2007年 今週の意見 12月
今週の意見(554):
三権分立は機能しているか
前の防衛省事務次官守谷夫妻がついに逮捕され、政官業にまたがる一大疑獄事件の
様相を呈してきた、国会では参議院で守谷氏と額賀財務大臣を喚問をすることを与
党の反対を押し切って野党側が決議したのはいいが、その後共産党は議会での証人
喚問は全会一致が原則だと先の決議に加わったことに問題があったして与党ととも
に参議院江田議長に仲裁を申し入れ、その結果民主党も折れて、結局額賀氏喚問は
見送られた。
そもそもこの喚問は守谷氏が宴席の席に額賀氏が出ていたと証言したのに、額賀氏
が強く否定したことに始まる。どちらの証言が正しいのか国会の場で明らかにしょ
うということだった。いろいろ批判があったものの、いずれの言い分が正しいか両
者を呼んで関係者二人から話を聞くことが本筋だという民主党の言い分には理屈は
通っていた。額賀氏が本当にその宴席に出ていないのなら証拠を示してそれを説明
すればすむ話なのだ。それをどうして喚問に応じないのかという民主党の言い分は
別に間違っていなかったはずである。
が、問題は二人を並べておいて喚問することに意味があったのに、守谷氏は検察庁
に逮捕されてしまった。だから国会に喚問できなくなってしまったのだ。出張喚問
という形で拘留先に出かけて質疑応答をすることができるそうだが、それでは額賀
氏一人を国会に喚問する意味が半減してしまう。
ここで問題は守谷氏が逮捕されたからと言って一日位国権の最高機関である国会に
どうして喚問できないのかである。それが国会にしても、逮捕となり、検察の支配
下に入った以上それがない。犯罪を犯した容疑者がいったん司直の手にわたってし
まうと立法府国会としても手が出せないということである。
そういえば一昨日であったか、防衛省に東京地検の調査が入ったニュースが報じら
れていた。40人近い調査官が防衛庁の建物の中に入っていく様子は一種異様な風
景に見えた。あの巨大組織である防衛省に検察庁の係官が踏み込んで資料など強制
的に抑え、係官に資料の提供を要求したり、それを強制的に持ち出すのである。防
衛省はいうまでもなく行政府機関である。
この夏の選挙で野党が参議院で多数を占めることになって野党は防衛省に対し、国
政調査権を根拠にさまざまな資料を出すよう要求した。もちろんいくつかは出たの
が、出せといってもなかなか出さないものが結構あったはず。国家の最高機関であ
る国会が要求しても出さない資料がある一方で、それが司直の手にかかると出す出
さないではない強制的に省内に踏み込んでさまざまな資料を探したり、調査したり
することができるのだ。
こうしたニュースはざまざまな形で報じられているが、立法府たる国会、行政府た
る政府機関、そして司法を司る検察庁などの国家分権の仕組みを理解していないと
その意味がよくわからないのだ。なぜ国会で政党がもできないことを司法当局がで
きるのかということだ。
検察庁の調査係官が防衛庁の中に踏み込んでいく風景は実は異様なものでもなんで
もなく日本が国家として健全である証拠なのである。
日本の民主主義は戦後欧米先進諸国から学んだものであった。憲法の建前として三
権分立をうたっているが果たしてそれが正常に作用しているのかどうかが常に問わ
れているわけだ。今回の防衛省をめぐる一連の事件を見ていると、政治の混乱は困
るにしても、日本では少なくともその三権分立のしくみが正常に作用しているとい
っていいのであろう。
2007/12/1
早勢 直
今週の意見(555):
米国北朝鮮外交の疑問
イランは実は核兵器の開発をしていなかったという情報局からの報告があってもブ
ッシュ大統領は強気で、今後ともイランの核疑惑監視を続けると表明した。その一
方でブッシュ大統領は北朝鮮に親書を送り、核廃絶の手順をきちんと踏み報告して
くれと促したというニュースがあった。片方には相変わらずイラク戦争と同じ、軍
事行動すら起こしかねない強硬路線、片方には「親愛なる議長閣下」で始まる親書
を送るというのは一体どういうことなのか。こちらは6か国協議で手順を踏んでや
っていることだからというだろう。
しかし核兵器開発という点に関しての懸念材料は同じはず。しかも北朝鮮には核兵
器、核爆弾の問題に加えて深刻な人権問題がある。これもアメリカにとっては重要
な外交テーマであったはず。最近こちらの方はとんと無関心なようである。同盟国
日本には少しばかり気を使って拉致問題のことも時々言及するが、少なくともこの
親書の中にはそんなことこれっぽちもふれていないことは明白である。
対北朝鮮外交に限っては、こうした北朝鮮への外交路線はブッシュ政権に始まった
ことでない。この中日新聞の記事にあるように、前の民主党クリントン政権でも、
その末期当時のオルブイト国務長官が北朝鮮を訪問し、北朝鮮との外交関係改善を
進めようとしたことがあった。
いや、ブッシュ大統領が金正日総書記に親書を送ること自体の是非を論じているの
ではない。なぜブッシュ政権、アメリカという国はイラク、イランといった中東諸
国には戦争をしかけてでも自らの主張を通そうとするのに、一方はるか弱小国の北
朝鮮にはこうした低姿勢の外交を展開するのかそれが不思議なのだ。いや、まさに
北朝鮮は弱小国だからということなのだろう。第一この国はどちらにころんでもア
メリカという国にとってはたいした利害関係、損得関係などない。
中東諸国は違う。いうまでもなく石油という大きな利権がからんでいる。だからこ
そ大量破壊兵器がどうだ、核兵器がどうだといろいろなんくせをつけて自分たちの
意のままになるよう仕向けるのだとしか考えようがないのである。
ブッシュ政権はいずれ民主党政権と交代することは間違いない。その時アメリカの
外交中東、そしてアジア、北朝鮮とのそれがどのようになっていくか日本もよく見
極めが必要なのである。そんな中で新テロ対策法、政府与党は何がなんでもこれを
通すことは日米関係にとって重要であり、国際関係の中で重要であるとしているが
果たして本当にそうかどうか。
この親書に対し、北朝鮮がどう答えるか、その結果次第ではアメリカが北朝鮮をテ
ロ支援国家指定からはずす可能性も大なのである。万一そうなったら日本の拉致問
題は完全に迷宮入りする可能性もあるのだ。そうなったら日本は一体どういう外交
をするべきなのか、実に深刻な問題に違いない。新テロ特措法などどこかに吹き飛
んでしまうはずだ。
衆議院の委員会で米国が北朝鮮をテロ支援国家指定からはずさないよう依頼する決
議案を共産党を除く与野党で決議した。画期的なことだ。米国がこれにどう答える
か、答えないか、これも一つ大きな関心事である。
2007/12/8
早勢 直
今週の意見(556):
日本人の政治意識は低くすぎないか
14日衆議院本会議は会期末を迎える臨時国会を来年1月15日まで31日間再延
長することを与党の賛成多数でこれを決定した。これは新テロ法を参議院の議決が
なくても、否決されても衆院の3分の2の賛成で可決成立させるためであることは
いうまでもない。
衆議院でそれをやると参議院では福田総理の「問責決議案」が提出され、可決され
る可能性が高いが、福田首相はそれを無視するつもりのようだ。憲法上それで何の
問題もないという論拠である。ちょうど次年度予算を審議する時であり、国会解散
などもっと先のことだ、今それをやっておれない、国民の理解も得られるという言
い分である。
そうした判断の大きな背景には、安倍内閣の後をついで始まった福田内閣の支持率
が40%台とまだ結構高いことがあるのではないか。
しかし防衛省内の不祥事、年金記録問題の再燃などについて国民がどう考えている
か、民意を甘く見すぎているのではないかと思われる。福田総理はあれだけ国民の
関心の高く、参議院での与党大敗の最大の原因であった年金記録問題の解決を今会
期末までやると宣言した前安倍総理の言など、「あれは公約といえるほどのものだ
ったかな」ととぼけて見せた。あのとぼけぶりに国民はだまされるのである。普通
なら少々色をなして反論するところ、「それほどのものだったかな」ですますので
ある。こういうのをユーモアなどと勘違いしてはいけない。完全な公約、政治的な
約束違反だと国民はかんかんになって怒らなければならない。
福田首相だけでない。町村官房長官、舛添厚生労働大臣なども、そういう重大な公
約のことなどそれがどうした、「選挙の最中だから、短縮して言ったまで」とぬけ
ぬけといい、またそれが通ってしまうようなことで果たして国民は政治に一体信頼
がおけるのか、ということである。
民主党をはじめ野党はもちろんこうした福田首相の言を捉えて攻撃を加えるのは当
然のことであって、それは徹底してやるべき、やって欲しいことだ。
こうしたことを看過して、衆議院の再議決を許し、参議院の問責決議案を無視し、
福田政権がそのまま存続し続けるようなことがあっては絶対ならないことだ。そう
ならないためには国民はこうした政府与党のやり方に厳しい反対の声を上げるべき
だろう。内閣支持率が30%をきるような自体になれば福田首相も少しは目覚める
かもしれない。
そういういい加減な与党政治家の発言は出てくるべくして出てくるものだ。彼らは
そういう政治をやっているのだ。問題は有権者国民である。どうしてそうした実に
無責任ないい加減な発言にもっと怒りを発しないのかということである。
国民の怒りの声が結集して、早期に衆議院解散、政権交代が実現することを切望し
ている年の暮れである。
2007/12/15
早勢 直
今週の意見(557):
意見がいろいろあるのは健全なことだ
民主党が与党の新テロ法に対する対案を国会に提出した。与党からは新テロ法に反
対するならその対案を出せと要求されていたがなかなか出さなかった。
新テロ法に対して民主党が対案の法律を出さないのにはいろいろ理由があったのだ
ろう。第一この問題に関してはたしかに党内で相当いろいろ意見が違う。憲法9条
のこと、集団的自衛権のことで党内の意見がさまざまな違いがある。そして世間で
はそれがあたかも民主党のアキレス腱みたいに言う。与党もそれを攻撃の言いがか
りにする。一般国民もそう思う人が多い。
が、こうした外交問題に関してさまざまな意見があることはむしろ当然で、ある意
味では党内民主主義という観点から見ると健全なことではないのか。アメリカの共
和党、民主党だってそうだ。こと外交政策に関しては党内でも意見がいろいろ違う
議員がいる。しかもそうしたことを国会で決める場合でも党議拘束はないから同じ
党からでも決議の時賛否両論がでる。が、一旦決まったことにはみなそれに従い、
外交問題については国を挙げて外向き一致してことに当たるのだ。それが民主主義
のルールだし、そうあるべきなのではないか。
ところが日本では党内で意見が違うことをまるで致命的な欠陥のようにいう。それ
はおかしい。日本には公明党、共産党など、そういう意味では意思決定プロセスが
全く民主主義的でない党がある。そちらのほうがおかしいのだ。国防の問題にせよ
なんの問題にせよ、国の政権を担う能力があるかどうか、政策についてさまざまな
考え方の違いがあってむしろ当然である。でないと国民の広い支持など得ることは
できない。やはりさまざまな見解の違いを持つ国民の選択の幅がそれではなくなっ
てしまうのだ。
もう一つ民主党が対案を出すことに慎重であったのは、それを出すと同じ野党の共
産党や社民党との考えの違いが明確になり野党結束が乱れることを恐れたのだろう。
しかし、それはしかたのないことだ。とりあえず今の与党が出した新法には反対で
一致する。それだけででいいのではないか。それから先のことはまた話は別だ。民
主党が政権をとったら民主党案は、今度は野党自民党の賛成を得られるかどうかが
法案成立の焦点となる。いやそうならざるをえない。こと憲法9条のこと、自衛隊
の海外派遣のことなど民主党の考えは自民党の考えにより近く、共産党、社民党な
どとは根本的に違うことは明白だ。
テロ新法に対して民主党が対案を出す必要は必ずしもないと思っていたが、しかし
それを出して悪いわけは全くない。仮にそれで党内から異論が出ようが、野党から
反対されようがしかたがないし、それはいずれ明確にしなければならないことだか
らだ。
新テロ法をめぐっての国会論議がこれでさらに深まることはまちがいない。その意
味は大きい。
2007/12/22
早勢 直
今週の意見(558):
ネットワークサービスインフラ整備
今年から正月休みの間のATM稼動状況が大幅に改善されたようだ。去年までそう
でなかった。元日から百貨店、スーパーが営業しているのに、三が日、ATMが使
えないところが殆ど。不便を強いられたものだ。コンピューターネットワークの時
代にそれはなかろうと批判した覚えがあるが、これでやっとサービスの改善が見ら
れたわけだ。
ATMについては稼動時間のことだけでなく。もっと改善して欲しいことがある。
送金料金をもっと安くすることである。かって金融業務が自由化されていない時代
は振込み料金が一律で、違う銀行間などの振込み料金は結構高いものだった。AT
Mが発達した時代になっても結構高い料金設定が続いている。ゆうちょ銀行が特に
高い。振込みサービス相互乗り入れや、料金を下げないと民営化の意味がないのだ。
金融業界の自由化が進みサービスの競争が激化する中、全般に金融サービス料金の
低下がさらに求められるところである。
社会のコンピューターネットワーク化が進む中で、便利になるべきなのは金融関係
のサービスだけでないはずだ。公共料金の振込み、自動引き落としなど税金や健康
保険料ほか社会保険料などにカネを取る方ことのためばかりにそれが使われている。
それを使った住民、納税者への見返りのサービスが一向にはかられないのはどうい
うことだろうか。
その典型的な例は、今大問題になっている国民年金の記録問題がある。5000万
件もの消えた年金記録問題はまだああでもないこうでもないとやっている状況だ。
紙台帳とコンピュータの記録の突合せ作業など気が遠くなる話である。年金制度の
抜本的解決のためにはそれを管理するための抜本的事務管理システムが導入されな
ければならない。それがないと国民の不信を払拭することはできないのだ。
そのためには民主党が提案している年金手帳に代わる年金通帳の導入がヒントとな
る。国民がいつでも銀行通帳のように、通帳の形で納めた保険料といつ、どれだけ
もらえるかという情報を集約した形でいつでも確認できる形のものである。
しかもそれを銀行のATMなどで確認できるようにできないものか。いや、現在の
コンピューターネットワークシステムを使えば簡単にできそうだ。いやできるはず
だ。そうしたシステムは今のところ政府も、どの政党も提案していないが、民主党
の年金通帳の仕組みを導入すればできるはずだ。銀行預金の出し入れと基本的には
同じことである。
さらに納税者からカネを取るだけの仕組みでなく、住民納税者が必要としているあ
らゆる情報をいつでもATMや市役所の端末でみれるようなオンラインシステムイ
ンフラの整備が求められているのではないか。もちろんそのために、住民側で住民
基本台帳や国民背番号制導入のことなどについて理解を深めなければならないこと
があることも当然だ。
2007年12月29日
早勢 直
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