2001年 今週の意見 7月

今週の意見(224):

アメリカにもっとはっきりものを言え

 7月4日はアメリカの独立記念日だった。アメリカという国は世界のあらゆる意
味において世界のリーダであり、日本もまだまだ政治・経済、あらゆる点でまだま
だ及ばない点が多い。それは率直に認めざるをえない。

 小泉総理がアメリカを訪問し、ブッシュ大統領と会談後の記者会見を見ていた。
総理はアメリカが同盟国として日本にいろいろ注文をつけることを、外圧ととらえ
ない、それは日本に対するアドバイスだと考えるという趣旨のことを語っていた。
それ自体基本的にまちがっていないと思う。

 しかし同時に小泉氏は、日本も同盟国としてアメリカに注文をつけたいことがあ
る場合、ためらうことなくそうしたい。アメリカも率直にそれを聞いて欲しいとと
いうべきだった。アメリカだって、国際社会の平和を維持したり、経済を繁栄に導
いたり、人権を守ったりしていく上で、その行動に注文をつけたいことがいくつか
あるのではないか。

 地球温暖化の京都議定書の調印問題などそうだ。世界中がこの根本問題に一致し
てこれを調印しようとする中、アメリカはその内容が不備だとして、これを調印し
ない方針だ。日本は京都議定書の議長国だから、当然調印の方針だが、アメリカ抜
きの調印はしないという方針だ。小泉首相はその期限ぎりぎりまでアメリカを説得
するとしたが、どうもそのスタンスは弱い。結果はどうなるかわからないまでも、
本件についてもっと強くアメリカの参加を求めてもいいのではないか。

 沖縄の空軍軍曹による女性暴行事件にしてもそうだ。アメリカは日米地位協定を
たてになかなか被告の軍曹の引渡しに応じようとしない。いずれは引き渡すのだろ
うが、被告の人権だの、日本の法律が違うだのなんのかんのという理由でなかなか
引渡しに応じない。沖縄県民ののいらいらした感情など理解していない。その感情
は極めて正当なものだ。本件に関しても、日本政府はもっと強く断固としてアメリ
カ政府に被告の早期引渡しを要求すべきだ。

 イチローがオールスターで最高の得票を得て一位で選出された。日本からの得票
を差し引いても断然一位の得票だという。アメリカという国のふところの深さを示
すことではないか。上で述べたことは、イチローのことはお互いなんの関係もない
ことのように見える。が、そうではない。アメリカという国、国民はことの理非を
徹底的に話せばわかる、分かってもらえる可能性が高いと私は信じる。

 彼らは何が正義でなにが悪かということ、何が価値があるか、ないかということ
について、はっきりした価値観や判断基準をもっている国民ではないだろうか。京
都議定書の件や、沖縄の事件について、アメリカ政府は少々思い違いをしている。
日本政府、日本国民はもっと明確に、はっきりアメリカに対し、アメリカ政府に対
し、「あなたの考えは間違っていませんか」と言うべきなのだ。それが対等の立場に
立つ同盟国としての責任ではないか。

2001/7/7
Tadashi HAYASE
今週の意見(225):

大きな痛みを明言せよ

 小泉内閣の改革路線を阻む最大の勢力が自民党そのものだということになってい
るが、それもその背景に景気動向が悪いということがある。自民党の守旧派という
か、公共事業派というか、それが悪いことを理由に、相変わらず、財政出動の必要
性をいいだすわけだ。

 マイナス成長だけは避けなければならぬ、とか、構造改革ばかり言ってると、日
本発大恐慌が起こると脅かすわけだ。野党でも社民党だの共産党だのは構造改革は
失業の増大だ、福祉の切り捨てにつながるなどという。

 これまでの内閣の経済担当大臣とちがって、竹中氏は景気が悪いからといって即
従来のような財政出動、公共投資におカネをつぎ込むようなことはしないと、言っ
ている。小泉氏も構造改革をしなければ、景気はもっと悪くなると明言している。

 その辺はたしかに従来の内閣とはちがう。が、日本ではまだまだ、経済対策とは
公共投資をすることだと信じてやまない政治家、経済学者、評論家が山ほどいるの
が現実だ。経済学でいうならば、ケインズ理論一辺倒である。国の借金が500兆
円を超えているのにだ。

 今はケインズよりもシュンペータの理論が必要なときだろう。構造改革とはシュ
ンペータが唱えた「イノベーション」 技術革新だ。技術革新というと範疇が狭く聞
こえるが、社会経済構造の創造的破壊によって新しいものを創っていく変化のプロ
セスこそ経済成長のもとだということだ。

 日曜日小泉氏がフジテレビに出演していたが、そこ日本各地地方の中小企業経営
者なども出てきて今文字通りの構造改革が進むと、企業倒産が増え、失業者が増え
とんでもないことになる、などと訴えていた。

 それに対する首相の説明の歯切れがもう一つ悪かったのはしかたがない。が、小
泉氏を含めて、改革には痛み、それも相当大きなそれが伴うことをもっとはっきり、
いうべきである。一緒に出ていたオリックスの宮内氏が、大企業、中小企業に関わ
らず、経営を絶えず市場のニーズに合わせて革新していく以外に生き残る道はない
のだという説明をしていたが、そうなのだ。

 竹中氏や宮内氏のように、改革のためには少々の痛みはしかたがないと言い切れ
る人がいまこそ一番必要なのだ。が、少々ではない大きな、と言うのが本当なので
ある。改革には痛みだって必要だと、ものわかりのよく認めてきた世論も、現内閣
に対する高い支持率も、構造改革の中身が少しづつ具体的になるにつれ、少しづつ
下がりつつあるようなふしが見られる。当然だろう。

 小泉氏はそれでもまだまだ支持率が高い間に国民に相当の覚悟のほどを語るべき
だ。事実それは大きな痛みが伴うのだろう。こころある国民はその必要がわかって
いると信じたい。

2001/7/14
Tadashi HAYASE
今週の意見(226):

大阪惨敗の意味

 2008年のオリンピック招致に大阪市が立候補していたが、IOCの総会第一
回の投票でたった六票しか獲得できず惨敗した。いろいろ批判が出ているが、当然
の結果であり、悲しむことも、残念がることもない。

 そもそも他の都市では開催に市民が積極的に支持を与えているのに対し、たった
52%のしか開催を支持していないという数字も当然委員の参考になったに違いな
い。それに市の財政が大赤字という状況の中で、オリンピックを開催すればそれが
さらに悪化することは目に見えている。今なぜそんな無理をしてまで、オリンピッ
クを開催しなければならないのかという根本問題があった。

 オリンピックなんて北京に譲っておけばいい。中国は当然大喜びだ。中国はオリ
ンピックを成功させるために、少しは近隣諸国と仲良くしようと平和協調路線も取
るだろう。それは日本にとっても、世界にとってもいいことに違いない。

 それにもうオリンピックもだんだんその本来の魅力がなくなってきたのではない
か。世界の人々も、その行き過ぎた商業主義に飽き飽きしたきたところがある。ス
ポーツの祭典、平和の祭典という本来の意味が大きく失われつつある感がある。

 オリンピックで市の財政の建て直しなどできない。いわゆる町おこしのためにそん
な発想になったのだろうが、財政建て直しなどまずは地道にやるべきことが沢山ある
のではないか。ITの時代、インターネットの時代、グローバル化、情報化、ネット
ワーク化が進む中で、大阪市がやることはもうオリンピックなどという古いことでは
ないと思う。その経済効果を期待したのだろうが、もっとこの時代にふさわしい何が
できるか考えるべきだ。

 それは大阪市だけの問題でなく、この国全体の問題であることは言うまでもない。

2001/7/21
Tadashi HAYASE
今週の意見(227):

構造改革のための戦略的アプローチ

 ジェノバサミットで採択された首脳宣言を読んでいて、あれれと思ったことがあ
る。発展途上国削減のための戦略的アプローチというくだりだ。その前後は省略す
るが、その6、少し長いが重要なことなのであえて全文を引用する。

 「6.人権尊重と法の支配に根ざした、開放的で民主的で、かつ国民に責任を負う
統治制度は、持続可能な開発と力強い成長のための必要条件である。したがって
我々は開発途上国が以下を推進することを支援する。

 −公共セクターにおける説明責任及び透明性
 −汚職と闘うための法的枠組みとコーポレート・ガバナンス制度
 −公金の横領や非生産的使途への流用の防止策
 −すべての国民による司法制度へのアクセス、司法の独立及び民間
  セクターの活動を可能とする法規定
 −市民社会及び非政府機関(NGO)の積極的関与
 −経済活動の自由
   
                                    」
 私はこれを読んでいて、小泉首相は一体これを見て、どう考えたのかと、思った
わけだ。首相がその構造改革の内容を本当にわかっているとすれば、「あれれ、これ
日本に対するメッセージじゃないの」と思ったかどうかだ。

 首相は日本の構造改革をサミットで各国に約束したそうだが、この首脳宣言を見て
こう発言したに違いない。「これは日本に対するメッセージであるとも真摯に受け止め、
構造改革のために最善の努力をいたします。

2001/7/28
Tadashi HAYASE
ホームページへ