2010年 今週の意見 6月

今週の意見(682)

菅新政権誕生の意味

4日午後菅直人氏が衆参両院で次期総理大臣に指名された。鳩山首相の辞任を受け
て、副首相の菅氏が党代表選に立候補したのは当然であり、対抗馬の樽床伸二氏議
員を押さえて党代表に選任されたのは順当であった。                          

今回は最初から菅直人氏で決まりだったのだ。それが一番無難であり、その流れ自
体は鳩山首相の辞任理由の弁そのものが決定付けている。普天間基地移設問題と政
治とカネの問題である。鳩山首相はそれについて国民の不信を招いたことを明言し
自らの責任に言及した。それはいいが、それに関連して小沢幹事長自身の責任も認
め、だから共に辞任するのだと宣言したのだった。                            

たしかにその二つが、鳩山内閣支持率、民主党支持率の下落に歯止めが掛からなか
った最大の理由であったことは間違いなく、小沢氏もそれについて言いたいことは
あっただろうが首相にそう言われたら黙って辞任するしかなかったのだ。        

その空気、流れを、反小沢、非小沢グループが見逃すはずがない。なによりその流
れを察知し、確定的なものにしたのはは菅氏その人だ。代表選の前日3日に「小沢
氏はしばらく静かにされていた方がいい」と党の要職につけないことを宣言してし
まった。それに呼応するごとく、あたかも互いに打ち合わせたかのように非小沢、
反小沢グループが一斉に菅氏支持でまとまってしまった。いや見事な政治力学であ
ったようだ。                                                              

小沢氏が菅氏の会いたいという呼びかけに一切応じなかったのも、そうした空気を
察知したからだろう。それが菅氏にとっては明確に小沢離れを宣言する環境を作る
ことができたともいえる。それが、当面目先の参議院選挙で民主党がより有利に戦
える条件であることも菅氏には分かっている。野党に表紙を代えたが、小沢支配の
中身はなんら変わっていないという言いがかりを与えない意味は大きい。        

今回のことでさすがにもう小沢時代は終わったという見方が一般的である。鳩山首
相が次の選挙には出ないと宣言したことも小沢氏にとってはマイナス要因である。
もし小沢氏がさらに再起を期しているとするのなら、あの鳩山氏の引退宣言は痛手
である。鳩山氏の行動が、いかにもすっきりしているのに対し、小沢氏の方はまだ
権力闘争を続けるのかという印象を与えてしまう。                            

その政治人生の中で七転び八起きを何度となく繰り返してきた小沢氏にとっては今
度こそがその政治家としての幕引きの時を迎えたようである。それとも再び不死鳥
のように生き生き返りをはかる場面がこれからもあるのかどうか。              

菅新首相が組閣後一体何をど訴えるかが注目される。日本の政治への信頼が国内だ
けでなく、国際社会で問われている時なのだ。そのためにも昨年夏せっかく実現し
た政権交代の意味を改めて問い直すべきである。                              

官僚支配打破の政治、新しい成長戦略、財政再建、子育て・・・そのための増税路
線をより明確にするであろう菅内閣が選挙においてどのように国民の信を得ること
ができるのか問われるだろう。菅内閣は単なる選挙管理内閣だという説もあるが、
そうではないという考えもある。菅内閣は正々堂々その政治的理念、長期目標を掲
げ、そのための公約を再構築して選挙を戦えばいいのである。                  

そして自民党ほか野党はそれに呼応すべきでなのだ。普天間問題はもうある意味で
決着した。懸命な菅新首相は明確に日米合意の継承を打ち出すだろう。そんな問題
より国民生活にとってもっと重要なテーマは山ほどある。なによりもこの国家の成
長戦略論を中心にした政策論で選挙戦が展開されるべきだ。政治とカネの問題など
もうどうでもいい。鳩山小沢両氏の辞任でその決着はついたはずだ。            

4日の朝日、読売の直近の世論調査で、民主党への支持率がかなり上昇している。
民主党内でもそれを意外と見ている向きがあるが、世論という空気なんてそんなも
のだろう。これで政権与党としての民主党もなんとか選挙が戦えるようになったよ
うだ。

その最大の功績はなんとも言っても鳩山、小沢両氏の辞任である。これによって菅
政権は国民の信頼を取り戻すきっかけとして、大きな成果を生むことを期待したい
ものである。それができるならば、鳩山内閣、いわゆる小鳩政権の果たした歴史的
意味も見直される時がくるに違いない。                                      

2010/6/5
早勢 直
今週の意見(683):

少子化対策、最重要の成長戦略

あの福島瑞穂氏、少子化担当大臣でありながら、普天間問題ばかりに熱中、少子化
問題については殆ど何もやっていない。普天間は重要な外交、安全保障問題である
ことは否定しないが、長い目で見て国家戦略的意味から言えば、普天間基地問題な
どたいした問題でない。人口減少、老齢化という国家基盤の弱体化問題をそのまま
にしておいて、何が安全保障だ、基地問題かと言いたい。そもそもあのような人を
少子化担当大臣に任命した鳩山前首相の責任の大きさを改めて感じるのだ。   

菅新内閣がスタートしたが、この少子化対策担当大臣だけ最後まで決まらなかった。
そのポストは引き受け手がなく、最後は民主党でも政策通、理論家を自認する玄葉
氏が嫌々引き受けたそうだ。一体なんということか。こんな重要のポストを敬遠す
るようなセンスで何が政策通だ。                      

菅首相は財政再建、強い経済、それと関連して長期の成長戦略を打ち出すそうだが
この国の人口減少、少子化傾向に歯止めが掛からない限り、経済成長も、戦略も何
もあったものでない。少子化対策こそがあらゆる成長戦略の土台ではないのか。菅
新首相はそのことがお分かりなのだろうか。それを担当する大臣がたらい回しにさ
れるとは情けない話で、民主党内に適任者がいなければそれこそ民間から抜擢すべ
きではなかったか。                            

そもそも少子化対策だけを専門に担当する大臣がいてもいいくらいなのに、自公政
権の時代も、そして今の民主党政権でもこの少子化対策は、消費者対策、男女共同
参画などと共に兼任が多い。男女共同参画などというわけのわからないものはどう
でもいいが、少子化は、重要問題、専任の大臣がいてもおかしくない。     

そういう重要課題であるにも関わらず、なにかとバラマキ批判の多い、財政難の今
このややこしい問題の大臣になりたくないという空気らしいのだ。あきれてものが
言えない。この問題の人事に当っては菅首相も強力なリーダーシップを発揮した形
跡はなさそうだ。                             

やっと支給が始まった子ども手当てだが、野党、評論家はすべからくバラマキ批判
である。どうして民主党は国家成長戦略の観点から、それが単なるバラマキでなく
その対策が策が如何に重要かについて、もっと積極的にその意味、必要性を正々堂
々と訴えないのか、不思議でならない。「これこそが日本の将来のために一番意味
のある給付である」という論理をどうしてもっと展開しないのか。財政難の話が出
たとたん、あの野田新財務相、当時の副大臣など26,000円の支給など到底無
理だとトーンダウンしてしまった。                     

現金でなく、現物支給という線にするような話も出ているが、それはそれでいい。
いずれにせよそれくらいの規模の少子化対策が求められていることには変りがない
のだ。                                  

民主党の子育てに関する公約は、先進国フランスの例など研究した上で出来たもの
であるはずだ。子育てに関する民主党の公約のトーンダウンは、どうもこの問題に
関する世論の関心の低さがその背景にある。そんなレベルの低い世論に右往左往し
ているようでは菅政権、国家の成長戦略を語る資格などないことを指摘しておきた
い。                                   

2007/6/12
早勢 直

今週の意見(684):

無駄削減「せいぜい2兆円」の大失言

菅政権が財政再建を新政権の最重要課題として捉え、それを実現するための一つの
大きなポイントとて、子供手当て26,000円の支給など一部公約を見直し、財
源を確保するために、消費税のアップが必要になるという長期的な道筋を示したこ
と自体は間違いではない。                         

しかし、問題はどうしてそれが自民党がいう消費税10%という同じレベルになる
ということになってしまうのかについては、大いなる疑問を持たざるをえない。そ
の背景、根拠の説明の中で、仙谷官房長官が、無駄削減による税源確保は「せいぜ
い2兆円」の[http://www.jiji.com/jc/c?g=pol '''発言''']があった。これには驚
いた。これは重大なる失言ではないか。民主党政権誕生後、国民がやんやの喝采を
送ったのは、無駄削減のための事業仕分けであり、第一弾、第二弾の作業の中で結
果的には、当初予定の無断削減の成果はでなかかったものの、今後ともそれを続け
ることで、さらなる無駄削減がなされることについての期待は今も極めて大きいは
ずである。                                

昨年の選挙で国民が自民党でなく民主党を選択したのはそうした事業仕分け、公務
員改革など行政改革で、政治・行政上の大きな無駄削減を行うという宣言があった
からだ。国民が消費税を含めた増税をあえて容認する前提として、そうした無駄排
除がどこまで実現できるかはまだまだやってみないことにはわからないにしても、
まずは徹底してそれをやることが必要だという認識に立っていることなどいうまで
もないことだ。                              

それなのにこの仙谷官房長官の発言は一体なんだと、言いたくなる。菅首相の増税
路線宣言を前原ほか主要大臣が支持しているようだが、それに対して、原口一博総
務大臣、山田農水大臣などが、増税は無駄排除の後という民主党の大切な公約があ
ったことを理由に疑問を呈している方が、その方が正しいといわざるを得ない。 

さて、この増税宣言で民主党がある意味で、選挙の争点をぼかし、それが参院選に
プラスマイナスの効果があってもある程度の成績を収めることは間違いない。菅政
権を支える側はその結果、増税路線が民意の信任を得たとするだろうが、これは民
主党内の親小沢グループに、非小沢グループ、現執行部に対してノーという立場明
確にを打ち出す絶好の口実を与えたことになったようだ。それで党内が真っ二つに
割れ、9月の代表選が戦われる可能性が出てきたようだ。           

より民主党らしいことを掲げて脱小沢をはかったはずの菅政権が、今度は、増税の
前に徹底的な無駄排除という方がより民主党らしさの原点であったはずだという正
論、主張と戦うことになるという皮肉なことになりそうだ。これには親小沢グルー
プに加えて元社会党、民社系グループが同調する可能性もあるわけで、これによっ
て相当深刻な党内の争いになる可能性が出てきたということだろう。      

私個人の意見は、言うまでもなく国家財政再建のため長い目で増税路線が必要であ
ることを認めるものだ。が一方で、その前提としてまずは徹底的な無駄の排除と言
ってきた本来の民主党の主張の方が今も正論中の正論だと思っている。その意味で
もこの仙谷発言は現執行部へ相当大きな反発を生んでいくものと思われる。同時に
その中身をめぐって党内で大議論が起こることは民主党にとっても国家国民にとっ
ても大きな意味があることだと思うのである。                

2010/6/19
早勢 直

今週の意見(685):

ネット選挙解禁とデジタルデバイド

民主党は、参院選に向け、ネット選挙解禁などを柱とした公選法改正案を議員提案
し、与野党合意にこぎつけたが、政局の混乱で廃案になってしまった。残念なこと
である。しかし下の関連記事にあるように、この法の抜け穴というもべきところを
ついて、ネットを活用した選挙戦が展開されることはこれまでと同じである。  

この問題のポイントは二つある。そもそもなぜ政党にとって、政治家にとって、い
や実はそれはなにも政治の世界に限らず、ビジネス、学界あらゆる分野でネット利
用が重要なのかという事の本質をまず理解しておく必要がある。そんな話になると
範囲を広げすぎることになるから、とりあえずネット選挙のことだけに限って話を
しておく。                                

鳩山首相、小沢幹事長退場の最大の理由は政治とカネの問題であった。世の中には
なぜ政治活動にそんなにカネがいるのか、カネの掛からない政治がどうしてできな
いのか、など極めてナイーブな議論が存在する。しかし、政治家が選挙をやるため
にはもちろんのこと、日常の政治活動のために多額のカネがいることなど議論の余
地はない。いきなり話が飛躍したが、なぜネット選挙がいいか、必要かというとそ
れがカネの掛からない、極めて効率的な方法だからということにつきる。この点に
ついて与野党が一致し、とにかくネット選挙を解禁しようという動きになったのは
当然である。それを解禁することでさまざま悪質な方法を利用するものが出てくる
危険性の除去は必要だが、とりあえず頭の使い方次第で、それがカネの掛からない
一つの大きな武器となることには違いない。                 
  
もっともネット選挙推進ということになると、実は流れてしまった公職選挙法改正
案などほんの目先のことだ。それを本当に効果あらしめるために与野党が超党派で
議論すべきことは、長い目で見たこの国のネットリテラシーを向上させていくこと
だろう。ネット選挙、と言っても、実際にはホームページにせよ、BLOGにせよ
ツイッターにせよ、それを見て、投票先を決める選挙民の数などまだまだほんの一
部に過ぎない。参議院選挙結果を決めるのは、結局はなにか事があると一晩で10
ポイント、20ポイント支持率が上下してしまう「軽い」「底の浅い」民意なので
ある。それは、あちこちの政党のホームページを見たり、政治家のBLOGを読ん
だり、ツイッターを読んだりし、いいにつけ、悪いにつけ、自分自身の意見を持っ
ている人たちが構成しているいわゆるネット世論とはかなり異質のものだ。   

ネットを利用した選挙戦を展開したい政治家にとっては、自らのホームページ、
BLOGツイッターなどをじっくり読んで、それに賛同したり、批判したりする能
力を持つ、ネット活用能力、それが私が上で述べたネットリテラシーが高いと考え
る階層なのだが、そういう階層、選挙民が増えて欲しいということだろう。いや、
全体的に見て、ネット選挙が本当に意味あるものになるのはその前提が必要なのだ。

そのネットリテラシィを高めるには二つの条件がある。一番目はなんのかんの言っ
てもパソコン、携帯電話などを使ってまずインターネット上にある情報を検索した
り、読んだりする能力、情報リテラシィが育つことである。二番目はそうした情報
を読んだ上で、その良し悪し、それについての賛成・反対に関して自らの意見を持
てる、確立できるようになることである。パソコン、携帯電話が普及し、インター
ネット活用が進む中でそうした意味での情報リテラシィが果たしてどれだけ日本の
社会で進んでいるかということになると、大きな疑問を持たざるをえないのだ。 

消費税アップ論の中で、所得格差論が並行して行われること自体はいいとして、問
題はこの国、社会におけるもう一つの格差、デジタルデバイド、情報格差が致命的
であるように思えてならない。それをそのままにしておいて、ネット選挙推進など
いくら説いても果たしてそれがどれだけの成果を生むかについては大いなる疑問を
感じざるをえないのである。                        

2010/6/26
早勢 直
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