1998年 今週の意見 4月

今週の意見(62):

サッカーくじ法案に反対

 サッカーくじ法案が今国会で成立する見通しとなった。参議院議員で一部
修正された後再び衆院に送付される。参院では問題が起きた場合には文相が
停止命令を出すことができるなどの条件でこれを採決した。常識の参議院ら
しい修正方法だと評価する向きもあるが、それ自体ギャンブルを正当化した
ものであるにはちがいない。                     

 この法律については日弁連、日本PTA全国協議会などは、それはくじな
どとは名ばかりで、要するにギャンブル、とばく行為、青少年のスポーツ感
に悪影響をもたらすものである、という立場から反対を表明している。これ
を推進する側の論理は、さすがにそれ自体を正当化はしないものの得られる
収益金で、さまざまなスポーツ振興策をこうじたり、それを福祉に利用する
ことができるのだとしている。ヨーロッパの先進諸国で採用され、そうした
目的の基金集めに役立っており、それぞれの目的に役立っているという説明
もある。                              

 日弁連や、PTA協議会の反対意見を青臭いなどというなかれ。私もその
青くさい意見に賛成である。競輪・競馬など公営のギャンブルがそれなりに
地方公共団体の貴重な収入源になっていることは、そうだろう。だから同じ
ように公共のために使うのだからいいだろうという考えがそのベースにある。
私はそれはちょっと違うと思う。できれば競馬、競輪だってあんなものはな
い方がいい。いかにそのスポーツ的な健全性をPRしようと、どうしようと
なんと言おうと、ギャンブルはギャンブル、それが青少年に射幸心をあほる
一因となる可能性は高い。                      

 サッカーくじはくじと言っても宝くじなどと全く性質のことなるものだ。
サッカーの勝負そのもので賞が決まる。宝くじのように機械的にあたりくじ
が決まるのとわけがちがう。サッカーそのものの勝負が賭の対象となる。そ
れだけに当然さまざまな不正行為が発生する可能性がある。なによりも本来
健全たるべきスポーツをそうしたギャンブルの対象にしていいものかという
議論は決して青臭いものではない。私はその青くさい議論に同調するもので
ある。                               

 それに賛成する論として、資本主義自体がギャンブル性の高いしくみ、そ
うしたしたかたさを身にためにも、一種の訓練のためにもそういうものがあ
ってもいいではないかっというギャンブル正当化論すらある。資本主義をギ
ャンブルにたとえるなんて、見当違いもはなはだしい。そういう誤った感覚
が一連の証券不祥事につながっているとも言える。           

 常識の参議院を標榜するのなら、サッカー法案など断固否決すべきであっ
た。それをもっともらしい理屈をつけてそれを良識を守ったなどと得意にな
っている議員諸侯のお顔をとくと拝見したいものである。        

1998/4/4                              
Tadashi HAYASE                          
今週の意見(63)

ビッグバン

 4月1日金融のビッグバンがスタートした。新聞やテレビでいくつかその
様子が報道された。東京のスーパーでドルで支払いOKの店で早速ドルを
使っている人や、九州のスナックで勘定をドルでする光景。東京の外国銀行
でドル預金の説明を受けている預金者などの様子が現実のものとして報道さ
れた。                               

 テレビの報道番組では、こんな金融不安の時に、しかも景気が最悪の時に
金融ビッグバンなど、タイミングが悪い、金融不安が増殖する可能性がある
という評論家の意見が紹介されていた。が、私は果たしてそうだろうかと思
う。確かになぜ経済不安が高まっている今、どうしてそんな荒療治をやらな
ければならないのかという意見はわからぬではない。が、それはもう以前か
ら決まっていたこと、それにいずれやらなければならないことだから、いつ
やっても結果は同じことだと思うのである。              

 そもそも金融不安が起こった原因は日本の銀行の経営のだらしなさに起因
することである。ビッグバンによって自由化、自由競争の嵐にさらして体質
の改善をはかることが大切である。ビッグバンはかなり以前から言われわか
っていることなのに、日本の都市銀行がそれぞれそれに備えてどれだけ経営
の中身を改善したり、新商品開発努力をしたかについては大いに疑問がある。
外国の銀行が提供している金利の高い外貨による定期預金など、どこの日本
の銀行が提供しているだろうか。また、振り込み業務や外貨交換業務まで今
やコンビニにとって代わられている、代わられようとしているのに、相変わ
らず高い振り込み料金で、振り込み端末も少ない悪いサービスをそのままに
している感覚がわからないのである。                 

 さまざまな議論があるがビッグバンによって消費者はさまざまなメリット
を享受する。それによって消費者が特に損害を被ることはない。が、それは
横並び、護送船団方式の甘い環境になれてきた銀行にとって試練の環境変化
なのである。その試練を乗り越えて国際的に競争力のある銀行として復活し
てもらいたい、もらわなくては困るのである。             

 金融のビッグバンは日本にとって国際化の嵐の一つの側面である。規制緩
和、自由競争促進というビッグバンが、経済・社会その他の面でも始まるの
はこれからのことである。それは最悪の経済を立て直すための試練の始まり
であり、絶好の刺激であり動機であると考えるべきだ。         

1998/4/11                             
Tadashi HAYASE
今週の意見(64)

またまた圧力に負けた

  4月9日橋本総理が記者会見をして、景気対策として98年度に4兆円の
特別減税を実施すると発表した。前に発表していた10兆円規模の財政出動
とあわせての対策である。そして内閣ができた当時のもっとも基本的な方針
である財政改革を一時棚上げするために財革法も改正するという。    

  いうまでもなく野党は大きな政策転換であり、橋本内閣不信案も出すかま
えである。総理は時の情勢に応じての舵取りが政権をあずかるものの責任だ
として特に政局運営に影響するものではないという。政策転換しろというか
らしたら、責任を問うというのは矛盾だ、などという妙な開きなおりようで
ある。                               

  今回の発表は現在の経済のデフレ状況をなんとか解消し、景気を刺激し上
向かせないと世界中の大不況につながるという内外からの圧力に屈したもの
である。特にアメリカは日本の内需が拡大しないと対日貿易赤字がまた大き
くなって好調のアメリカ経済に影響を与えかねないと減税を中心にした景気
拡大策をさかに要求してきた。欧州各国、アジア諸国とて同じ。さらに消費
不況に悩む国内産業界からの減税、公共投資の要求は極めて大きいものがあ
る。新聞雑誌などマスコミも一致して同じような圧力をかけ続けている状況
である。                              

  そして総理はついにまたその圧力に屈した。それを財界など歓迎する向き
もあるが、翌日の株式市場の反応を見る限り、大きな変化は見られない。市
場は概してそれくらいの対策は既に折り込みずみという反応なのである。こ
の一年それの繰り返しであった。内外の圧力に応えて、少しづつ対策を小出
しにする。効果がない。また少し。効果がない。それの繰り返しである。  
  
  いま日本は財政改革といい、金融システムの安定化といい、ビッグバンと
いい、情報通信分野への公共投資といい根本的な体質改善の真っ只中にある
のである。経済社会体制の根本的な変革を行おうとしているさなかなのであ
る。それは日本と日本国民、そして国際社会にとっても必要なものである。
そのためにやるものなのである。そんな中にあって国民は先行きの生活に非
常な不安をいだいている。政府がいろいろやることがすぐに効果がでないこ
ともわかっている。少々の減税をやったところでまず生活防衛に走る。当然
である。で、あるのに内外の要求はあまりにも短兵急すぎる。政府もそれが
わかっていながら外圧に屈して次から次へと下手な手を打つ。      

  総理も少しは開きなおるべきである。そう短時間にことは改善しませんよ
と少し開きなおればいいのである。日本がこけたら世界中がこけるなんてい
い方は脅し以外のものもなんでもない。日本は今病人で入院中だが、必ず体
質を改善して国際社会に貢献するつもりだ。体質改善のためにやるべきこと
はちゃんとやるから少し待ってくれ。本来の国民の信頼も徐々に返ってくる
とどうしてもっと正々堂々言わないのか不思議でならない。       
            
  無い袖は振れないのである。効果の少ない短期的な対策をちょこちょこ出
すのはもうおしまいにした方がいい。今は我慢の時、体力はいっきには回復
しない。じっくりやって体力を鍛え直すから外国さんも一緒に我慢してつき
あってくれ、とそう言えばいいのである。言うべきである。       

1998/4/18                             
Tadashi HAYASE                           

ホームページへ