2009年 今週の意見 2月
今週の意見(616):
政府紙幣という劇薬
最近BLOGで英語の勉強をかねて、英語格言集100なるものを始めた。すでに
数年前にやっていたものをホームページに載せていたのだが、そのリバイバル版で
ある。それぞれの格言にあわせて時々のトピックスと共に掲載している。2月2日
には、100ある格言の丁度9番目のもの、「悪貨は良貨を駆逐する ”Bad money
drives out good." 」 というのを載せた。
その意味内容については、ここで詳しくは述べるつもりはない。それぞれの国家、
中央銀行はその国で使われる通貨、日本なら日本銀行が円を発行し、それが世に流
通し、経済を動かすまさに血液の役割を果たしているわけだ。通貨に対する信用は
その国の政治状況、経済状況の良し悪しにかかっているわけであって、政治・経済
の状況が悪ければ、その国のインフレに見舞われる。その国の通貨の対外国の通貨
との交換レートが安くなる。すなわち外国からモノを買う場合、より多くの自国通
貨を支払わなければならないということだ。
その点では日本の円は、この大不況の中にあっても物価は安定し、しかも円高の状
況にある。この英語格言に関連していうと、日本の円は間違いなく「良貨」なのだ。
麻生総理は百年に一度の不況だと盛んに危機感を訴えている。たしかにそうだ。し
かし、円という通貨の安定、物価の安定があればこそ、それでも国民はなんとか生
きて行けるのだ。この円の価値だけは絶対守り通さなければならない。
ところが最近政府内で麻生総理の側近の一人といわれる菅 義偉氏がTVのニュース
ショーで景気対策のため、「政府紙幣」の発行検討を言い出した。元々何人かの経済
学者が、経済対策としての有効性について言及していたのだが、この菅氏の発言で、
政府紙幣なるものが俄然世間の耳目を引き出した。「政府紙幣」とは従来の日銀が発
行している通貨に加え、政府が独自に発行するものだ。
それは政府が発行するもので、いくら発行しても国債のように返済の必要がなく、
それによって消費が拡大し、結果大きく経済成長に役立つという極めてうまい話で
ある。例の定額給付金などのように、それは財源的裏付けを必要としないから、1
万2000円などでなく、5万円でも10万円でも政府紙幣として、消費だけ使え
るカネとして給付すれば膨大な消費増につながるというわけである。
それは一見たしかにすごい有効な手段のように聞こえる。しかもそれを進める学者
などは日本でも外国でも実際に発行されて効果を挙げたことを言うのである。
しかしことはそんなうまい話ばかりでない。多くの経済学者、政治家は政府紙幣は
劇薬、マリファナみたいなものだと言う。それを発行することで本来の通貨円に対
する信頼を失わせ、円安につながり、結果インフレをもたらすことになる可能性大
だという。そうだろうと思う。そんなうまい話はないのである。
時を同じくして世間では例の円天事件が起こった。偽電子マネー詐欺事件だ。何百
万、何千万ものカネを詐欺で失った人たちがいる。一定のカネを出資すれば、後は
カネが好きなように降って沸いてくるという話なのだ。そんなことがあるわけがな
い。いや、騙された人たちは気の毒だが、TVのニュースショーの中である評論論
家がこんな見えすいた詐欺に引っかかる人たちの自己責任を問いたいと、コメント
してのはまさに正論ではないのか。
政府紙幣発行をこの円天事件と同じ次元で論じているのではない。しかしこの政府
紙幣なるアイデイアも話がうますぎるのである。この政府マネーなるものまさに悪
貨そのものなのだ。こんなものをどんどん発行しているうちに結果インフレを招き
本来の通貨、日本の円という良貨の価値が暴落したら一体どうするつもりなのか。
百年の一度の不況対策の名目のもと、なんでもあれの対策であっていいわけがない。
幸い今のところ、これについては麻生総理自身を含めて、与党幹部たちが批判的な
コメントをしているようだ。が、この麻生総理という人いつ何時、「それはグッドア
イデイア」などと言い出しかねないのが心配だ。
定額給付金など問題は問題だが、こんな政府紙幣発行に比べたらどうということは
ない。が、政府が政府紙幣の発行などまともに検討を始めることのないよう監視の
目を光らせておこなければならない。
2009/2/7
早勢 直
今週の意見(617):
小泉劇場第二幕は二度とない
2月13日小泉前首相が麻生太郎首相を痛烈に批判したことは政界に激震をもたら
した。なにしろ自民党内で影響力の強い小泉前首相が、郵政民営化問題はもちろん
のこと、定額給付金など衆議院で2/3の議席を使って再議決をするほどのもので
ないと言ったこと、麻生総理の言が国民に信頼されていないと言ったことは、麻生
総理に退陣要求を突きつけたのと同じことだ受け止められている。
こうした自民党の内紛で、漁夫の利を得るのは当然野党民主党だ。これで選挙にな
れば、より有利なのは明らかなようなだが、ことがそう単純でないところに政治の
世界のおもしろさというか、日本の政治、民主主義の未熟なところなのだ。
仮にこの小泉発言を受けて、小泉氏自身をはじめいわゆる小泉チルドレン達が衆議
院での再可決時、党の方信に造反し、反対票を投じ、法案が否決されたとする。そ
うなったら麻生総理は総辞職か、解散しかないのだが、大方の見かたは解散するだ
ろうという。と、なると、自民党は完全に分裂選挙となるわけだ。問題はそれが野
党民主党にとって絶対有利なことかということだ。
民主党の幹部及び多くの党員が恐れるのは、そうなると総選挙での選挙の対決が、
自民党対民主党でなく、自民党内の麻生総理と小泉元総理の対立に焦点が当たり、
選挙民の関心、興味がそちらに移ってしまい、民主党が埋没してしまうおそれがあ
るということだ。日本のマスコミの報道がそうなってしまう。おもしろおかしくそ
ちらの報道ばかりをするわけだ。これがいわゆる小泉劇場選挙第二幕なのだ。
3年前の郵政民営化選挙がそうだった。当時とて郵政民営化以外にももっと重要な
政策テーマが山ほどあった。にも関わらず、問題は郵政民営化をめぐっての対立一
本に焦点が当てられてしまった。郵政民営化に賛成か、反対かと聞かれて国民は圧
倒的に小泉首相に勝利を与えたてしまったのだった。
小泉前首相の麻生総理へのあのこっぴどい批判を聞いて、多くの国民は「おおさすが
小泉さん、言うことに筋が通っている」と感じ、マスコミにもそんな評価を与える愚
かな評論家が結構いたのだった。いや、民主党の幹部が恐れたのはそれなのだ。
しかし、さすが今回はその後のマスコミを含めた世の中の動きを見ていても、そう
はならないように感じられる。マスコミも一般国民も今度は小泉マジックにごまか
されないだろうという感じはある。
定額給付金が2/3で再可決されることになっても、逆に造反が出て、法案否決、
自民党分裂選挙になっても、どちらにしても党内に大きな矛盾を抱えることになる
ことは明白である。日本の有権者もさすがそれをそのままにしたまま、小泉劇場第
二幕を成功させることはないだろうと確信するものだ。
長年の与党自民党の権謀術数の政治に悩んできた民主党だが、今回のことも少々「あ
つものにこりて膾を吹く」というところがありはしないか。今回の小泉発言こそは自
民党政治への致命的な終焉を告げるものであることを確信して、正々堂々政策を訴
え、政権交代こそが日本の政治を良くする唯一の道であることを訴える選挙を展開
することであろう。
2008/2/14
早勢 直
今週の意見(618):
自民党への不信
麻生内閣が支持率低下に悩んでいるが、最近のマスコミはもう麻生批判疲れの感が
出てきた。これでもか、これでもかと批判を展開しても、肝心の麻生総理あまりこ
たえている風もない。一桁の支持率はもう致命的なものであって、それでいいはず
がなにが、、そんなことはどこ吹く風かと、相変わらず今は景気対策をやることが
自分の使命だと言い張る始末である。
そんな中、麻生総理本人の危機感のなさが問題であるには違いないが、それよりも
っとひどいのが、自民党そのものだ。内閣支持率低下はもちろん麻生総理自身の責
任が大きいがそれに加えて、最近は与党自民党そのものの党内のごたこたに対する
批判の方がもっと大きいことは明白だ。それも麻生総理の責任と言えばそうなのだ
が、党内の動きを見ていると常軌を超えた党議員たちの目にあまる反麻生の動きが
それだ。
麻生太郎を圧倒的多数で総理総裁に選んだのがつい5け月ほど前なのだ。が、今は
党内で公然と麻生批判が噴出している。執行部は必至にそれを押さえ込もうとして
いるが、中川財務・金融相の辞任を受けてからはさらに公然と麻生下ろしの声が出
てきた。
問題は反麻生の声が、政策に反対だというのではない。麻生では選挙は戦えぬとい
うことなのだ。反麻生の連中は、本予算成立後は麻生総理に替えて、新総裁を選び
選挙に臨むべきだという。そうした動きがまたマスコミにとっては格好の報道材料
そういう反麻生の議員たちがマスコミに登場し、麻生下ろしを言うのだから聞いて
いてあきれる。なんのための麻生下ろしか、要するにただただ選挙のためなのだ。
言い換えれば自分の選挙が危ないので選挙の顔を作り直せと言っているのだ。大儀
名分もなにもあったものではない。
そうした非常識な動きが麻生内閣支持率にさらにつながっているということを知っ
てか知らずか、それをぬけぬけというわけだ。麻生総理自身にも問題があるが、彼
らは政権への不信の半分は自分たち党内のごたごたが作り出してきたということが
わかっていない。
かっては内閣支持率は低いが自民党という政党への支持率は民主党をかなり上回っ
ていたのが、最近はそれも逆転してきたということがそれをもの語っている。安倍
福田内閣時代ではなかったことだ。
党員が総理批判を展開してはいけないとは言わない。それが国家国民のためならば
許されてしかるべきだし、麻生総理の方針、政策に異論があるなら、正々堂々と正
論と信じるものを展開すればいい。そしてその政策の修正を要求すればいいのだ。
定額給付金の問題一つとってもそれには異論があるくせに賛成票を投じてきた。結
果それが国民の支持を得られず内閣の支持率低下につながったとたん、首相交代論
を言い出すその行動の矛盾はどうしようもない。
その点では政策に反対だと反対票を投じ、党を去った渡辺喜美氏や、定額給付金の
再議決には反対だと表明した小泉元首相の行動には筋が通っている。そうした具体
的な行動もしないで、ただ党内で反麻生運動を行う、その行動に国民の不信はさら
に致命的に高まるだろうことは警告しておきたい。
この状況にどう対処するか、麻生総理に残された、総理としての名誉と自尊心を守
る唯一の道は本予算成立の上直ちに解散総選挙しかない。
2009/2/21
早勢 直
今週の意見(619):
日本の防衛長期ビジョン
民主党小沢代表が「(在日米軍)は第七艦隊だけで十分」などとした発言が波紋を生
んでいる。麻生総理の失政、失態で野党からの攻撃に対し防戦一方の与党としては
絶好の反撃材料ができた形だ。これは問題発言だ、待ってましたと一斉に批判を展
開し始めた。日ごろから与党寄り反小沢の読売新聞は、早速28日の社説で、これ
を批判、「小沢民主は大問題、政権交代の可能性のある今民主党は防衛政策その全体
像を示せ」と迫った。
たしかに「在日米軍は第七艦隊だけで十分だ」などと言った部分は誤解を生む。民主
党はもちろん、連携をはかる社民党など野党も、与野党攻防の最大の時期を迎えて
いる時に、わざわざこんな話題を持ち出すことはなかったと戸惑っているようだ。
小沢氏は反応の大きさに、火消しに躍起になっていると産経新聞は報じている。小
沢氏は従属的な日米関係を対等なものにするためにも、日本の防衛がアメリカにあ
まりにも頼り過ぎていることが問題であり、それが対等な日米関係を阻害している
ことを訴えているのだとしている。そのためにも、日本は、ただ米国頼りでなく、
日本独自の防衛問題についてもっと関心をもたなければならないという当たり前の
ことを言ったまでという趣旨の発言をしていた。これはその通りでないのか。
さらに平岡秀夫衆院議員は小沢氏の発言について、「在日米軍がいなくなった後、
東アジアの各国で役割分担を決めながら戦力の縮減を進める集団安全保障を目指す
という意味ではないか」と解説したのはまさにそうではないか。これからの世界は
アジアに限らず軍拡でなく、軍縮の方向に向かうべきなのではないのか。いや、オ
バマアメリカもその方向を模索しているのだろう。
たしかに小沢発言はそれでなくても野党民主党の政権担当能力をうんぬんする与党
に絶好の攻撃材料を与えたことは間違いないが、小沢氏は火消しに躍起というより
この問題をもっと積極的に国民にわかりやすく訴えるべきであろう。
第七艦隊で十分というのは単なる一つの例えであって、それは現実すぐにというこ
とでなく、長期的なビジョンだということだ。アジアの安全、日本の安全となると
米軍がいなくなると、あの北朝鮮からのミサイルが飛んでくるぞ、その脅威にどう
対処するのか、という与党は大批判を展開するに決まっているし、現にそうなって
いる。そんなことは百も承知、それに現状では、アジア、日本において、米軍のプ
レゼンスが必要なことは仮に政権を取った小沢民主とて否定するわけがない。
小沢氏はそのことをまず明言しておいた方がいい。ただ、現在のあまりにもアメリ
カに頼り過ぎの防衛をさまさまな観点から見直すべき時期にきていることを国民に
訴える必要があるということだ。日本の防衛という問題になるとあの北朝鮮よりも
っと重要なのは対中国関係である。小沢氏が今中国とより深い外交関係を関係を確
立しようと動いていることはその一つの現れなのだろう。
再度言うが、アジアにおける防衛問題を大きく見直そうとしているにはオバマアメ
リカ自体でないのか。アメリカはアメリカで日米の同盟関係の重要さを語る一方で
中国の関係を飛躍的に深いものにしようと動いているのだ。日米関係がそれにとも
なって従来のように日本の従属的関係そのままでいいはずがない。
今回の小沢発言は、短期的な観点からいうと問題発言であるが、問題はそんな北朝
鮮からのミサイルが飛んでくるぞといった短期的な脅威論だけでなく、長い目で見
た平等な日米関係確立の必要性、そのためにも日本が国家としてもっと自らの防衛
を自らの手で行う必要性を訴えたものであること、さらにアジアの真の平和のため
には、軍拡でなく軍縮の方向に外交を進めることの重要性をビジョンとして掲げた
ものであることを正々堂々述べればいい。述べるべきである。
そうした方向は選挙で連立する民社党などの防衛政策とむしろ一致こそすれなにも
矛盾するものでないこともこの際説明しておけばいい。それに関連して改めて憲法
9条の問題も出てくることは必然である。
2009/2/28
早勢 直
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