2008年 今週の意見 4月

今週の意見(572):

「年金天引き」凍結法案に賛成

75歳以上のお年寄りの年金から医療保険料の天引きが15日から始まるが、その
新制度を自体を凍結しようという法案を野党一致して提出しようとしている。それ
を廃案にしようという法案はすでに提出しているそうだが、とりあえず凍結しない
と制度が始まってしまってからでは、廃案にするのも難しいという判断だろう。い
ずれにせよ、それには大賛成である。

年金からの天引きというと2000年秋から介護保険料の天引きがすでに始まって
いるが、これも高齢者から大反対にも関わら政府与党が強行した悪法であった。そ
の悲鳴は今も続いている。当時私などそれに気づいておらず、後になって年金から
介護保険料が天引きされていることを知って愕然としたのであった。

今度の年寄りの医療保険料の天引きも、野党からの反対にも関わらず自民、公明両
党が圧倒的多数で政権を担当していた時代に決めたものだ。昨年7月の参議院での民
主党の勝利ということになって、初めてこの問題も本格的な議論がなされるように
なった。

野党は一致協力してこの「後期高齢者医療制度」に基づく75歳以上のお年寄りの
年金から医療保険料を天引きするという制度をやめさせ、さらには介護保険料の天
引きもやめさせるよう働きかけていくべきだ。

今与野党の攻防は例のガソリン暫定税率廃止か継続かをめぐってのものである。し
かしガソリン代以上に国民の関心の高いのは年金問題である。それでなくても少な
い年金、それしか収入の道がない高齢者の年金から介護保険料、医療保険料を天引
きされるそのつらさを政府与党の関係者はなんと考えているのか。

いや、天引きしようと、別途徴収しようと結果は同じことなのだが、要するに政府
側は取る方だけはできる限り、簡単にそして効率よくそれを行おうという意図は明
白なのだ。ガソリン暫定税率を取り続けるのも、それをやめたら財源が不足すると
いう言い分はまだしも、それが環境対策として、いずれ必要なものだから取り続け
るのだなどといういい分はまさに身勝手そのもの、まさに悪代官根性丸出しのお上
精神なのだ。

税金や保険料を取るという行為については、政権担当をする政府ははどこまでも国
民に対する丁寧な説明と、それについての理解、協力をえなければいけないことは
いうまでもないことだ。ところが日本では、もともとこの天引きという制度が広く
一般的に行われてきたせいもあって、どうもそれが十分でなかった。しかもその制
度の結果、日本の国民の納税者意識が極めて低くなってしまった原因の一つである。

そうした税金、保険料天引き制度を一度ご破算にすることで、介護保険といい、医
療保険といい、全体の年金制度といい国民の福利厚生、社会保障制度がどうあるべ
きかについての国民視点での議論が本格的に始まることを期待したい。

野党が一致して提出するこの保険料天引き凍結法案はまずその第一歩と位置づけた
いのである。

2008/4/5
早勢 直
今週の意見(573):

党首討論小沢氏判定勝ち

今週水曜日の福田康夫総理、小沢一郎民主党代表の党首討論は大変内容があってよ
かった。前回一月のそれと比較にならないくらい双方とも自己の信じるところ、問
題の核心に触れ、それについての主張の応酬になった。が、少々時間が短か過ぎた
きらいがある。あと30分位は欲しかった。いずれにせよ今後ともこうした内容の
党首討論をやってもらいたいものだ。

これについてのマスコミの報道はいつもよりはこれを評価するものが多かったが、
目だったのは、福田首相の感情をむきにした民主党攻撃のことを書いているものが
多かったことだ。どうやらこれが党首討論を盛り上げた一つの理由だという感じの
論評が多かった。朝日新聞など翌朝の朝刊トップで、福田首相が日銀総裁副総裁人
事をめぐり、民主党が4度にわたって、拒否したことを「権力の乱用」と非難した
言葉をそのまま記事見出しに引用したのだった。

いや、新聞記事としてはただその事実を伝えただけだと言うのかもしれない。が、
しかしまさにその「権力」の座にある福田首相がこんな言葉を使うことはあきらか
におかしいのだ。「権力」を持ち、今それを駆使し、政治を行っているのは明らか
に政権与党であり、自ら総理総裁である福田総理その人なのだ。

「権力」とは国家の政権を担っているものしか持ち得ない支配力のことをいうので
ある。福田首相が小沢氏を非難したのは、昨年夏の参議院選挙で野党が多数の力を
持って以来、日銀総裁人事の問題を始めさまざまな重要案件について、与党政府案
を否定したことを言っているのだ。小沢氏はそれが参議院選挙での民意であってそ
うなるのはむしろ当たり前のこと、従来と同じように政権与党にとっていつでも都
合のいいようにことが進まないのは当然のことだと反論したわけだ。「権力の乱用
をしているのはそちらではないですか」と小沢氏は言わなかったが、そうなのだ。

いや、朝日はじめ多くのマスコミはそこまでは報道していても、問題はこの二人の
論点のどちらが筋が通っているかという判定をしないことである。すべきなのだ。
福田総理が野党が反対することを「権力」の乱用などどうしていうのか、である。
そのことばをわざわざトップ見出しで使っているのはどうやらそれももっともだと
考えているらしいのだ。

福田総理が民主党がなかなか話し合いに応じないとか、「天下りというが、適正な
人を適切な場所に送りこむことまで天下りというのか」、とかガソリン税率の廃止
にともなって地方財政が困っているとかいった論点にたいして、小沢氏は、ただそ
れを目先の問題の解決論、方法論でなく、これからの日本がどうあるべきか、すな
わち地方分権、中央官庁の官僚支配からの脱却という観点、政治理念から論じてい
るのだ。単なる日銀人事うんぬんとか、今年度の地方の財政の次元で問題を論じて
いるのでない。

党首が論じるべきことは、福田総理のような目先の事象のことでなく、これからの
国家のあるべき姿、そのために政治をどう変えていくべきかを論じるべきではない
のか。そういう点ではこの二人の党首の討論の内容やりとりについては私は圧倒的
な差で小沢氏に軍配をあげたい。

今回の党首討論はよかったと評価するマスコミは多かったものの、それがよかった
のは福田首相が逆質問に出たことや、しかもあの筋の通らない野党の「権力乱用論」
など、まさか評価はしないもののおもしろがっているような風情の論調では話にな
らない。

これがアメリカなどであれば、その議論の中身をきちんと整理して、どちらがよか
った、まずかったと点数をつけるところだ。日本のマスコミはそこまでしない。で
きないのだ。大抵いいも悪いもどっちもどっち論に落ちつかせる。そうしておくこ
とで読者の反感を買わないようにするねらいもあるのだろうか。いやたしかにどっ
ちもどっちなのだろが、だが、しかし今はどちらかを選択するしかないのである。
要するに白黒ももっと明確にせよということだ。どっちもどっちだなどといってい
ては日本の政治は未来永劫変ることはない。

金曜日の朝日新聞の社説も総じてそうした論調であったが、ただ一つここまで両党
首の対立が深まった今、早期の解散総選挙でどちらが民意を受けているかの決着を
つけることだとしていたことについては賛意を表しておきたい。

2008/4/12
早勢 直
今週の意見(574):

イラク自衛隊派遣:違憲判決の意味

先週木曜日の名古屋高裁の航空自衛隊のイラク派遣違憲判決は画期的なものだった。
派遣の差し止め、その損害賠償などの訴えは退けられたものの、米兵の空輸などの
行為などを含む航空自衛隊の活動そのものは、戦争行為そののものであり、これを
禁じている憲法9条に違反するものだという判決であった。          

政府側は基本的には勝訴したのだからそれで終わり。原告側はこの違憲判決を得る
こと自体が主な目的であったのだから、これ以上上告しないということでこの高裁
判決がこの裁判の最終審として確定したわけだ。その意味は実に大きい。    

この判決について政府与党の反応は予想通り。別に自衛隊の派遣が差し止められた
わけではない。違憲だ、なんだといってもたかが一高裁の判断、それが今後の自衛
隊活動にたいした影響を与えるわけでない、と楽観してみせている。      

この判決を聞いた福田総理をはじめ内閣、与党の幹部の反応はそういうことだった。
が、内心「意外」という感想」もあったに違いない。             

一方野党民主党などの反応は当然「我が意を得た」というところだろう。民主党の
菅直人氏のなどがそのようなコメントを発している。当時このことを推し進めたの
が小泉首相であり、その官房長官が福田現首相であったが、この二人のおとぼけ論
でずっとごまかされてきた観があった。野党はみな切歯扼腕していた。     

この高裁裁判長は自衛隊が活動する地域は与党が主張するように非戦闘地域でなく
戦闘地域であると断定してわけだ。だから活動そのものが戦争行為だとしたわけだ。
もちろん論理的にはその通りだ。が、活動拠点が戦闘地域であるかどうかという前
に、イラクで戦争が行われていることは明白で、米兵の空輸、さまざまな物資の空
輸などなど戦争を支える兵站、兵站行為そのものであって、それはあらゆる戦争の
定義からいっても立派な戦争活動そのものであることには違いないのである。  

民主党など野党は一貫してそうした主張をしてきたし、その主張は100%正しい
と私はずっと思ってきた。                         

この判決について与党は今のところ平然たる顔を押し通りしているが、今後の海外
における自衛隊活動に大きな論争点を野党に与えたことは間違いない。何事もごま
かし、ごまかしでやっている与党のいい加減さはもうそろそろ限界に来ているのだ
が、本件もそれを憲法論足がかりにできる絶好の手を与えたものであろう。   

2008/4/19
早勢 直
今週の意見(575):

食糧危機と日本

先週4月17日のNHKのクローズアップ現代、世界における食糧危機問題をやっ
ていた。国連が中心となってこの問題にとりくみ始めているが、洞爺湖サミットで
もこのテーマ採り上げようかという検討もしているようだ。地球温暖化環境問題と
も関連するこの問題それと並んで重要な問題であることは間違いない。          

日本は議長国としてこの問題に一体どう取り組むのか取り組まないのか。日本は一
体この問題についてどんな主導権を取れるのか取れないのか。それが問題であろう。

環境問題では京都議定書ということもあるし、日本の環境技術ということもあって
主導権が取れることはいくつかあるだろう。が、この世界的な食糧不足問題で日本
は一体どんな主導権が取れるのか。この問題に関して日本は他の欧米諸国と並んで
100億円の資金援助をすることを表明した。しかし果たしてそれで日本は先進国
としてその責任を果たしたのか。責任が取れるのかである。いや取るどころの話で
ない。                                                                    

この問題に関して、日本はこのサミット主要国の中でも唯一食糧自給率39%とい
う発展途上国なのである。米国、カナダ、主要ヨーロッパ諸国はみな自給率100%
とかそれに近い国々なのだ。「日本もこの問題では困っている。大いに困ることに
なりそうなので、みなさんよろしく頼みます」とでも福田さん演説するのだろうか。

それは日本自身が取り組まなければならない深刻な問題である。日本がとりくまな
ければならない根本的解決策はただ一つ、食糧自給率をいかに急速に、短時間で上
げていくか、である。そのためには一体どうするかなのである。これは100%国
内の政治的課題である。                                                    

実はこの問題も昨年夏の参議院選挙でも少しだけ争点になった。が、年金問題に隠
れて有権者の関心を殆ど呼ばなかった。民主党はこの問題を五大テーマだったか、
その一つに入れていて、自給率アップの必要性を訴え、そのための農家所得補償制
度導入の提案をしていた。当時与党も、多くのマスコミ評論家もそれを「ばら撒き
政策」だとしてせせら笑っていたのだ。                                      

今日の事態になって、そうした所得補償制度が妥当かどうかは別にして、世界的に
深刻な食糧不足の事態に直面している今こそ、食糧自給率をどう上げるかの政治課
題に取り組みべき時なのだ。これはガソリンだ、年金だ、医療だ、安全保障だどこ
ろの話でない。国民の毎日の食を確保できるかどうかの「食糧安全保障」の問題な
のだ。

これこそ、ひよっとすると優先度第一の問題ではないのか。このことについても福
田政権が何か語ったということは全く聞かない。日本の農家、農業はいま壊滅状況
にある。それは都市部との格差という形で語られるが、もっと重要な問題、すなわ
ちこの国の食糧を自給できるかという問題なのである。                        

おそから早かれ総選挙となろうが、年金・医療・道路などと並んで食糧政策がもっ
とも優先度の高いテーマとなるべきである。                                  

2008/4/26
早勢 直

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