1997年 今週の意見 −12月
今週の意見(46):
温暖化防止京都会議
21世紀の地球温暖化防止対策を決める第3回締約国会議が12月1日から
京都で始った。全世界の政府代表、国連代表者など8千人が参加する大国際会
議である。21世紀地球の運命、人類の生存をかけての会議と言っても過言で
はない。
その会議の目的は明確である。地球上CO2など排気ガスが増え続けている
ため、いわゆる温室効果で大気の温度が上昇し、このままでは北極、南極の氷
が融け、水面が上がり、埋没する島ができたり、全体の気候バランスがくづれ
てさまざまな災害が発生するようになるだろうということ。すでにその兆候が
年々見えるようになってきたことも周知のことである。
にも関わらず、じゃ問題のCO2削減努力、削減目標数値設定について世界
各国の意見が一致するかというと、さにあらず。EU、アメリカ、発展途上国
など意見はバラバラ。日本自体も削減努力目標は直接経済成長と関わりのある
として5%とか、極めて低いものを設定している。高い一律の削減率設定を主
張するEUと、当面ゼロなどという消極的な米国の意見の狭間にあってその意
見調整のスタンスすら、もう一つはっきりしない。こんなことなら議長国にな
ど手をあげてならなければよかったという意見がでるのももっともである。
日本だって今大不況、それどころでない、と言うのが経済成長維持派、成長
必要論者の大方の意見であろう。例えば、5%削減などと言っても、そのため
それが産業競争力を弱くし、最近増えつつある失業率をさらに上げかねないと
いう議論である。それ自体はわからぬではない。
が、考えてみれば、日本の経済構造自体今大転換期にあると言っていいので
ある。大量生産、大量消費、大エネルギー消費の経済構造から、モノばなれ、
ソフト化、サービス化、省エネルギー型の経済に大転換しなくてはならない時
なのではないか。日本こそ世界にさきがけて、こうした転換を果たし、省エネ
型経済構造を作る見本を提供すべきだし、日本国民は世界の人々の見本になる
ような省エネに即したライフスタイルをうち立てる覚悟をきめるべきではない
か。
そうでもしないかぎり、今の発想のまま、ライフスタイルのまま、産業構造
のままでは、そもそも日本自体が生き残る道はないし、今のままのライフスタ
イル、産業構造を続けるならば、地球の温暖化は一層進み、日本経済はもちろ
ん人類破滅ということになることは目に見えている。
金融破綻の相次ぐ大不況の中、こうした会議が日本で開かれること自体なん
と考えるか。この問題について日本が、日本人が何をどう発想し、行動すべき
か。政治のリーダーは日本をどのように導くべきなのか、絶好の機会が与えら
れていると考えるべきである。そしてより大きい削減案を先頭を切って提示す
べきだと思う。
1997/12/6
Tadashi HAYASE
今週の意見(47)
フイルム紛争
日本の写真フイルム、印画紙市場が閉鎖的だとする米国政府の提訴を受けて
審理していた世界貿易機関(WTO)は「日本が外国製品の市場参入を妨げて
いる事実は認められない」と米国の主張の大半を退ける見解をまとめた。これ
で日本や、コダック社と争ってきた富士写真フイルム社などの主張が認められ
た形である。
日本の市場がなにかと規制があり、外国企業にとって参入の難しいこと多い
のは事実であろう。なにかというと、認可、免許、さまざまな規制があり、日
本の企業自体にとってもそれが一つ市場の公正な競争を阻害し、業界の活性化
を妨げ、結果として消費者のためにもなっていないことは事実であって、経済
が沈滞している今日、規制緩和が叫ばれている理由である。
そうした規制が業種によっては外国企業にとって決定的な市場参入の阻害要
因となっている場合のあることは事実であろう。しかし、ことフイルム市場と
いうのは、特にそれが大きな問題になっていることはないと思っていた。が、
米コダック社は日本の富士フイルムなどが日本で圧倒的なシエアをもち、外国
企業がその状況を打破できないのは、政府と業者が一体となってさまざまな自
由競争を制限するようなことをやっているからだという主張であった。自分の
ところはアメリカでは70%の市場占有率を持っているのに、日本で競争力を
発揮できないのはそうした日本流通市場の障壁があるからだという。まことに
奇妙ないいがかりである。
これに対して日本政府、日本の業者の反論は要するにそれは米企業の販売努
力、企業努力の不足によるものとしていた。そして、それが大筋に認められた
形である。WTOの結論をまつまでもなく、私はそうなるだろうと思っていた。
そういう点、アメリカ企業の言い分は勝手すぎる面がある。長年紛争を続けて
いる自動車産業などにも同じような傾向がある。それが売れないのは基本的に
は日本の消費者の基本的な欲求、好みに応えていないからである。価格面、品
質面、サービス面などについてである。その例は山ほどあるが、一つだけ例を
あげるなら、日本向けアメリカ車がいつまでたっても右ハンドルにならないこ
とである。最近になって少しは出てきたが。今も左ハンドルのままであるもの
が多い。
消費者のニーズと好みに応じた商品供給こそマーケテイングの基本であるは
ずだ。それを棚にあげておいて規制が多いとか、その国の商慣習がおかしいだ
の言うこと自体がまちがっている。
行政による不合理な規制は排除していかなければならない。それは国内業者
とて同じ気持ちであろう。が、その国の消費者の好みに応えたり、その地の商
慣習に従ったりするのは供給者として絶対不可欠の条件である。「郷に入って
は郷に従え」とはビジネスの世界でも、そこで成功をおさめるる絶対の教訓で
あるはずだ。
1997/12/13
Tadashi HAYASE
今週の意見(48)
公的資金の導入
山一証券、北海道拓殖銀行などの破綻の中金融恐慌の懸念が広がっている。
日本の金融恐慌をきっかけととしてこれが世界中に波及すると世界中の政府
金融当局者がその懸念を表明し、日本政府に強くその対策を迫っている現状
である。
金融恐慌の事態を防ぐため、政府当局者は公的資金の必要性をいい、その
実施を示唆している。政府の金融対策のまずさを指摘する野党も公的資金の
導入に関してはおおむねその必要性を認めているようである。したがってい
ずれは大々的に公的資金導入ということになるのは時間の問題のようである。
公的資金導入ということに関しては、政府当局、金融の専門家、経済評論
家など、意見は千差万別であるようだ。大きくわけるとそれは預金者保護に
限るべきという意見と、いや、危機に瀕している銀行などの救済そのものに
も当てるべしという意見。 自民党政府当局は後者のつもりのようである。
12月15日自民党が発表した10兆円国債発行による金融安定化策は預金
保険機構を強化するとともに経営破綻に瀕する金融機関に公的資金投入の道
を開くものである。橋本総理は12月17日2兆円の特別減税を発表、それ
をてこに景気回復をめざすとともに、自民党案の金融安定化策で金融不安に
対処するようである。
そもそも銀行など金融機関が経営破綻に追い込まれるなど、それ自体の経
営責任なのだが、今はそんなことを言ってもしかたたがない。不良の経営銀
行だってこれが倒れると全体に波及し、全体の金融システムの破綻につなが
るというのがその観点。そうかもしれない。が、そういう観点、考えで例の
護送船団方式で来た結果が今日の破綻状況につながっていることを忘れては
なるまい。
今は火事が起こってしまった状況だから、まずこれを消さなければならな
い。出火元がどうだとか、出火責任がどうだと言ってもしかたないというの
が、破綻銀行を含む公的資金導入論者の意見。それは認めざるをえまい。
随分横柄な論理だが、しかしまずは自民党案など公的資金を導入して燃え
さかる火を消すことには賛成せざるをえまい。ただ、そうした金融不安があ
る程度落ち着いた鎮火した段階では、不良銀行の整理は市場競争原理にゆだ
ねるべきことはいうまでもない。
これは預金者保護についても、それはまず預金保険保護機構を通じて保護
されることは基本としても、これからは預金者自体もより厳しくその預金先
銀行、金融機関を選定していく時代に入ったことを忘れてはならない。
1997/12/20
Tadashi HAYASE
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