強行採決を非難し、野党の行動にあ
る種の理解を示しながら、一方で民主党が法案に関する修正協議を始めたり応じた
りすることを求めている。修正、修正というが、与野党の案を足して二で割るよう
な修正はありえないと小沢代表などが主張しているのはもっともなことではないか。
それに最近の朝日新聞の世論調査にもあるように民意は特定道路財源の一般化に
59%という圧倒的な支持を与えているのだ。国会審議を通じて特定道路財源がい
かに多くの無駄使いを生んできたかという事実もこれでもかこれでもかというくら
い明らかにされてきたのだから、それも当たり前のことなのだ。
にも関わらず、また衆参両院の議長あっせんがあったにも関わらず、与党はあのよ
うな強行採決を演じてみせた。野党とていつまでも審議拒否をするわけではないだ
ろう。今週一週間くらいの審議拒否は、不当採決に対する正当な対抗手段、抗議行
動であると言わざるをえない。
仮に審議が始まったところで与野党の対立がすんなり収まりそうにはない。民主党
が争っているのは、短期的にガソリン税をどうこうするというより、特定道路財源
を廃止し一般化すること、そしてその財源を大幅に地方に配布するという国と地方
のあり方の根本問題を提起しているのである。
そうした根本的な政治理念についての対立は安易な妥協で片付く問題でないしする
べきでもない。そうした争点は別に予算関連のことにとどまらない。いまこそ年金
農業、格差問題などをめぐっての与党自民党と野党民主党の政治理念、政策の違い
を明らかにして、衆議院を解散して民意を問うてみる絶対の機会ではないか。
2008/3/7
早勢 直
今週の意見(569):
宇宙開発の夢と現実
3月12日世界中が注目している中で日本の宇宙実験棟「きぼう」を載せたスペー
スシャトルエンデバーが打ち上げられた。ここしばらくは日本の土井宇宙士の活躍
がTVニュース話題の中心となる。土井さんは私が卒業した高校の後輩だというこ
とはうっかりしていて知らなかった。昨日同窓会のML(メーリングリスト)で知
ったばかりだ。もっともそんなこととは関係なく、日本人の一人としてこの実験の
成功を祈る気持ちには変わりはない。
ただこの壮大な夢のことばかり報じるマスコミの中で、この12日の日経新聞の社
説が目についたので一言コメントしておく。日経の社説は、このプロジェクト自体
の「費用対効果」を一つきちんと見ておく必要があることを指摘していた。
「夢」や「きぼう」がその成果だ、そんなものカネで測れるか、という言い方もあろう
し、考え方もあろう。が、これは今財政難にあえぐ日本が、巨大な国家予算を投じ
て行っているプロジェクトであることも忘れてはいけないということだ。
宇宙開発には巨額のカネが掛かるし、国家がそれに取り組む必要性については日経
の社説自体否定しているわけではないだろう。ただ、今のプロジェクトのあり方自
体が日本の将来の宇宙開発の技術育成するものとなっているかどうかについてこの
際再検証が必要だと主張しているのはその通りだと思うのだ。
アメリカのロケットに乗って日本人が宇宙に出かけること自体一体どんな意味があ
るのかないのか、その中身の検証が必要だということだ。ただ「夢」だ「きぼう」だと
いう前に果たしてこれで宇宙開発技術に関して日本の実力がどれだけつくのかとい
うこと、宇宙だ宇宙技術開発だという前に、例えば今地球で起こっている環境破壊
問題にもっと大きな国家予算をつぎこむべきではないかという議論があってもおか
しくない。
それがまさしく「夢より地に足のついた」国家プロジェクトの一つではないかとも考
える。費用対効果のという言葉をもっと大きな意味でとらえるべきなのだ。来年度
予算をめぐって国会が紛糾中だが、この問題が討論されているのを聞いたことがな
い。当然討議されてしかるべき大問題のはずである。
2008/3/15
早勢 直
今週の意見(570):
政治迷走に伴走する日本のマスコミ
福田首相が選定して提案した日銀総裁候補、田波耕治氏が再び参議院で否決されて
しまいとうとう日銀総裁は空席という事態になってしまった。世界中で金融不安が
高まっている今、それは重大な失政だと内外からの批判を浴びている。日本でもマ
スコミがあげて批判の声を上げている。
私が不思議に思ったのは、日本の新聞各紙がこの福田首相の不手際を批判している
ことは当然としても、殆どのマスコミ各紙が同時にこの問題についての民主党の対
応が悪いと批判していることだ。対応が悪いもなにも、要するに最初の武藤敏郎氏
については、財務省出身であり、金融と財務の分離という観点と、今の日本の政治
経済ががなにかにつけて財務省主導で動いていることから大きく転換しなければな
らないという観点からの反対意見であったはずだ。
前者の金融、財務の分離ということは私にも正直よくわからない。が、後者の政治
経済の財務省主導の排除という観点はよくわかる。これからの時代日銀総裁も、財
務省出身でなく、それ以外例えば民間から選定すべきだと野党が一致して反対した
のもその点であったはずだ。
いずれにせよ、それがどれだけ説得力のある論理であったかどうかじゃともかく、
驚いたのは福田首相は武藤氏に続く候補として同じ大蔵省(財務省)OB、元大蔵
事務次官の田波耕治氏を候補としてあげたことだった。もちろん民主党にはなんの
根回しもなかった。民主党ほか野党がこれに反発したのは当然である。財務省OB
は基本的にダメだっと言っているのにあえてまたそれをぶつけてきたのだ。
多くのマスコミ紙が福田首相の不手際、判断力のなさを批判する一方で民主党を非
難したことがどうもふに落ちない。この重大な局面で政局だけ考えた党利党略的行
為だというわけだ。まことに不条理な話である。民主党ほか野党の言い分考えなど
これっぽちも考慮していない。そもそもそうしたマスコミ自体がすでに何かにつけ
て財務省主導の政治を当たり前だと受け入れているふしがある。
仮に民主党の言い分、その論理に無理があったとしても、今政権を担当しているの
は福田内閣であり与党なのだ。現状の政治状況、衆参のねじれ現象を考えた対応が
必要なことは言うまでないこと。ところがそれを何かにつけて野党が与党の言い分
を聞くのが当然みたいなスタンスの国会運営に野党が反発するのは当たり前である。
そして与党をその気にさせているのがマスコミのそうした誤った論調なのだ。何が
あろうとなかろうと、あらゆることはまず政権を担当している福田内閣、与党にそ
の責任がある。国家経営の責任のすべてがあるのだ。そのためには野党が納得でき
るような妥協も調整も必要だし、それを働きかけるのはまず与党側であることもい
うまでもないことだ。
ところが与党のスタンスはそうでない。あらゆる場合、あらゆるケースについてマ
スコミは与党も悪いが野党も悪いという調子の論議を展開するものだから、与党は
本当に反省するところがない。衆参のねじれ現象の現実もまだ直視できていないの
だ。
私に言わせると迷走しているのはまさに政治そのものであるが、それに輪をかけ伴
走しているのが日本のマスコミではないのか。
2008/3/22
早勢 直
今週の意見(571):
福田首相の提案
3月26日木曜日、福田首相は緊急記者会見を行い、道路財源を来年度以降一般化
すること、今後10年間の59兆円にのぼる道路建設を5年間に短縮するなどの提
案を行い野党がこの線に沿って、野党が予算関連法案の年度内可決に向けて修正協
議を始めるよう求めた。
これに対し、民主党は道路財源の一般化については一歩前進だと評価するものの、
ガソリンに掛かっている暫定税率の廃止をしないのであれば、首相の提案に応じら
れないとしたのは当然である。
ほとんどのマスコミ各紙は社説などでこの福田首相の提案を評価し、今度は民主党
がこの新提案を受けてなんとか暫定ガソリン税を廃止にともなう4月1日以降の混
乱をさけるようにすべきだという論調で一致していた。
その混乱とは二つあって、一つはガソリン販売の店頭で価格が下がるところ、その
ままのところが存在し、客が安いところに殺到し混乱するということだ。第二に、
暫定税率を廃止すると、2.6兆円の歳入不足が発生し、これが地方財政に深刻な
影響を与えるということだ。いや政府与党はこのことを暫定税率を維持しなければ
ならない最大の根拠としているようだ。福田総理もそのことを持って今暫定税率を
廃止するのは現実的でないとしている。
まず先のガソリン販売市場での混乱ということだが、たしかにそれはあるかもしれ
ないが、そもそもそんなことは一時的な事象であって、新しい税体系が時間の経過
とともに確立していけば、市場価格メカニズムで自然に安定化に向かう。なんの問
題もない。
二番目の地方自治体の財政難の問題だし、地方の自治体の知事などが声を大にして
言ってることだから一見説得力がある。が、こうした暫定税率の財源に頼りきった
地方財政のあり方そのもの、国におんぶにだっこの体制そのものがおかしいといわ
ざるを得ないのだ。こうした地方自治体と国のあり方そのもの、地方自治体の自立
性、独立性を高めることが大切だという民主党の主張が正しいといわざるをえない。
第一2.6兆円をどこから捻出するのかという言い分自体がおかしい。あれだけ国
会審議を通じて、この道路特定財源を含めた国の予算のカネの無駄使いがこれでも
か、これでもかと明らかにされたのだ。まずその無駄を徹底的になくすことが大切
なのだ。そのためにもまずこの暫定税率廃止で国民消費者に減税として還元するこ
とから初めるべきではないのか。マスコミもそのことを言わないで与党の言い分を
認めてしまうことはまことにおかしい。
マスコミの論調と一般国民の感情にはかなりのずれがあるようだ。福田首相の道路
特定財源の一般化などについて世論は圧倒的な支持を与えており、また暫定税率の
廃止についても同じことなのは、そうした税金の無駄使いをまず徹底的に排除する
ことから始めるべきだということであるに違いない。
与野党が混乱を避けるために必要な協議、またそのために必要な法案の成立をめざ
すことについての協議は当然必要なことであろう。が、その協議は単なる妥協や、
それが国民生活に混乱を起こすからダメだなどという政府与党に言い分、マスコミ
の言い分など聞く必要はない。
民主党をはじめ野党は一致団結し早期の衆議院解散総選挙をめざすことこそ今の政
治の混迷を打破する唯一の道であることを指摘しておきたい。
2008/3/29
早勢 直
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