1998年 今週の意見 8月
今週の意見(78):
以心伝心とディベート
前述の四国フォーラムに出席したが、その中での議論があったことについての感
想で、「以心伝心」ということについて。
今の時代、日本社会の混迷の一つの原因はコミュニケーション能力の欠如、不足
という多くの意見には賛同したのですが、その議論の中で、「今の日本人はかって
の以心伝心という、伝統的なコミュニケーション能力を失っている」という発言を
した人がいました。何も言葉で言わなくても通じ合うことが必要なのだいう趣旨で
す。家族の間でそしてコミュニテイーにおいても、言葉少なくして通じあうのが、
日本人のよき伝統だというお話でした。
私は早速反論しました。「その以心伝心という考えこそコミュニケーションを失
わせている元凶ではないだろうか。多くを語る必要はないが、必要なことを明確に
言葉で表して伝えるという能力こそ今日本人に一番かけているのではないか」と。
価値観の多様化する日本の社会ではもちろん、国際社会ではなおさらそれは通用し
ないのではないか、と反論したわけです。
そして、そうしたあいまいなコミュニケーション能力を補うという意味でも、デ
ィベートの能力を身につける必要がむしろあるのではと論じたのでした。それに対
しその「以心伝心」論の人はディベートは、争いの精神であり、日本人の和の精神
にはそぐわないと述べられたのです。
それに対する私の反論。ディベートを学校教育に取り入れたりするのはあくまで
論理的に互いの考えの違いを徹底的に明確にすることで、相手の主張も理解するよ
うになることが主眼であって、争いそのものが目的なのではない。それが証拠にデ
ィベートではそれぞれ互いに主張の立場を逆転させて論じる。テーマについて賛成、
反対それぞれ両方の立場から論じてみる。それによって互いの見解の相違が論理的
に明確に理解できるようになる。それが真のコミュニケーションに必要なのだ、と。
その分科会での議論はそれ以上発展はしなかったが、「以心伝心」的コミュニケ
ーション論の方がどうも全体のうけがよかったような気がして、私は少し釈然とし
なかったのである。
1998/8/1
Tadashi HAYASE
今週の意見(79):
第二の敗戦
小渕内閣が発足した。これほど世界中から注目された内閣はかってなかっただろう。
冷えたピザなどという不評はともかく、できた以上山積する問題、それに不況克服のた
めがんばってもらいたいものだ。
夏休み真っ盛り、そして8月と言えば8月15日、終戦記念日である。今やこの日の
ことを意識する日本人少なくなったのだろう。特に若い人はそうだろう。が、日本とい
う国日本人にとっては大切な日なのである。53年前、日本は全土は焦土と化し、連合
国に対し無条件降伏をした。そしてその後50年焼け野原の中から奇跡の経済復興をな
しとげ世界第2の経済大国となった。
しかし、今や日本は第2の敗戦状態にある。一時は追いつき追い越したアメリカアメ
リカ経済が好調であるのに対し、 日本は今大不況のまっただ中にある。 なぜ、そうな
ったか。さまざまな理由があるだろう。が、一つ厳然たる事実がある。今の日本とアメ
リカの経済力の差は一つには社会の情報化、ネットワーク化の格差であるということで
ある。
ご承知のように今のクリントン政権ができた時、アメリカ政府はアメリカの経済構造
改革の柱として「情報ハイウエイ」という構想を打ち出した。そしてアメリカ社会を情
報化、ネットワーク化するための公共投資を積極的に行った。情報通信分野でのベンチ
ャービジネスを奨励し、学校でのパソコン教育などを積極的に支援した。その結果アメ
リカでは情報通信産業分野で新しいビジネスが数多く生まれ、新しい雇用が創出された
のだ。さらに情報化ネットワーク化の結果企業経営、特にオフイスの生産性が高まり、
経営収益が改善した。それが今日のアメリカ企業業績好調の背景の一つとなっているの
である。
これに対し日本はどうであったか。残念ながら公共投資と言えば、道路や鉄道や、橋の
建設ばかりに偏っていた。そしてそれがいわゆるバブルを作り出してしまった。四国の
話になるが、まもなくいわゆる本四3橋時代を迎える。が、グローバル化する経済にあ
って、今本当に必要なことは情報の橋を強化しそれを活用することではないだろうか。
そのことは四国フォーラムに関連する話の中でも説いた。
日本の多くの企業が今リストラをよぎなくされているのも一つには情報ネットワーク
化が遅れたためであると言って過言ではない。意志決定や経営プロセスのスピードアッ
プが今や市場での激しい競争に勝ち残るためのキーワードである。そしてそれを可能に
するののが情報化、ネットワーク化だと言ってよいだろう。 そのことに気づき、ネッ
トワーク化の推進こそ経営の建て直しの中心だと気づきそれを実践する経営者は意外に
まだ少ないのである。そして社会全体のそれが日本経済の構造改革のための一つの柱に
ならなければならないと考える政治家、政府指導者も少ないのである。
第二の敗戦状況から立ち直るための一つの大きなポイントが個人の、企業のそして社
会全体の情報化、ネットワーク化であることを忘れてはならない。
1998/8/8
Tadashi HAYASE
今週の意見(80):
IMFの勧告
8月14日IMFは日本に対し、経済建て直しのための意見書を発表した。低迷
する経済を早急に立て直すため、消費税率の引き下げや、郵便貯金制度の見直しな
どを提案している。それは日本の経済の復興が今や世界経済にとって極めて重要だ
との認識にもとづくとしている。
これに対し、日本政府、大蔵大臣は恒久減税、金融システム安定化を含むさまざ
まな手を現在すでに打ち出しつつあり、IMFのそうした提案を否定した。当然の
ことであると思う。
小渕首相が9月訪米したらクリントン大統領との会見でまたさまざまな経済政策
に関して、さまざまな注文をつけられることになる。これまで発表したいくつかの
経済対策は、そうした世界中からの圧力の結果であったし、これからもそうした圧
力を受け続けることになる。
日本が世界第2の経済大国となり、その経済動向が即世界経済に多大の影響があ
ることはまぎれもない事実であろう。従って日本の経済運営に世界中からさまざま
な注文がつくこともやむをえない。
しかし、これまでのいきさつ、経過を見ていると今回のIMFの勧告的な内容に
しても内政干渉がましいところがたぶんにある。共通して言える一番の問題はその
政策の即効性を求める点である。日本の現在の経済状況を本当によく分析した上で
の政策展開を求めているとばかり思えない。金融不良債権処理問題などはわかりや
すい問題であり、これはいいだろう。しかし、消費拡大のために恒久減税を求め、
また日本政府もそれに応じて最初消極的だった減税をそうした外圧に負けて打ち出
していくという状況はどうも感心しない。
日本経済の現在の不況は一時的な消費不振や、公共投資の不足によるものではな
い。もっと根本的、構造的なものであり、その経済構造、体質を変えていくこと自
体が問題なのだ。従って一時的な即効薬などはない、と言っていい。所得減税や消
費税の切り下げによって消費が拡大するなどという単純な図式では決してないだろ
う。政府首脳、政策当局も当初そのように考えていたはずだ。が、いつのまにか外
圧に負けて結局は減税策を打ち出した。
日本経済の復興がまさに世界経済復興のカギを握っているというなら、もっとそ
の根本対策は日本自体にまかせて欲しいものだ。日本の政策当局もさまざまな外圧
に対し、自分のことは自分で決めるというスタンスをもっと明確に打ち出すべきだ。
1998/8/22
Tadashi HAYASE
今週の意見(81):
住宅を充実しよう
マグドナルドの65円ハンバーガーが話題になっている。当然のことながらこれ
が爆発的に売れている。かって価格破壊のことが話題になったが、実は今の消費不
況の原因の一つに価格の高さというものがある。一般の消費財や電化製品といった
耐久消費財などではない。もっと重要な耐久消費財、例えば住宅関連などがその典
型的な例である。
最近の新聞でも報道されていたが、住宅公団の建てたマンションが2000戸と
か売れ残っているそうである。理由は価格が高すぎること。バブル時代そのものの
高い価格では売れるわけがない。公団が値を下げて売ろうとすると、その値段で買
った住民から猛反対を受ける。当たり前である。5000万円払って買った公団の
マンションが、4000万円で売り出されたら誰だって怒る。それは民間の企業だ
って同じことだが、民間の企業ならあえてやるかもしれないし、やっても、自らの
経営判断でやることだから誰にも文句を言われる筋合いはない。
バブル崩壊以後、土地の値下がり、需要の下落などもあって住宅は全般的に安く
なってきているが、まだまだ一般庶民に手の出る価格ではない。住宅関連にこそ価
格破壊が起こって欲しい分野なのである。住宅関連にそれが起こらないのはさまざ
まな理由がある。
一つにはそれに従事する企業の体質そのものがある。彼らは長年売手市場で高い
マンションや一戸建て住宅を売ってきた。住宅の価格なんてそんなものだとの思い
込みがある。二番目にさまざまな規制。自分で家を一度建ててみるといい。官庁に
提出する書類は一体何十種類あることか。そのために支払う費用、手数料が馬鹿に
ならない。さまざまな規制で、輸入を含めた自由競争で当然安くなるべき資材もも
そうならない。
日本の住宅事情はまだまだお粗末である。かって欧米から日本が経済大国のわり
にはその住宅がお粗末なことを 「うさぎ小屋」とやゆされた。消費不況などというが
今の住宅の価格が30%、40%安くなれば需要は圧倒的に増えるのは間違いない。
またそれを増やすような政策をこうじるべきである。一つにはもちろん融資制度。
今の金融公庫のものよりさらに借りやすいものにすべきである。それに消費税。消
費税の一律削減というより、住宅関係についてのそれを軽減することや、住宅関連
に特定して特別減税を認めるような方策も是非必要である。
住宅は総合産業である。家一件建てるために一体どれだけの種類の資材と人間が
関わるか。いかに多くの産業分野と関係しているか。それを考えただけでもその経
済波及効果は極めて大きい。
従来型の公共投資なんてくそくらえである。同じ建設関係でも私は個人の住宅建
設促進、そして購入促進を最優先してすすめるべきだという考えである。そして同
時にその分野での規制緩和を大々的に行って自由競争をうながし、この分野でのコ
ストダウン、価格破壊を導いていくべきだと思う。
1998/8/30
Tadashi HAYASE
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