1998年 今週の意見 6月
今週の意見(70)
社民党の閣外協力解消
社民党が閣外協力を解消することになった。やるやると言っていたから別に
今更驚くほどのことでもないし、橋本政権に与える影響も小さい。さきがけも
同一歩調をあわせたが、これも問題にはならない。
1993年、長年の自民党単独支配が崩壊して細川政権ができた時社民党は
その与党であった。当時の社民党がそこから離脱して自民党につき、自民党の
戦略で社民党と自民党の連立政権が誕生した。そして村山総理、土井衆議院議
長が誕生したのであった。おそらく日本の政治史上、世界の政治史上でも極め
てめずらしい政権のできかただったのだろうと思う。少数党が多数党をさしお
いて、しかも保守党の自民党と、革新政党社民党が連立して政権を担当するこ
とになったのは。これも自民党がなりふりかまわずとわず当時の連立与党から
政権を奪取する手段にしかすぎなかったのだろう。
村山政権ができるにあたって自民党と社民党のさまざまな基本政策が急に一
致したわけではない。が、とにかく社民党が政権与党になるというためには自
民党の政策に相当歩みよったことはまちがいない。例えば最大の問題では日米
安保。さすがにこれはそれまでの方針を変えてその存在を容認し、また自衛隊
そのものの存在も違憲ではないと明確に認めざるをえなかった。これはある意
味では日本の防衛問題について大きな前進であったのかもしれない。
しかし、当時も今も社民党と自民党は防衛問題を含めていくつかの基本政策
ではかなり違うことはいうまでもない。事実その後社会党が選挙で大きく議席
を失い、村山政権から橋本政権になり閣内協力から閣外協力になる。つまりそ
の立場になるに及んで、またまた昔の党体質が前面に出てきたのである。さす
がに今更安保反対、自衛隊否認などということはないが、その後の重要な国防
上の問題、例えば日米防衛のガイドラインや、沖縄の基地問題をめぐって自民
党との根本的な考え方の違い、政策の違いを露呈してきたのである。そして今
回は政治倫理をめぐっての問題。企業からの政治献金を認める、認めないなど
の問題をめぐって根本的な政策の違いが露呈して閣外協力解消となったわけで
ある。
閣外協力解消はきたるべき参議院選挙対策であることはあきらである。この
ままでは自民党との政策の差があいまいになる。自民党に飲み込まれてしまう。
他の野党との違いも明確にならず、自民党よりとみなされ選挙が非常に不利に
なる。そもそも政策的には遠いはずであった自民党にくっついて政権与党にな
ったおかげで党内から首相だの、大臣だの、議長になるものを送れた。その間
は政策の違いも大目にみれたが、それがなくなったとたん、政策の違いを言い
出すのは、まあ一体どういう勝手な了見かといいたくなる。政策が違うのは当
たりまえでそのことをとやかくいうのではない。が、その日和見的な右顧左眄
が問題なのである。
そうしたいい加減な政党は社民党に限ったことではない。政策は二の次ぎで
とにかく政権をとるため、選挙を有利に闘おうとあっちついたり、こっちにつ
いたり、また離れたり、今の政党政治はそれの繰り返しなのである。中にはそ
うではない政党もあることはある。選挙民としてそのようないい加減な政党だ
けは選挙においても断固排除することが大切だと思う。
1998/6/6
Tadashi HAYASE
今週の意見(71):
非情なる決断
サッカーワールドカップの22人の登録メンバーが決まった。三浦、北沢
市川の3選手が落選。市川選手はまだ若いし、そのショックは小さかったが、
三浦、北沢両選手はずっと全日本の主力選手だっただけに相当なショックだ
ったようだ。岡田監督も苦渋の決断と新聞では報道されていたが、それはそ
うであったろう。次の日の新聞各紙のコラムは殆どがこのことを伝えていた
し、テレビ報道もそれに集中した。それほど関心の高い問題であった。
私はこのワールドサッカーという世界的なイベントにさして興味がない。
毎日毎日新聞テレビで報道されるのにむしろ反発を感じるほどである。が、
この岡田監督の決定には大変関心を持った。一切の情に流されずすべて選手
の実力、実績と対戦チームの戦力と、それに関する戦略を総合して選考した
のだろう。
結果はわからない。が、すべて岡田監督が最後の決断をしたわけだ。この
決定に勝負の厳しさ、人生の厳しさ、わびしさをを感じるのは私だけだろう
か。子供の時からこのゲームに出ることを夢みて精進し、努力してきた三浦
選手の無念はいかなるものか、想像に難くはない。25人が出発する前から
大体最終代表が決まっていたようなものだから、それなら最初から22人で
行くべきだったと指摘する向きもある。必要なら後から追加すればいいのだ。
その方が選にもれたもののショックが少なかった、と指摘しているわけだ。
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。いずれにせよ、決定はなさ
れた。その決定自体には疑念の余地はなんらない。非情な無情な決定だが、
しかたがないのである。アルゼンチンの新聞は日本のマラドーナがはずされ
たことで当方が有利になったなどと報道しているが、これも多分に撹乱戦術
的なところがある。岡田監督をはじめ日本チーム全体への撹乱のための牽制
球だととれないこともない。
その結果はすぐに明らかになる。政治や、ビジネスの世界とちがって、スポ
ーツは勝負の結果がすべてであり、それは明確に出る。仮に日本チームがい
い成績を残したら岡田監督の決断をある意味でいろいろ批判したマスコミな
ども今度を賞賛に変わるだろう。そしてもし成績が悪かったら、今度はやは
りあれはまちがっていたなど批判の声を高めるに違いないのである。それは
それでしかたがないが、割り切れないものが残る。
言いたいことは政治にせよ、ビジネスにせよ、そしてスポーツの世界にせ
よ、リーダーたるものは敢然と決断をしなければならないということなので
ある。温情とか、心情とか、和とかを重んじる日本人にとって今回はリーダ
の非情な決断のあり方を教えてくれた一つの例ではなかったか。リーダは決
して心情と信条を混同してはならないということであろう。
1998/6/13
Tadashi HAYASE
今週の意見(72):
少子化の問題
厚生省の発表によれば昨年の出生率が1.39になったとのこと。ということは
要するに1人の女性は平均一生涯に0.3人しか子供を生まないということで、こ
のまま進行すれば、人口減少現象がさらに顕著になるわけである。
おりしも、97年経済成長率が前年を23年ぶりに割りマイナス成長となっ
たことが発表された。景気後退、円安、株安など日本経済は深刻な状況にある。
景気回復のためのデフレ解消とかなんとか言ってるが、長期的に人口がどんど
ん減少して行くような状況では、成長もなにもあったものでない。それともっ
と深刻な問題は高齢化問題。少子化問題が解決しないと高齢化に一層拍車がか
かり、日本社会の福祉問題は深刻な事態を迎えることになる。
この問題は6月14日の「少子化進行で見える社会のゆがみ」と題する日経
新聞社説でもとりあげられていた。そこにも書かれていたように対症療法では
絶対に解決しない問題である。対症療法とは、出生率を高めるために、子供を
出産したら一定の補助金を支給したり、扶養家族控除を増やしたりすることで
ある。それくらいのことで現在の女性の子供なんかつくらないという出産に対
する考えを変えることは到底できないからである。
日経の社説にもあったが現在の若い女性は結婚とか、子育てということに総
じて関心がなくなっている。女性にとって。結婚して家族を持ち、子供を育て
るということは大変な仕事である。今日ではそんな大変な、しんどいことより
も、独身でいて、好きな仕事をやったり、好きな趣味に打ち込んだりした方が
得だという考えが定着してしまったわけだ。また社会全般の風潮として、それ
をあたかも新しい女性の生き方などと賛美し、許容するような考えが多い。
そうなったのにはそうした日本の社会のしくみや、構造や、価値観の変化があ
る。それと日本の男性の家庭や、結婚などについての考えにも問題があること
は事実である。結婚し、子供が生まれても、子育てについて妻の大変な仕事を
どれだけ分担してやっているか、やっていくつもりがあるかが、問題である。
そういう社会全体の考え、構造、それに女性の人生観や、価値観、ライフスタ
イルに変化をもたらさないかぎりこの問題の解決はない。人間としての真の幸福
とは何か。それはお金でもなく、仕事でもなく、社会的名誉でもなく、幸福な結
婚であり、家族であり、豊かな家庭生活であるという価値観を今一度復活できる
かどうかなのであろう。
大変な重労働ではあるけれど、子育てこそ人生における最大の価値ある仕事で
あり、家庭こそそのよりどころだと感じられるライフスタイルの復活こそ今一番
望まれていることなのだ。
1998/6/20
Tadashi HAYASE
今週の意見(73)
不良債権処理
円安に歯止めをかけようと日米が協調して介入、135円位まで上がった
から一応の成果はあったようだ。しかしアメリカはサマーズ財務副長官を日
本派遣して、日本経済の低迷の根本の問題である不良債権処理を急ぐように
要請した。またまたアメリカの内政干渉ともとれるさしでがましい言い分の
ようだが、それだけではなさそうだ。円が本当に強くなり、アジア経済が回
復するには日本経済が立ち直らなければならない。そのためには何よりも日
本の金融システムの安定が必要である。
その日本の金融システムに対する不安は多くの銀行が抱えている不良債権に
あることはいうまでもないことである。アメリカが早くそれを処理するよう
求めているのは当然のことであると思われる。
アメリカから言われたから始めたわけではないだろうが、政府も重い腰を
あげ、ようやくその問題に本気でとりくみ始めたようだ。手始めに大手19
行の不良債権を徹底的に調べ、その処理を要請する。そうしきれない場合、
受け皿銀行を設定してそれを処理することを考えているらしい。そこに公的
資金をそこに大々的に投入するということらしい。
不良債権処理はある程度進んだが未だ70兆とも100兆とも言われる不
良債権を未だ銀行が抱えているといわれる。これにうっかり手を加えると多
くの銀行が破綻する。借り手の企業も破綻して経済は大混乱に陥る。だから
慎重、慎重にとやったきたわけだろう。
が、もうここまできたらしかたがない。もうそのうみを徹底的に出さない
かぎり、金融システムへの信頼は回復できず、従って経済の建て直しもでき
ない。預金者保護という最後の砦さえきちんと守るなら思い切った整理をす
べきだろう。貸し手の銀行側についても借り手側の企業についても同じであ
ある。
そのために受け皿銀行を作り公的資金を導入うするというのもいいだろう。
が、しかしこうした大混乱をもたらした甘い、ずさんな経営を行ってきた銀
行や、バブルに踊った借り手企業の救済のために公的資金が使われることを
今度こそ絶対に許してはならないと思う。そう、つぶすものはつぶしてしま
うべきである。多少、いや、かなりの混乱は覚悟の上で。
その整理がどのように行われていくのか、公的資金のスポンサーである国民
はその内容を十分知る権利がある。そのプロセスについて、徹底的な情報開
示が行われることを同時に期待するものである。
1998/6/27
Tadashi HAYASE
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