2009年 今週の意見 8月

今週の意見(641):

マニフェストを実現できなかった党は解散(?)

毎週金曜日夜八時日本テレビの「太田光、私が総理大臣になったらという」というお
笑い番組がある。お笑い芸人、TVタレントのほか政党の政治家、評論家なども数
多くでていて、さまざまな政治問題、社会問題をとりあげて、そのテーマについて
賛成か、反対かを議論した上で表決をするというものだ。私は毎回見るわけでない
が、たまたま見ていて、なかなかおもしろいと思うこともある。                

わけのわからぬしっちゃかめっちゃかの議論もあるし、与野党の著名政治家、評論
家もも出ていて、最後の表決は別にして、なるほどと納得の議論が行われることも
ある。私はほんの一部しか見ていないが、この番組を単なるお笑い番組だと笑って
すますつもりはさらさらない。どんなものがあったか過去のものの例があるので参
考のために下に列記しておこう。それについて賛成、反対は別にして、なるほどこ
れは重要なテーマだと思うものも多い。                                      

ただ昨夜のテーマ設定と表決の結果は全くいただけなかった。テーマは表題のもの
そのものだ。たまたま昨日は自民党のマニフェストが発表され、各党のマニフェス
トが出揃ったこともあったのだろう。それぞれのマニフェストについてその是非が
論じられていた。極めて短時間で、各党のそれをざっと説明があり、政治家を含め
て出演者がてんでばらばら好き勝手なことをいうわけだからまともな議論などある
わけがない。これではいいにつけ悪いにつけ、マニフェスト内容について有権者の
間に大いなる誤解を生む可能性も大である。                                  

今そのことは横に置くとして、問題はテーマ設定そのものだ。本当に太田光自身が
今回このテーマを設定したのかどうかわからないが、「マニフェストが実現できなか
った党は解散すべし」というテーマそのものが大問題だ。昨夜は衆議院解散というこ
ともあって、与野党ともあまり名のある議員が出ていなかったこともある。出演者
では参議院の山本一太、福島瑞穂くらいか。評論家も有名なのが何人か出ていたが、
この問題についてまともな評論、正論が殆ど聞けなかったのは残念だ。そして肝心
の表決では12対6で可決となった。さらに問題だと感じたのは一般視聴者の投票
で82%対18%の圧倒的多数で、この議案が可決となったことだった。        

マニフエストというものが単なる得票目当てのばら撒き合戦であってならないこと
はその通りだ。それを諌めるために、政権獲得後、もしそれを実現できなかったら
その党は「解散」という憂き目に合うくらいその実現には真剣にとり組むべきだとい
う議案の趣旨自体は理解できる。                                            

しかしいかなる場合でも、掲げたマニフエストを100%すべて実現することなど
現実にはありえない。政権獲得党がマニフエストを限りなく100%実現する努力
をするべきことは当たり前だが、それには多くの障害が立ち塞がることも事実なの
だ。それは、国会での与野党の勢力がどうなるかということで決まるし、さらにな
ん人も予想できない、不可抗力的なな事態の発生ということもありうる。政権担当
与党はそうした状況の中で、現実の政治、行政を運営していかなければならないの
だ。中にはマニフェストを犠牲にしても、国家国民のためには全く別のことにカネ
と時間を掛けなければならないこともあろう。それが政権与党のまさに政治責任な
のである。                                                                

そうした事情について、政権与党がマニフェストの一部が実現できなかったことの
いいわけをやって悪いわけがない。野党もそれを責めてはならないことも当然であ
る。                                                                      

今回総選挙に当たって、与野党が互いにマニフェスト公表前に、前回のマニフェス
トの評価を行った。自民党は、それについては自ら合格点をつけた。野党民主党は
せいぜい20から30点だと酷評した。それでいいのではないか。後は有権者がそ
れぞれ点をつけたらいい。仮に平均60−70点ならまずは文句がない、すなわち
マニフェストはある程度達成したと見ていいのだろうし、20、30点なら完全に
落第だ。合格と思うか、不合格の判断はあくまで有権者の次回の投票行動で反映す
ればいいことだ。それをいちいち政党の解散などに結びつけることなどナンセンス
である。                                                                  

大体太田光のテーマ設定は100%出来たか、出来なかったか、オールオア、オー
ルナッシングなのだ。そんなわけがない。100点からゼロ点か、そんな点数のつ
け方があるはずがないのだ。仮に50点を合格、非合格のボーダーラインとして、
それぞれ何点か、合格か落第かは有権者の判断に任せるしかないのである。      

番組での一般視聴者の反応だが太田案に賛成82%、反対18%という数字が出て
いた。なんだこれは、マニフエストなるものを全然理解してないのではないかと、
恐れを抱かせるものである。                                                

ただその一方で、これは与党自民党への厳しい批判票であるとも取れる。というの
も今回のテーマの評価対象になっているのは長年にわたって政権を担当してきた自
民党、自公政権以外にないからである。                                      

今回の自民、民主のマニフェスト論争、評価、に当たって、特に自民党のそれに関
しては過去のものの評価からまず始まるべきことは言うまでもない。自民党がまだ
政権の座についたこともない民主党のマニフェストを、自らの過去のものについて
の正当な評価もないまま、政敵のそれを批判することで、マニフェスト論争をごま
かそうとするスタンスなど許されるはずがない。有権者はそれに騙されてはならな
い。                                                                      

2009/8/1
早勢 直

太田光総理
これまでの番組テーマ

今週の意見(642):

裁判員裁判と市民感覚

一昨日初めての裁判員裁判が終わった。求刑の懲役16年に対し、”満額”に近い
懲役15年で結審した。いや、"満額”という新聞記事が傑作で、会社と労組の夏の
ボーナスの交渉じゃあるまいし、量刑が決まったことがそんな言葉で報じられるこ
とにまず違和感を覚えたものである。                                        

新聞記事やTV報道で元検事、現役の弁護士などのコメントを総合すると、この事
件の量刑相場はまずは12年、13年といったところらしい。それがその相場より
重い判決になったのは、やや意外というのがそうした専門家のコメントであったよ
うだ。もちろん中には、裁判員は「被害者の心情に傾く傾向がある」のでそういうこ
とになったというコメントすらあったわけだ。もちろんそれがいわゆる市民感覚の
反映でまさに裁判員裁判制導入の成果だという評価もあった。                  

そうした専門家たちのやりとりを聞いていて私が驚いたのは、この種の殺人事件で
は量刑が12,3年と極めて軽いことだった。いや、その疑問の背景は簡単、人を
殺しておいて、そんな軽い罪で済むのか、ということだった。同じ殺人でも殺意を
持ってやったことか、そうでなく偶発的なこと、ちょっとしたはずみで殺してしま
ったのかでは刑の重さが全然違うことくらいは刑法などに全くの素人の私にもわか
る。                                                                      

この殺人事件のケースでは、検察側は容疑者がかなりの殺意を持っていたことを立
証しようとしていたし、それがあったかどうかも争点であったはずだ。その検察自
体求刑が16年であったのだ。この殺人事件の審理が始まった時、私はその背景の
全てを知っていたわけでないが、殺意うんぬんの言葉もあって、量刑は最低でも2
0年位はあるのかなと思っていた。それが求刑が16年と知って、ええっ、どうし
てそんなに少ないのと思ったのだった。                                      

そうして最終的にそれが15年ということになって、いや、さすがそれは市民感覚
を反映したものだという専門家のコメントには、はてな、と感じたものだった。い
や、市民感覚と言ってもこれがまた千差万別なのだろう。いや、今回の裁判員に選
ばれた方の中にも私のような感覚の人がいて、検察の求刑自体小さすぎると感じた
方がいたかもしれないのだ。裁判の評議の中でもそう発言した人はいたかもしれな
いのである。                                                              

それは別に被害者に同情するしないということだけでなく、その裁判員自身の道徳
観、生命観、宗教観と言ったものから出てくるものであろうかとも考えるのだ。す
なわちどんな動機があろうが、なかろうが、人を殺すことなど絶対してはいけない
という道徳観、生命観を強くもっていて、仮にその罪を犯したものについては厳罰
を持って処すというのが正義だと信じている人がいておかしくない。いや、私はむ
しろそれこそが正常な市民感覚だと思うのである。                            

もし私が裁判員としてその場にいたら、実際の量刑をどう課すかは別にしてそうし
た趣旨の発言をしたと思う。場合によっては求刑の16年より重い刑に処すべきと
の意見すら述べたかもしれない。                                            

かくして今回の裁判はあのような形で決着した。私はすでにBLOGでも述べたが
この制度導入には大賛成である。今回の裁判も専門家の相場、法の相場でなく、よ
り正常な市民感覚が反映されたの評価があったことも今はよかったと言っておきた
い。                                                                      

これから本格化する裁判員裁判がますますこのような形、さまざまなな観点からの
議論を呼びながら進展していくことを期待したいものである。                  

2009/8/8
早勢 直

今週の意見(643):

証券優遇税制は継続すべきである

民主党政権誕生となった場合、証券優遇税を廃止するか、継続するか、大きな問題
になっている。これはおそらく民主党内でも真っ二つに意見が割れるところでない
か。単なる想像にしかすぎないが、民主党執行部内でも鳩山氏、岡田氏などは継続
管、小沢氏などは廃止という意見ではないかと思われるのだ。いやその根拠など全
くない、そういう微妙な問題だということだ。ただ、証券市場の存在意味、その活
性化が必要なことについて意見が割れるわけがない。                          

意外だったのは選挙後、新政権誕生後もその影響力が大きいと思われる藤井裕久最
高顧問(元蔵相)が廃止を主張していることだ。いや、現在氏がどう考えているか
についてはよくわからない。氏の反対は、これに反対の社民党や、共産党とは全く
違う観点からだと思う。氏が証券市場の活性化が必要なことを否定するわけがない。

民主党が連立を組む社民は反対、国民新党は継続賛成だろう。おなじ野党の共産党
はもちろん反対。選挙後野党となろう自民、公明はこれまでのいきさつもあって当
然継続を主張するだろう。                                                  

私の個人的意見は優遇税制継続に賛成である。なぜか?                        

それはやはり、この税制の存在のおかげで、証券投資などにあまり興味を持たなか
った日本の庶民に、株式投資というものに大きく道を開いたという側面は否定でき
ないからだ。日本の証券市場はまだまだ欧米、特にアメリカのそれに比べてその大
衆化という点から言うと発展途上にあるのではないか。これをさらに発展させるた
めには税制面の優遇策継続が望ましいということだ。                          

今麻生首相は口を開くと、民主党のマニフェストには成長戦略がないという。非常
に大雑把な言い方で説得力に欠けるが、一つには要するに市場原理主義をあまりに
も否定しすぎているといいたいのであろう。麻生首相は小泉、竹中構造改革路線を
市場原理主義の行き過ぎと批判する一方で、彼自身は実は企業人、実業人、市場原
理主義の信奉者であるはずなのだ。市場原理主義そのものは、資本主義そのもので
あって、そのこと自体は正しいと言い切らないのかである。そして株式市場はその
市場原理主義の象徴なのだ。それが活性化すること、株式市場が活況を呈すること
と、経済成長を実現することは表裏一体の関係にあるのではないか。どうしてそれ
を明言しないのかである。政権を目指す党がその成長のメカニズムを全然説明して
いないではないかと、批判すべきなのだ。                                    

わかりやすく言えば、中国がその例だ。中国は政治は共産党が支配し、経済は資本
主義、市場経済主義が支配している国なのだ。今の中国の高度成長はその資本主義
のおかげなのである。株式市場の活況がそれを象徴している。                  

日本も同じこと、日本も元々経済を支配する原理原則は資本主義、市場原理主義な
のである。これは民主党が政権をとっても同じこと。民主党の中にはさすが、証券
市場の存在そのものを否定するものなどいない。また共産党のように企業活動その
ものを否定するようなものはいない。共産党は口を開けば、大企業の横暴を言う。
大きな利益を挙げるものを悪のごとく言う。大間違いである。要するに競争原理を
否定しているのだ。企業減税などとんでもないことだという。企業減税によって、
企業がより大きな安定した収益を挙げることこそが、分配するパイを大きくするの
だ。民主党にはさすがそのことを否定するものはいないはずである。            

そういう意味では共産党や社民党は優遇税制どころか、証券市場の存在そのものを
否定しかねないのである。彼らの基本理念は株式投資で得る収入など不労所得とい
いたいのだろう。証券など売ったり買ったりする行為そのものを否定しかねないの
だ。そういう行為にどうして優遇税制など適用するのかという論理である。特に共
産党はあの中国などは今やその経済体制がそういう意味では日本以上に資本主義化
している事実を知ってか知らずか、優遇税制絶対反対を唱えているのである。    

そうした自由競争に敗れた社会的弱者を救済するのが政治の役割だが、その原資を
得るために逆に資本主義、市場原理主義に立脚する経済活動を活発にする、経済成
長を促進するべくさまざまな手を打つのも重要な政治課題なのだ。岡田幹事長は最
近そのことをある討論会で言っていたが、その意味内容を理解した視聴者は少なか
ったと思う。もちろんそこにいた社民党や共産党の連中がわかっていたとは思えな
い。公明党はともかく、自民党の連中にはもちろんそれがわかっている。        

政権獲得のため今民主党は政治の前者の役割ばかり強調しているが、政権獲得後は
当然後者の役割、すなわち政治の力によって経済活動を促進すること、経済成長を
促すさまざまな施策を積極的に打ち出すことに全力を挙げるはずだし、そうしなけ
ればならないはずだ。                                                      

子育て支援など、それによって少子化対策という長期目標を視野にいれながら、同
時に内需拡大が成長戦略につながるという説明にはなんら矛盾はない。それはまさ
に正論なのだ。ただ同時に証券市場活性化、場合によって企業減税など、いわば資
本主義的発想に基づく施策も同時にやらなければならないはずである。          

そういう意味でも証券市場を活性化するための優遇税制の継続など当然のことと私
は考える。                                                            

2009/8/23
早勢 直

今週の意見(644):

醜態をさらす自民党

金曜日はいい天気で猛暑、こういう天気が続いてもらわないとコメをはじめ農作物
がちゃんと育たないな、暑いけれど我慢するか、などと考えながら4時ころポスト
を覗いたら、選挙のチラシが何枚か投函されていた。                          

さてさて、この暑いのに選挙戦最後の戦いをやっているのだな、どちらさまもご苦
労なことですね、という感じで、整理にかかった。どの党のものにせよ、もう大体
中身はわかっている。第一もうこちらは期日前投票を済ませている。今さらそんな
ものを読んでもしかたがないとすぐにまとめて捨てるつもりだった。が、そのうち
の一つを見てびっくりした。5ページにもわたる自民党の民主党攻撃のチラシだっ
た。冒頭のタイトルは「知ってドッキリ民主党、これが本性だ!!」 副題は、「民主
党には秘密の計画がある!! 民主党にはだまされるな!」だ。                 

内容はもちろんひどいものだが、どこがどうひどいか。いわく第一章民主党と労働
組合の革命計画、第二章日教組 教育変更計画、第三章 日本人尊厳喪失進行中、
とある。まともに読む気はしない。論評にも値しない感じである。それぞれの章の
中で子育て支援策の批判をしてみたり、日米の外交関係のことを批判してみたり、
内容、論理とも支離滅裂、一体だれがこんなものを書いたのだろうか、誰がその内
容をチェックし、これを印刷して配布することを許したのだろうか、とそのことを
疑ったものである。                                                        

かって過激労働組合運動が激しかった頃左翼の宣伝チラシがこういうものだった。
よくもまあ、こんな貧しい、醜いものを印刷して配れたものだ。これを何百万部も
刷って全国に配布したのだろう。なんという無駄使いか、いや、政党助成金がこう
いうことに使われているのだからこれもまさに税金の無駄使いである。          

これを見た一般選挙民はどう感じるだろうか。私が感じたのはひたすら嫌悪感のみ
である。

明日はいよいよ投票日、夜9時、10時はもう大勢が決しているだろう。現時点の
予測は自民党は圧倒的に劣勢である。その焦りはわかる。それをなんとか、頑張っ
て逆転したいという気持ちは当然のことながら分かる。しかし、しかしである。こ
のパンフレットは一体なんだ、という感じである。ここまで醜態を晒して一体どう
するのか。                                                                

こんな政党がこれまで日本の政治を長年にわたって支配してきたのかと思うと情け
なくなる。明日はこの党が完膚なきまで叩きのめされることをまず期待する。    

しかし、本当の話はそれからである。政権交代は日本の新しい政治のためのほんの
プロローグにしかすぎない。日本の政治がよくなるためには新政権を担当する民主
党の頑張りはもちろん、野党、とりわけ自民党の再生が何より必要なことなのだ。

民主党がどのように政権を担当してやっていくか、これからまさにその政権担当能
力がまさに試される。と、同時に野党に転落した自民党がどのようにその再生を果
たし、次回総選挙で、今度は自民党が「政権交代」を旗印に戦えるようになるか、そ
の過程を期待を持って見守りたいのは私だけではあるまい。                    

2009/8/29
早勢 直
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