2009年 今週の意見 7月
今週の意見(637):
鳩山氏の決断は
記載の半分以上がウソだった−−。民主党の鳩山由紀夫代表は30日の記者会見で
自身の資金管理団体「友愛政経懇話会」の政治資金収支報告書に記載された個人寄
付で、少なくとも延べ193人分、総額2177万円に上る虚偽記載があったこと
を認め、陳謝した。 記載内容に合わせ、鳩山代表から預かっていた年間1000
万円以上の個人資産を充てていたという。 二十数年つとめてきた秘書が独断でや
り、鳩山氏自身は知らなかったと釈明したが報告書への虚偽記載は明白だ。政治資
金規正法の違反である。鳩山氏の責任が重いことは否定しようがない。
なぜ、そんなことをしたのか。なお納得できない点は少なくない。鳩山氏は3日に
なって党の要職にあるものが、個人献金が少ないということに少々あせりがあり、
そこに無理を重ねたという趣旨のことを発言していた。政治資金規正法に関しては
法に照らしてどうこうというより、鳩山氏のこうした説明の方が国民にはむしろ説
得力があるような気がする。私自身は鳩山氏の説明責任はある程度果たされたので
はないかということだ。もうこれ以上説明することがないことも事実だ。
自公与党はここぞとばかりこの問題を攻め立てている。が、そもそもこうした献金
問題に関してはなにも先の小沢氏、鳩山氏の問題だけにとどまらない。与党側にも
二階氏、与謝野氏をめぐる政治資金規正法をめぐるさまざまな疑惑が存在している。
説明責任、説明責任というが、与党がこれを持ち出したととたん民主党側は与党側
にも、同じ問題が多く存在するではないかと反撃するにきまっている。これまでに
だって違反が指摘され、修正申告で済まされてきたケースはいくらでもある。自民
党がそれを棚にあげていう資格がないことは、朝日や毎日がその社説でも書いてい
た通りではないか。
仮にこのまま選挙に突入すると、選挙の争点がその問題rばかりにいきいわゆる争点
ぼかしになってしまう可能性がある。与党のねらいは実はそこにあるのではないか。
もっと重要なテーマが山ほどあるのに、自民党内は内紛でまだマニフェストすらき
ちんとまとまっていない状況なのだ。それが選挙がそうしたネガテイブキャンペー
ンだけで終わってしまう可能性がある。それでは民主党による政権交代などおぼつ
かない。
この問題が起こった時、私自身はたいしたことない問題、選挙にはさほど影響を与
えない問題だと思っていたが、ポイントは世論である。その動向が一番の注目だ。
これで内閣支持率がアップするわけではないが、民主党への支持率が再度大幅に落
ちる可能性もある。それがどの程度か、今鳩山氏自身、そして民主党員はそれに最
大の関心を持っているに違いない。
それと今進行中の静岡県知事選挙と1都議選の結果がどう出るかだ。この二つの選
挙で勝てば、鳩山氏の違法献金問題はそれで終わりになるだろう。民主党は鳩山体
制のまま選挙に突入する。逆に仮にこの二つの選挙が民主党にとって思わしくない
ものになれば、鳩山氏はその責任も含めて、代表辞任を決意する可能性があると私
は見ている。鳩山氏自身来るべき総選挙での民主党による政権交代を確実なものに
するためにもその道を選ぶのではないかと思われる。先の小沢氏辞任という教訓も
ある。
仮にそうなった場合、民主党の場合、新代表は2日もあれば決まるだろう。岡田現
幹事長その人だ。解散は多分麻生首相がサミットから帰った直後となるだろうから
その頃には民主党はもう岡田新代表の体制の下で準備万端というわけだ。肝心のマ
ニフェストももうほぼ固まっているという状況でもある。そうした状況での岡田民
主党への支持率は鳩山体制のそれより数パーセント上回ることも間違いないのであ
る。
一方自民党の党内抗争は収まりそうにない。麻生首相の周辺にも党幹部の中にも、
実は鳩山氏の方が選挙は戦いやすいという高度な政治判断ができる参謀はいないよ
うだ。だから鳩山攻撃しかできていないのだ。実はそれがひょっとするとさらに自
分自身を追い込む結果になるかもしれないと、わかっているのか、いないのか。い
やわかっていないのだろう。
民主党の内部は違う。内部から鳩山批判など全くないし、仮にその批判が出て来そ
うな政局になればその時の準備もすでにあるという暗黙の了解があるに違いない。
政権担当能力とはそういうことを言うのではないのか。今の自民党の政権担当能力
はゼロなのだ。
2009/7/4
早勢 直
今週の意見(638):
解散こそ最上のみやげ
麻生首相は一体どういうつもりでサミットに出かけて行ったのだろうか。内閣支持
率20%前後、しかも総選挙を間近に控えて、仮に選挙結果自公で政権を維持でき
たところで、麻生氏が再び首相に再任される可能性はほぼゼロという状態は、国内
はもちろん、サミットに出席する首脳たちは全部それを知っていることだろう。
そんな状況の中でサミットに出かける首相を与党はもちろん野党からも少々皮肉を
言っても、おっぴらに批判したりしないのも、仮にも一国の首相がそうした場に出
かけていくことにケチをつけたり批判したりすることは、礼儀に反するし、国家の
恥にもなることだからと、それぞれ自粛しているのだ。そのことは外国の首脳も同
じだろう。そんなことはおくびにも出さず、麻生首相に対してはにこにこ笑ってさ
しさわりのない雑談を交わすというくらいの礼儀というか、思いやりを示している
に違いないのだ。彼らもすべて政治家、いずれ同じような立場になるかもしれない
ことはわかっているということもあろうが、一人の人間としてそういう付き合いを
していくのは最低のマナーなのだ。
そんな相手と一体外国の首脳がどれだけ外交や政治問題を真剣に議論するだろうか。
もう直ぐ一け月後には全く別の政権の首相が誕生しているかもしれないという立場
の国家首脳と一体どれだけつっこんだ外交交渉を含め、政治問題について具体的な
話をするか、ということだ。するはずがない。ロシアとの領土交渉などその典型で
ある。
ロシアは、すでに日本が民主党政権になったら領土交渉は一体どうなるか、考えて
いるに違いない。麻生首相は間違いなくもうその交渉相手でなくなるのだ。そんな
相手とまともに議論したり、その手の内を明かしたりするわけがないのだ。
「首相にはサミット外交の成果を帰国後の政局での主導権確保につなげたいとの思惑
があったに違いない。しかし、短時間で終わったオバマ米大統領との会談も含め胸
を張れる成果をあげたとは言い難い。政権基盤が揺らぎ求心力の低下が著しい指導
者による首脳外交の限界を示したといえよう。」 毎日新聞社説より
あえて長文を引用したが、こんなことは政治、外交、論説の専門家がわざわざ書く
までもないことだろう。世の常識ともいえることではないのか。
最近KY首相、空気読めない麻生首相でなく、解散読めない、できないだという冗
談が流行っているそうだ。そんな世の常識、空気すら読めず、のこのことサミット
などの場に出かけていくその神経にはあきれるばかりだが、にも関わらずひよっと
すると首相は帰国後、都議選の結果いかんに関わらず、解散するかもしれないとい
う見方は根強く与野党を含めて存在する。
いや、麻生首相にとっては、それが唯一残された「名誉ある撤退」の方法であろう。
ご本人のためにも、また国家国民のためにも、その後の国際社会における日本の民
主主義国家としての評判のためにでもある。仮に首相がそのまま居残るということ
は今の政治混乱をそのままさらに2け月も続けるということでもうそれはあらゆる
意味で許されないことである。麻生首相自身の野たれ死は勝手であるが、それは首
相個人だけの問題でない。居残らないまでも、自ら辞任し、安倍総理以来4人目の
選挙を経ない新総裁、新総理を選んで選挙に臨むという選択肢も残されている。多
くの自民党議員はそれを一番望んでいるようだが、野党にとってはもちろん国家国
民にとっては最悪のシナリオである。
もともと国民は首相のサミットみやげなど全く期待していない。唯一みやげなるも
のがあるとすれば、それは帰国後の解散総選挙なのである。そのおみやげがなく、
自ら勝手な理由を挙げ、恥も外聞もなく、自ら辞任し、四度目の自民党の総理総裁
選出劇に加担することを考えていることなど断じてないことを祈るばかりである。
2009/7/11
早勢 直
今週の意見(639):
総選挙での民主党のアプローチ
都議選結果は与党自民党にとっては衝撃であったろうが、これまでの一連の政局の
流れからいうと当然予測された結果だった。都議選に限らず4月の名古屋の市長選
以来、さいたま市、千葉市、静岡県知事選、さらに都議選と同時に行われた奈良市
の市長選など民主党推薦候補が勝利した。決して偶然ではない。麻生総理はそれは
地方選挙のことで国政とは関係ないなどと言ってきたが、そんなわけがない。それ
はすべてこの国の有権者国民が今こそ日本の政治を変えなければならないという考
えに基づく投票行動の結果であることは明白だ。
その大きな民意のうねり、風を与党自民党をはじめ、マスコミなども「逆風」という
表現をしているが、長期にわたり日本政治を独占し、さまざまな悪政を行ってきた
与党自民党への批判の逆風なのであって、それは日本の政治をよりよいものにする
ための「順風」なのだ。とにもかくにも、有権者国民はここで一度政治を変える必要
がある、政権交代が必要であると考え始めたのだ。数々の地方選挙における民主党
の勝利、与党自民党の敗北はその民意の結果であって、もはやこの流れは何人にも
どう防ぎようも正しい流れなのだ。
サミット帰国後、都議選の大敗北を見て、麻生首相はようやく7月21日の解散を
決意した。それこそがサミットの唯一のみやげであると先週の「今週の意見」に書い
たが、まさにそうなった。麻生首相の真意、思惑がどうであれ、それがこの国のこ
れからの政治のために最善の道であることは改めていうまでもない。
それですんなりおさまる自民党ではないことはわかっていたが、その内紛ここまで
ひどいとは思わなかった。首相の解散宣言を受けて、中川秀直、加藤紘一、武部勤
など元自民党幹事長たちが麻生下ろしに動きだした。自民党は衆院での内閣不信任
案を一人の造反もなく反対して否決した。そしてその日のうちに、反麻生派は、麻
生首相を党総裁の座から引きずりおろそうという画策を始めたのだ。まことにもっ
て非常識、非道極まりない行動と言わざるをえない。それに三分の一近い議員たち
が同調したというからあきれてものが言えないのである。あの正義をかざす鳩山邦
夫なども、今このまま麻生総裁の下で解散することは、集団自殺行為だと言ったの
だ。小池ゆり子は解散はカダルカナル突撃の自殺行為だと非難したのだ。挙句の果
てに、最重要閣僚の一人与謝野薫も麻生総理に辞任を促したそうだ。なんというこ
とか、野党のやめろという決議を否決しておいて、いや自分でやめると言っている
のだ。しかも首相職の方はそのまま、総裁の方はやめろというわけ。こんなめちゃ
くちゃ論理があったものか。
こうした中さすが細田幹事長以下執行部は、麻生下ろしのための両院協議会の開催
をなんとか阻止して、麻生首相による21日の解散への道をつけた。それはなによ
りだった。自民党が分裂するのは勝手であるが、国家の政治がそれでさらに混乱す
ることは避けなければならない。麻生首相がどうであろうと、解散し、その後の選
挙を通じて「政権交代」への道筋をつけたことはせめてもの首相としての最後の仕事
であったのだ。
その麻生首相、「政権交代」は目的ではないなどと党首討論で言っていたが、今の日
本の政治にとって、それが当面最大の政治課題、目的であることはいうまでもない。
もっとも次期政権を担当する民主党はもはやそれをスローガンに掲げる必要もなさ
そうだ。
選挙戦突入後の民主党の戦略はただ一つ、党の掲げる政権公約、その内容について
の国民の理解を得るため懇切丁寧に何度でも説明を繰り返すことだろう。自壊を続
けている自民党の批判などする必要も全くない。そんなことには目もくれず、政権
交代後日本をどう立て直すか、どう新しい政治を構築するかひたすらその説明に専
念することが全てであろう。
それが政権交代へ最短の道である。
2009/7/18
早勢 直
今週の意見(640):
民主党外交・防衛政策の軌道修正
金曜日、麻生総理、それに閣僚たちは、民主党が外交・防衛に関する政策・マニフ
ェストに関して一部修正を行うと発表したことについて一斉に批判を行った。まる
で鬼の首を取ったみたいにだ。まだマニフェストの概要すら出していない党のトッ
プや閣僚が相手のマニフェストの批判する資格など全くない。民主党自体が従来の
マニフェストの内容を、その後の政治状況、社会の変化、民意の動向を見ながら、
さらに政権交代が現実美を帯びてきた状況の下、従来のマニフェストを適宜軌道修
正していくのは当然のことではないのか。
特に安全保障、外交問題に関しては、相手の国のあること、国際社会関係各国との
関係があること、政権が変ったところで、直ぐに従来の国の方針・政策を即転換と
いうわけに行かないのは当然のことではないのか。すでにインド洋での給油問題に
ついて、政権交代したとしても直ちに中止というわけに行かないと発表したことが
そうであった。さらにソマリア海域における海賊対策のための自衛隊派遣について
も容認の方向を打ち出すこと、さらに新政権誕生後北朝鮮の貨物検査実施法案の成
立を促進する予定であることを発表したことなどについて麻生総理自身や閣僚が一
斉に批判したのだ。野党にいる間、反対しておいて政権をとったとたん容認とは一
体何事か、というわけだ。麻生総理はさんざんその政策についてぶれた、と批判さ
れたことに反撃の意味なのだろう、これこそ大きなぶれではないかと主張している
わけだ。
大切なのはその外交・防衛に関する基本的なスタンス、防衛問題では例えば憲法9
条の基本精神の遵守というスタンスがどちらがより強いか、そうでないかと問題に
帰する。そのことを明記することと、個々の問題への対処についてどうするかはま
た別の話ではではないのか。
民主党が外交政策、防衛政策に関して、政権交代の可能性を見据え、外交、防衛政
策の継続性の観点から、とりあえず現状を維持するという方針を言明したことのど
こが間違っているのだろうか。現状を変える場合は、しかるべき法的措置をとった
上で行うとも言っているはずだ。それが正しいステップではないのか。
それをぶれたとか。かっての与党政策への反対は一体なんであったかなど筋違いの
批判は勝手にやらせておけばいい。問題は連立を組む社民の福島党首などが、こう
した民主党の動きにいちいち神経を尖らせ、それを問題視するのがおかしい。とい
うより、これくらいのことが容認できないようでは、もう連立など口にしない方が
いい。今からその予防線をはっておくつもりだろうが、民主党が政権を取ったとた
ん民主党がその特に外交・防衛政策に関して現実路線、とりあえず現状継続を言う
ことは必至であり、またそうでなければならないのではないか。
自民党がなりふりかまわず社会党と連立した時のことを思い出す。村山社会党党首
は首相になったとたんそれまでの自衛隊は憲法違反だといっていたのを、その存在
を認めてしまった。そりゃそうだろう。一国の首相がその国の軍隊を憲法違反だな
どと言って通るわけがないのだ。これこそ究極のぶれであったが、しかしそれはそ
れでよかったのだ。そういういきさつもあって、その後公明党にとっても、自民党
、小泉内閣のかなり強引なイラク派兵なども合法とするなど現実路線の根拠となっ
たはずである。
現実の外交実績が存在する以上、民主党が政権を取っても従来の主義主張を、ある
程度現実にあわせて軌道修正しなければならないのは当然の話である。相手の国に
あれは前の内閣がやったこと、新内閣はそれを無視しますなどいえるわけがない。
それこそがまさに政権担当能力のことではないのか。
そんなことをぶれなどと喧伝する麻生総理や与党の連中は愚かといわざるをえない。
民主党の鳩山代表、岡田幹事長などそんなことは正々堂々と国民の前で説明するこ
とだ。
外交・防衛問題はもちろんのこと、もっと重要な内政問題が山ほどあるが、これも
すべてオール・オア・オールナッシングでない。全部やるのかやらないのかではな
い。現実をいかに軌道修正しながら、マニフェストで約束した大きな方向に向かっ
ていくかの問題なのである。
民主党の現執行部にはその担当能力が十分あるからこそ野党時代の方針、政策の軌
道修正を行うのだ。そうした軌道修正についての与党からの批判、それはこれから
政権交代したら何が起こるか、そのシュミレーションの練習テーマを与えてくれて
いると思えばいい。
麻生総理や与党の連中には、今彼らが言っていることを忘れるなと釘をさしておく
ことだ。つまり彼らが下野した時、決してなんでも反対のやからにならぬようにね
、と。
2009/7/25
早勢 直
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