2001年 今週の意見 8月

今週の意見(228):

自民党大勝と小泉改革

 かねて予想されたことといい、参議院選挙で自民党が大勝した。小泉改革路線が
国民の支持を受けたということになっているが、果たして本当にそうなのか。小泉
人気のおかげで当選してきた議員の半分くらいは従来の自民党族議員的な体質の議
員であり、残りはいわゆるタレント議員である。彼らは政治のプロでもなんでもな
い。そうした状況で小泉改革がどれだけ本当に実現できるのか、できないのか、注
目されるところである。

 党内のさまざまな抵抗勢力を小泉氏は説得する自信があると言っている。変革に
は時間が掛かるということだろうが、ことはスピードが要求されているのだ。内外
ともに待ったが許されない状況だ。

 時折りしも株価が急落し、企業業績が悪化、雇用不安が増大する状況である。そ
こでまた、財政出動による、積極的な景気対策を唱える声がまた大きく頭をもたげ
つつある。小泉氏は選挙後も、マイナス成長でもかまわない、構造改革が先、構造
改革なくして成長なし、と言っている。が、それに対して、景気浮揚のための積極
的な財政出動をすべきだというグループと真っ向うから意見の対立がまず起こる、
起こりつつあるのだ。

 私自身は小泉氏や竹中経済担当大臣の構造改革最優先の考えの方が正しいと思う
が、今回当選してきた舛添氏などは、思い切った積極的金融政策展開の必要性をを
すでに声高に言っている状況である。あれやこれやで、党内外を含めあらゆること
で意見が真っ二つという状況になろう。

 ことは経済政策だけでない。外交問題だってそうだ。例えば首相の靖国神社参拝
の問題にしても、田中外務大臣はそれに明確に反対しているという状況なのだ。よ
もや小泉氏がそれに折れて、参拝をやめることはあるまいが。

 すべて首相の考えや方針が正しいとは言わない。しかし、基本的には小泉氏は
かねて主張している通りのことを実行すべきである。これまでのように足して2で
割るような政治手法はやめてもらいたいのである。また問題をどんどん先送りする
ようなことではなんにもならない。

 独断専行がいいとは言わないが、首相の主張を国民が聞いて支持したのだから、
思い切ってその基本からはずれることのないよう、やってもらいたいのものである。
それができるかどうか。

 私は改革断行のためにはむしろ自民党が大敗した方がいいと考えていた。それで
政界が再編され、改革推進派をまとめ直し、改革が断行されるという手順かなと思
っていたわけだ。そうならなかった。さあ、小泉氏は党内抵抗勢力と本当に真っ向
から対決するだけの覚悟がおありなのかどうか。注目されるところである。それは
いいが、本当にそんなことに時間を掛けている暇があるのかどうかだ。

2001/8/4
Tadashi HAYASE

今週の意見(230):

マイナス成長、それがどうした

 経済成長率がマイナスになると大騒ぎする。いつものことだが成長を促進するた
めに総合景気対策が必要だ、となる。そして追加的な財政支出を行う。

 最近景気後退が一段と鮮明になって、またぞろ、内外から景気対策の必要性が叫
びはじめられる。構造改革が優先で少々のマイナス成長もいとわないという小泉内
閣であったはずが、そうした声に押されて、総合経済対策を打ち出すことを検討す
ると言い始める。

 また、またそれの繰り返しである。その繰り返しが一つには今日の財政大赤字の
結果となっているのだ。マイナス、マイナスといっても、何十%も落ちるわけでな
い。高くても1%以内。なぜそんなことに一喜一憂するのか、それがわからないの
である。

 なぜマイナスになるのか。それは経済の構造が古いからである。産業構造、消費
構造あらゆるものが古いのだ。それを新しく作り変えるのが構造改革のはずである。
それをすることが一番の優先事項でそれが終るまでマイナス成長もやむをえないと
どうして政策当局者はもっと明確に言わないのか。マイナス成長によって失業が増
えることは大問題であることはわかる。それに対するセーフテイネットが必要なこ
ともわかる。それに対する追加的支出は必要だろう。

 構造改革という大手術に大きな痛みを伴うことはしかたがないのである。そのこ
とは政策当局者はもちろん国民もわかっているのではなかったのか。成長がマイナ
ス、それがどうしたと開き直るべきなのである。ごちゃごちゃと小手先の政策など
もうやめるべきだ。

2001/8/11
Tadashi HAYASE
今週の意見(231)

お祓いが必要な憲法

 首相の靖国参拝の問題についてはさんざん論議があった。中国や韓国からの抗議
があってそれにどう対処するかという問題もあった。それぞれの立場からの意見が
あった。そのこと自体の是非については今回は触れない。

 が、その問題の根元の一つは憲法の存在そのものである。外国からの批判に対し
て、どうして国内の意見がもう少し、一致と言わないまでも、まとまれないのかと
いう問題がある。と、いうか意見がいつもまっぷたつなのだ。連立をくむ、自民党
と公明党ですら政教分離という観点について意見が真っ向から対立しているという
矛盾がある。

 小泉首相が今回参拝の際、いわゆる神道形式に従わないでただ立礼をして参拝し
たということであったが、お祓いを受けた、ということで野党がこれは政教分離の
憲法原則に反するなどと騒いでいる。いや、陰にまわって騒いでいるのは、宗教団
体を母体にする公明党あたりかもしれない。

 なんでそんな細かいことをいちいち問題にするのか、である。前の森首相が「日
本は神の国」と発言して大騒ぎになったが、あれとて、その真意はたいしたことが
なかったのかもしれない。日本の歴史の中で、政治が皇室ときってもきれない関係
にあったことや、そこに神社仏閣がそれにさまざまな形でからんでいたことなど、
それは伝統、文化の問題なのだ。そのことと、信教の自由を認めた憲法の精神とは
必ずしも直接関係ないように思うがいかがなものか。

 それをいちいち政教分離の原則を持ち出し、政府要人の靖国参拝を憲法違反だ、
と憲法問題にすること自体が間違いなのだと私は思う。

 このことは憲法9条の問題にも関わっている。平和憲法論である。これを大儀の
御旗に掲げて自衛隊の存在すら違憲だというその憲法解釈。

 お祓いをする神主の前に首相が黙って立っていたことなんて大した問題じゃない。
今一番お祓いが必要なのはなんでもかんでも国論をまっぷたつにしてしまう憲法の
存在そのものではないかと思う。と、いうか必要なのはその解釈をめぐってのまと
もなごまかしのない論議であり、きちんとした解釈である。それをしない限りこ
の国の混迷はこの後もずっと続く。

2001/8/18
Tadashi HAYASE
今週の意見(232):

インフレターゲット

「金融政策は迅速かつ果断であれという教訓は多くの実例が示す。世界同時景気減
速のいま、中央銀行は「インフレ・ファイター」とは別のセンスを問われている。今
朝の最大の関心事は米連邦準備理事会(FRB)の一手。ところで日銀はtoo 
little too late(小さすぎる、遅すぎる)の世評にどうこたえるの
だろうか。」 春秋 8/22より
 
 昨日の日経新聞の春秋は、インフレとデフレについて書いていた。最近の世界の実
例からどちらもそのいき過ぎは困るという話だ。そしてその最後の結びがこのくだり。
アメリカ、欧州、日本で景気減速中で、どちらかというとデフレの今、中央銀行がそ
の対策をすることこそ望まれているという趣旨なのであろう。特に日本のそれはデフ
レが極端すぎると、政府与党の政策担当者が考え、経済評論家たちもそう考えている。
そして先週日銀がその対策として金融緩和策を発表した。政府与党からの圧力が相当
あったと伝えられている。一時その効果があったのか、株価は少し上がったが、その
後また下落してしまった。そしてこの日経の春秋の論説。
 
 春秋は一体なにを言いたいのだろう。さらなる金融緩和策、それももっと大型のそ
れが必要だと言っているのだろう。問題は果たしてそれが根本的な景気対策になるの
かということだ。もう金融市場には余剰資金は十分あって、これ以上の金融緩和など
なんの景気回復策にならないと多くの経済学者、評論家が指摘していることの方が正
しいのではないか。
 
 問題はそのデフレである。政府与党政策担当者は経済をインフレの方に導こうとし
ているのである。量的な意味での伸びが限界がある今、物価を上げないとGDPのア
ップにつながらない。竹中経済担当大臣も先週一定のインフレ目標を設定すべきだと
の発言をしている。
 
 それについて、一消費者、生活者としての疑念がある。目先のGDPなど上がった
下がったが、なぜそんな大問題なのか。物価が下がること自体、消費者にとっていい
ことであることの方が多いのだ。所得の伸びが期待できない今、物価上昇は困るのだ。
政府与党政策当局者が念頭においているのは、銀行である。インフレに導くことで、
不動産や株価を押し上げ、不良債権を抱えた銀行を助けようとしているのだろう。
 
 さらに、仮に、仮にだ、いろいろな面で今物価を押し上げる必要性があることを認
めたとして、そんな小手先の金融緩和策だけでそれが実現するのか、ということだ。
それは日銀の金融政策だけの問題か、である。そんな簡単な話ではないはずだ。
 
 どうも国民消費者の立場より、長期的な意味で本格的な経済成長を図るというより
経済政策担当者が金融政策といった当面の小手先の対策ばかりでごまかしているよう
に見えるのは私だけだろうか。構造改革は当然にこれに関連する論議として出てこな
いのはどういうわけだろうか。
 
2001/8/25
Tadashi HAYASE
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