2011年 今週の意見 3月

今週の意見(713):

災い転じて福となせるか

昨日午後4時過ぎあの大地震が起こった時、私は自宅近くのイオンモール3階の楽
器店にいた。最初の揺れを感じた時はたいしたことはなさそうだと思っていたが、
そのうち大きな長い横揺れで、立っているのも大変という状況になった。店の中に
はそんなに大ぜい客は居なかったが、女性店員はきゃあきゃあと悲鳴をあげ、右往
左往のパニック状況だった。もっとも、店内はもちろん近くの店を眺めても、棚か
ら商品が落下したり、展示パネルが倒れたりするほどのことはなかったから、まあ
大丈夫とたかをくくった。第一そのビル4年ほど前に立った頑丈なもの、ここにい
るのが一番安全だろうという判断もしていたわけだ。それで、パニック状況の近く
の店員にも、そのように話しかけたりしていたのだった。           

そのうち、店の店長が携帯電話で調べたのだろう、この地震三陸沖で発生したもの
で、震度7ほどらしいと教えてくれた。いや実はそれが8.8Mなるすごいもので
あったことを知るのは後のことなのだが。それを聞いて、私その時は、それは大変
一番怖いのは津波でしょうね、などと物知り顔で語ったりしたのだった。その後余
震があったものの、車で自宅まで5分ということもあって、その直後無事帰宅でき
た。                                   

あの阪神淡路の大震災の当時、私は四国の高松にいた。早朝、さて起きようかとい
う時間帯だった。ものすごい揺れを感じたが、当時住んでいたのは、入居の時、不
動産屋が、これは四国でも一番頑丈なマンションという説明をしていたことを思い
出していた。だから、まあ大丈夫だろうと、そのまま布団の中にいた。実際たしか
に大したことはなかったし、そのまま8時半ごろいつものように職場にでかけた。
職場では、机の引き出しが飛び出したりしていたものの、たいしたことはなかった。
第一朝のTVニュースでは地震そのものについてはたいした被害はないような報道
をしていたものだ。                            

ところが昼休みのTVニュース、さらに夕方帰宅後のニュースを見て、それが当初
の予想をはるかに超えるものすごい被害状況になったのを見て驚いたのだった。東
京への出張に使っていた新幹線も当面使えない、高松に来る前住んでいたのは明石
だったが、その関係でしょっちゅう訪れていた神戸三宮の有名百貨店がぺしゃんこ
になっている写真を見て唖然としたものだ。                 

昨日帰宅後は、TVにくぎ付けとなったが、その惨状、特に津波の威力のすさまじ
さはまさに息を飲むショッキングなものだった。NHKほか全ての民間TV局はす
べて地震のニュース、それぞれ独自にすごい場面を見せてくれた。       

そして驚いたのはもう8時、9時の頃にはそれが世界中に知れ渡り、米国大統領や
国連事務総長などから、見舞いの言葉や、日本支援のメッセージが入り始めたこと
だった。菅首相10分ほどオバマ大統領から見舞いを受け、今後米国の全面的な支
援のことで会談したという報道も聞いた。                  

ニュージランドの地震のこともある。どうやら今回の地震、環太平洋地震帯に関わ
る現象らしいということもあって、米国ほか地域の諸国にとっても人ごととは思え
ないということもあったに違いない。                    

6時頃TVを一緒に見ていた妻に私は話しかけた。「こんな時にこんなことを言う
のはなんだが、今一番、これで助かったと言うか、大変だが、やるべき仕事が出来
てしまったのは誰だと思う」と聞いた。彼女きょとんとしていた。       

実はその時間からさかのぼること4時間ほど前、同じNHKTVが参議院の決算委
員会の様子を中継していて私たちはそれを見ていた。この日も野党は、菅首相の在
日韓国人から寄付金を受けていた問題など政治とカネの問題を追及していた。  

さらに自民党議員が、菅政権が学校の耐震化の予算を削減したことは問題だと追求
していた。政治とカネの問題では菅首相、歯切れの悪い答弁をしていたが、耐震化
の問題では、予算さえ通してくれたら、それはどうにもなる問題だなどと答えてい
たものだ。それがまさに皮肉にもそれから一時間半後、学校どころか国会議事堂の
耐震性が問題になる事態になったわけだ。TVが地震発生の時のその委員会の様子
を報道している。                             

委員長だか、事務の人だかが、議員達に「机の下に隠れて」と叫んでいた。私はそ
れを見てまさに不遜なことだが、「なんだこれは、そら見たことか」とちょっと皮
肉りたくなったものだ。皮肉りたくなったのは、菅首相だけでない、得々と政権側
のあげ足ばかりとっている野党自民党にたいしてもそうだ。問題は建物の耐震性の
ことでない。                               

実はそんな野党の攻撃を見ていて腹を立てたのは妻だったのだ。日頃政治などに全
く関心のない妻のこと、私が時々見る国会中継はいつ見ても、野党はひたすら与党
の攻撃ばかりやっている。肝心な議論など一向にしない野党の態度に腹を立ててい
たのだ。その日もそれを見ていて怒った。「こんなもの見るに値しない、切ってく
れ」というので私も同意しTVを切ってイオンモールに出かけたのだった。   

地震発生後、二時間も経たないうちに、その自民公明の両野党、地震復興のための
補正予選を組べきだと申し入れたそうだ。菅政権がそれを拒むわけがない。4Kの
ばらまきなどと言われたらそう簡単に引っ込めるわけにもいかないが、今度は本予
算を削っても、この地震災害の復興のための補正予算を検討することなど誰が見て
も当然のことだ。大義名分もある。なにせ野党がそれを言ってくれた。     

なんだか、皮肉の一つも言いたいが、それはよしておこう。そうなのだ。死者はお
そらく1000人を超えようという大災害、建物を破壊し、田畑を壊した大津波、
さらに原発の危険性を改めて認識させてくれたことなどこれから取り組べき困難な
復興への道の険しさと言ったらない。                    

しかしである。これであの不毛な国内の政治対決が、国家再生のための難事業推進
のために解消され、共同して長期的な国家の再建事業に当たるということになれば
いいことだ。同じことは米国ほか、今抱えている諸外国との外交上の懸案問題にも
今回の災害がある意味プラスになるという側面があるのではないだろうか。まさに
災い転じて福となす、ではある。いやそうあって欲しいものだ。        

すでに400近い国が日本に対し、援助を申しいれてきているそうだが、実にうれ
しい話である。今朝起きて、あらゆるニュース記事より、Facebookの書き
込みを見て感動した。かって日本、日本人となんらかの形で関わった人たちが、こ
の日本の災害について見舞いを述べ、死者への哀悼の意を表し、そして復興の早い
ことを祈ってくれているのだ。                       

日本の与野党の政治家達はこうしたネット上のメッセージを是非読んで欲しい。そ
して今の初心を忘れず、心を一つにして、日本がこの災害を乗り越え、復興のため
に最大眼の協力と必要な共同作業に参加することを期待したいのである。

「災い転じて福となせる」かそれはまだ先のことだ。今はただ一日も早く、この災
害が終息に向かうことを祈るのみである。                  
    
2011/3/12
早勢 直
今週の意見(714)

電気と真水と危機管理を失った

本件については3月23日のBLOGで書いた。そのタイトル【「真水」投入と 
「真水」頭脳】、少々意味不明だったかもしれないが、このasahi.comのニュース 
でお分りいただいた思う。                                                  

福島第一原発、地震が起こった時ECCS(非常用炉心冷却装置)が働き、制御棒
は確実に燃料棒に挿入され、核分裂反応はストップしたのだ。ところがそこから水
で燃料棒を冷却するという肝心の作業が停電のため出来なかった。しかも本来なら
冷却には真水を使うべきところ真水が使えないのでやむなくとりあえず海水を使っ
た冷却が始まったのだった。結果ある程度の成果は得られたが、電源回復によって
真水の投入を始める必要があるという経過措置についての発表は一部にもあった。
そのことを上記BLOGで書いたのだった。                                  

ところがその後のマスコミ報道で電源回復のことはあっても、真水投入のことは殆
ど報道されていない。そして今朝このasahi.comの報道を見て驚いた。その真水は東
電現場で出来ず、米軍が提供するのだという。しかもこんな重大、重要な事実が、
対策本部でも、東電でもなく、北沢防衛相によって発表されている。この記事にあ
るように、すでに真水を積んだ米軍の船が福島に向けて出発したという。ただ、そ
の実際真水投入作業を誰が行うか最終決定はまだ確定していないらしいのだ。記事
では米軍と協力して真水投入の操作は自衛隊が行うことになろうとある。        

どうしてこんな重要なことを対策本部が、きちんと報告しないのか。米軍から指摘
されるまでもなく、原子炉への真水投入こそがこの時点でのベストアンサーのはず
ただそれををめぐって現場東電の考え、対策本部なるものの考え、そして米軍の意
を受けた防衛省の考えが錯綜しているようなのである。                        

真水の確保を東電自体が出来るのならそれにこしたことはないが、急にはそれが難
しいらしいのだ。幸いなことに米軍がそれを提供してくれるというのならどうして
それをつなぎに使うということで意思統一しそれについて全力をあげないのだろう
か。いや、そうなったのだろうが、それならそれでそのことを発表するのがどうし
て北沢防衛相なのか。                                                      

こういうところ一つ見ても一番肝心の「真水」の頭脳が狂っているように見えるの
である。                                                                  

今回の事故はECCS(非常用炉心冷却装置)が正常に作動しなかったことに起因
するがそれは大切な二つの要素、電気と真水を失ったことによるものだ。電気を作
る電力会社自体がその原因を作りだした。仮に想定できない大地震がその原因だっ
たとしてもまさにおそれいった事態ではないか。                              

米軍提供の真水到着までにまだ2,3日掛るようだが、一日も早く真水による炉心
冷却の作業が始まることを祈るばかりである。                                

2011/3/26

早勢 直

参考記事:

BLOG
asahi.com
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